エコロジカルフットプリントとは?

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地球温暖化や森林減少、海洋汚染などの環境問題への関心が高まるなか、エコロジカルフットプリントという単語を目にする機会も増えてきました。しかし、いまいち意味がわからない方も多いと思います。

そこで本記事では、エコロジカルフットプリントの意味やなぜ必要なのかを詳しく見ていきます。

 

SDGsとの関わりも書いているのでぜひ目を通してみてください。

 

では早速エコロジカルフットプリントとは何かを確認していきましょう。

 

エコロジカルフットプリントとは?

エコロジカル・フットプリントとは、1990年代の初期にカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学のマティース・ワケナゲルとウィリアム・リースらによって提唱された考え方で、人間が活動する上で自然環境にどれだけ依存しているかを土地や海洋の表面積で表した指標です。
 

人間活動が自然環境を踏みつけ、足跡を残していることから「エコロジカルフットプリント」と呼ばれるようになりました。

 

とはいえこれだけ読んでもどのようなものなのかピンとこない方も多いと思います。

そこでここからはさらに理解を深めるために1つずつ順を追って見ていきましょう。

流れとしては、

①生物多様性について知る

②生態系サービスを知る

③人間の活動が環境に負担をかけていることを知る

となりますが、なるべく簡単な言葉で説明していくので、気負わずに読み進めてくださいね。

 

①生物多様性について知る

まず1つ目のキーワードが「生物多様性」となりますが、意味から確認しましょう。

地球に生命が誕生して約40億年が経ち、その間、陸・川・海のあらゆる場所で多種多様な生命の営みが生まれました。2020年現在、科学的に明らかにされている生物種は約175万種に上り、未だ発見されていない生物を含めると3,000万種が地球上で生活していると考えられています。

このような、
①「多種多様な生物」

②「多種多様な生物が互いにつながりバランスを保っている生態系」

③「遺伝子の個性(例えば同じカニでも海で生きていくことに特化したカニ、川で生活することに特化したカニがいるように、同じ種類の生物でもそれぞれ個性が違うこと)」

の3つを含めたものが生物多様性と呼ばれています。

 

②生態系サービスについて知る

続いては生態系サービスについての確認です。

わたしたち人間は、先述した生物多様性によってさまざまな恩恵を受けています。

例えば、私たちが呼吸できるのは、森林が光合成によって酸素を生み出してくれているおかげです。また、動物や植物が再生産される仕組みがあるからこそ、わたしたちは絶えず食料を得ることができたり、燃料として木材を伐採できたりします。

他にも、山を歩いたり、海で泳いだりすることは精神の安定にもつながります。

これらは生物多様性が複雑に絡み合うことで成り立っているもので、わたしたち人間はすべての生態系から恩恵を受けているのです。

この生態系から恩恵を受けることを総じて生態系サービスといいます。

 

生態系サービス一覧

次に人間が享受している生態系サービスの一覧を掲載しています。

 

生態系サービスの分類

【供給サービス】

食料(例:魚、肉、果物、きのこ)

水(例:飲用、灌漑用、冷却用)

原材料(例:繊維、木材、燃料、飼料、肥料、鉱物)

遺伝資源(例:農作物の品種改良、医薬品開発)

薬用資源(例:薬、化粧品、染料、実験動物)

観賞資源(例:工芸品、観賞植物、ペッ卜動物、ファッション)

【調整サービス】

大気質調整(例:ヒートアイランド緩和、微粒塵・化学物質などの捕捉)

気候調整(例:炭素固定、植生が降雨量に与える影響)

局所災害の緩和(例:暴風と洪水による被害の緩和)

水量調整(例:排水、灌漑、干ばつ防止)

水質浄化

土壌浸食の抑制

地力(土壌肥沃度)の維持(土壌形成を含む)

花粉媒介

生物学的コントロール(例:種子の散布、病害虫のコントロール)

【生息・生育地サービス】

生息・生育環境の提供

遺伝的多様性の維持(特に遺伝子プールの保護)

【文化的サービス】

自然景観の保全

レクリエーションや観光の場と機会

文化、芸術、デザインへのインスピレーション

神秘的体験

科学や教育に関する知識

【出典】TEEB報告書普及啓発用パンフレット「価値ある自然」

 

③人間の活動がどの程度環境に負担をかけているかを知る



わたしたち人間は、農地の開拓、漁業、道路の建設、工場の稼働など、生活を豊かにするために経済を優先した活動を展開してきました。
 

これらは自然環境の再生速度などを無視し、過剰に生態系サービスを利用したことで生物多様性のバランスは崩れ、近年では「地球温暖化」「森林減少」「海面水位の上昇」などのさまざまな環境問題が発生しています。

 

ニッキー・チェンバース、クレイグ・シモンズ、マティース・ワケナゲルらが書いた「エコロジカル・フットプリントの活用 地球1コ分の暮らしへ/五頭美知【訳】和田善彦、岸基史【解説】/インターシフト」によれば、

 

地球を、蓋のない樽だと考えてみよう。中に入っている水は地球にある資源だ。この資源は、太陽エネルギーによって一定の速度でしか補充されない。したがって、地球の自然資本を食いつぶしてしまわないようにするためには、私たちは樽から溢れ出たものだけで暮らしていかなければならない。私たちが「科学技術という蛇口」をどこかにつけるとしたら、樽の下の方ではなく、上のほうに付けるべきなのだ。

 

と書かれています。

 

わたしたちは、生態系サービスを享受している以上、現在どの程度自然環境に負荷をかけているのかを知り、自然の再生速度を超えた生活をしないよう気をつけなければなりません。

 

とはいえ、わたしたちの生活が環境にどれほどの負荷をかけているのかを知るのは難しいものです。そこで熱量学や生態学の法則に沿い、人間が環境に及ぼす負荷(生態系からの恩恵をどれほど利用しているか)の合計値を出す計算ツールであるエコロジカルフットプリントが役立ちます。

 

エコロジカルフットプリントをさらに詳しく

ここまででエコロジカルフットプリントの概要や利用される背景を見てきました。

続いては、エコロジカルフットプリントがどのような計算式で数値が出されるのか、どのような場面で使われるかを確認していきましょう。

 

エコロジカルフットプリントの計算

ここではエコロジカルフットプリントの計算を、「エコロジカル・フットプリント/マティース・ワケナゲル、ウィリアム・リース著/和田善彦監訳・解題/池田真里訳/合同出版」に掲載されている例をもとに見ていきましょう。少し複雑な内容になるため、簡単に目を通してこのように計算されているんだ、程度の認識で問題ありません。

 

エコロジカルフットプリントを計算する前提として、出される数値は所得や個人の価値観、行動様式、消費パターン、消費財の生産に使用される技術などによって変化します。そのため、国や地域、人によってさまざまなフットプリントがありますが、ここではカナダを例にピックアップしています。

 

【平均的カナダ人のエコロジカルフットプリントの計算手順】

①消費の五大カテゴリー別の消費量と廃棄物排出量の年間データを集め、カテゴリー内の各項目ごとの総計を総人口で割り、1人あたりの平均消費量値を出す。

 

※五大消費カテゴリーは、

⑴食料

⑵住宅

⑶交通

⑷消費財

⑸サービス

 

②①で出した1人あたりの平均消費量値を、その消費が属する生態系別土地カテゴリーごとの生態学的生産性を利用して計算し、それぞれ土地面積に換算。

 

③②で導き出した土地面積をすべて合計。

 

実際にこの計算方法により算出された土地面積が以下の表にまとめられています。

 

消費量---平均的カナダ人の消費量・土マトリックス(1991年データ)

各項の数値は生態学生産力のある土地面積(単位:ヘクタール/1人)

A
エネルギー地

B
生産能力阻害地

C
園芸地

D
耕作地

E
牧草地

F
森林地

合計

1 食料

0.33

 

0.02

0.6

0.33

0.02

1.30

 11 果物、野菜、穀物

0.14

 

0.02

0.18

 

0.01?

 

 12 動物生食品

0.19

 

 

0.42

0.33

0.01?

 

2 住宅

0.41

0.08

0.002?

 

 

0.4

0.89

 21 建築・維持管理

0.06

 

 

 

 

0.35

 

 22運用

0.35

 

 

 

 

0.05

 

3 交通

0.79

0.10

 

 

 

 

0.89

 31自家用車・バイク

0.60

 

 

 

 

 

 

 32公共交通機関

0.07

 

 

 

 

 

 

 33貨物輸送

0.12

 

 

 

 

 

 

4 消費財

0.52

0.01

 

0.06

0.13

0.17

0.89

 40包装材

0.10

 

 

 

 

 

 

 41衣料

0.11

 

 

0.02

0.13

 

 

 42家具・電気器具

0.06

 

 

 

 

0.03?

 

 43書籍・雑誌

0.06

 

 

 

 

0.10

 

 44タバコ・アルコール類

0.06

 

 

0.04

 

 

 

 45身の回り雑貨

0.03

 

 

 

 

 

 

 46レクリエーション用品

0.10

 

 

 

 

 

 

 47その他の消費財

0.00

 

 

 

 

 

 

5サービス

0.29

0.01

 

 

 

 

0.30

 51政府

0.06

 

 

 

 

 

 

 52教育

0.08

 

 

 

 

 

 

 53保健医療

0.08

 

 

 

 

 

 

 54社会事業・福祉

0.00

 

 

 

 

 

 

 55観光

0.01

 

 

 

 

 

 

 56娯楽

0.01

 

 

 

 

 

 

 57銀行・保険

0.00

 

 

 

 

 

 

 58その他サービス

0.05

 

 

 

 

 

 

合計

2.34

0.20

0.02

0.66

0.46

0.59

4.27

 

(0.00=0.005ヘクタール (50平方メートル)未満 ; 空欄=無視しうる値 ; ?=データ入手不能)

 

省略形

a)エネルギー地 =消費された化石燃料。発生した二酸化炭素吸収に必要な土地面積として計上する。

b)生産能力阻害地=生産能力を失った土地、構造物でおおわれている環境。

c)園芸地    =野菜・果物のための農地

d)耕作地    =穀物・飼料などの生産のための農地。

e)牧草地    =酪農製品、食肉製品、羊毛の生産のための牧草地

f)森林地    =優良農林地。平均的丸太材収量は、70年の伐期を想定し、1ヘクタール当たり163立方メートルと仮定。

 

「エコロジカル・フットプリント/マティース・ワケナゲル、ウィリアム・リース著/和田善彦監訳・解題/池田真里訳/合同出版」より引用

 

この表を見ると、平均的なカナダ人のエコロジカルフットプリントは4.27ヘクタール(赤字箇所)であることがわかります。これは東京ドームとほとんど同じ大きさです。(東京ドームは約4.7ヘクタール)

とはいえこれが広いのか狭いのか判断に困ると思いますので、次ではもう少し踏み込んで読み解いていきましょう。

 

公正割当面積

カナダ人のエコロジカルフットプリントの4.27ヘクタールが広いのか狭いのかを判断するためには、「公正割当面積」を見る必要があります。

 

公正割当面積とは簡単にいえば、地球上の生態学的生産力のある陸地・海域の面積の合計を世界の人口で割って、1人あたりどれだけ利用できるかを示したもので、(生産力のない土地は、氷に覆われた地域や砂漠などをイメージすると良いでしょう。)人口が増えれば増えるほど1人あたりが利用できる面積は減ります。2000年時点の公正割当面積は2.1ヘクタールとなっており、77億人にのぼると予測されている2050年には1.4ヘクタールに減少するのです。

 

さて、平均的なカナダ人の1年間のエコロジカルフットプリントは4.27ヘクタールでした。これは1991年の数値ではありますが、一旦正確な数値が出ている2000年時点の公正割当面積2.1ヘクタールに当てはめます。

すると、世界の人々がカナダ人とおなじような暮らしをはじめたとすると、地球2個分の面積が必要になるのです。(4.27÷2.1=2.03)

 

この数値は地球の資源を使いすぎているとともに、現在の半分まで消費活動を落とさなければならないことを意味しています。

 

世界のエコロジカルフットプリント
 

ここまではカナダを例にエコロジカルフットプリントを見てきましたが、他の国数値はどのようになっているのでしょうか。

 

2018年のグローバル・フットプリント・ネットワークの発表によれば、もし世界のすべての人々が、その国と同じ生活をした場合、

・アメリカ 地球5.0個

・日本 地球2.8個

・中国 地球2.2個

・インド 地球0.7個

・世界平均 地球1.7個

が必要になるとのことです。

 

傾向としては先進国ほど地球に負荷をかけており、現状の消費活動が続けば急速に地球の資源は枯渇していくでしょう。

 

※先進国の改善が必要な一方で、インドなどの途上国はそのままの生活を続けることが正解だとは限りません。現在途上国では極度の貧困に苦しむ地域もあるため、そこで生活する人々の生活を保護することと、自然環境を保護する2つの側面から対策を考える必要があります。



 

エコロジカルフットプリントを指標に環境に負荷をかけない生活を

本記事ではエコロジカルフットプリントの大まかな概要を見てきました。

エコロジカルフットプリントはわたしたち人間が環境に負荷をかけていることを簡単に割り出せるツールとされていますが、計算方法や各国の状況により変化が生じるため、数値を割り出すのは一般的には難しいものです。

実際にわたしたちがエコロジカルフットプリントの数値を割り出す場面はないことでしょう。大切なのはエコロジカルフットプリントを目にした際に、その意味を理解し、環境に負担をかけない生活を考えることです。

 

ぜひエコロジカルフットプリントをきっかけに、環境を保護する取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

 

環境に負荷をかけないための第一歩!固形シャンプーエティーク

とはいえ、何から始めて良いかわからない方も多いと思います。そこでおすすめしたいのが、エシカミーで取り扱っている固形シャンプー「エティーク」です。

 

シャンプーやトリートメントというと、ほとんどが液体タイプであり、プラスチックボトルに詰められています。このプラスチックボトルは現在、世界で毎年800億個も捨てられているのです。(さらにはその9%しかリサイクルされていません。)

一方エティークは、固形タイプなのでプラスチックボトルである必要がありません。さらには、生分解性(微生物によって分解される物質のこと)でできたパッケージに梱包されています。

そして、髪や頭皮に必要な美容液成分と、必要最小限の洗浄成分が凝縮したシャンプー・コンディショナーであるため、。洗い心地も液体シャンプーと変わりません。

 

毎日使うシャンプーやコンディショナーをエティークに切り替えるだけで、環境に優しい取り組みをスタートできます。

ぜひ、この機会にエティークを試してみてはいかがでしょうか。


 

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