昨今、SDGsという言葉が当たり前のように使われるようになってきました。
SDGsの内容を見ると、これまであったCSRやCSVと何が違うの?と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、CSR・CSV・SDGsの背景や取り組み内容をピックアップし、異なる点をまとめていきます。これらが流行している背景にある「ESG」についても記載しているので、ぜひ目を通してみてくださいね。
では早速、CSRから見ていきましょう。
目次 |
1.CSRとは |
2.CSVとは |
3.SDGsとは |
4.CSR・CSV・SDGsの違い |
5.ESGが背景にある |
6.企業で取り組みの検討を |
CSRとは
CSRとはCorporate Social Responsibilityの略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。
もともとCSRは欧米を中心に生まれた概念ですが、日本においても古い歴史を持ち、1950年ころからこの考え方はあったとされています。
しかし、日本でCSRが広がりを見せたのは2000年に入ってからです。
2000年以降、企業の不祥事が相次いだことをきっかけにCSRの重要性が叫ばれ始め、2003年から企業が本格的に着手。
2003年はCSR経営元年と位置付けられ、大手企業を中心に取り組みが活発になっていきました。
企業の社会的責任
では、企業の社会的責任とはどのようなものを指すのでしょうか。
企業は自社の利益を求める以外にも、さまざまな責任を持ちます。
法令を遵守することはもちろんですが、加えて重要なのがステークホルダーとの関わりです。
ここでのステークホルダーは、
・顧客
・従業員
・取引先
・地域社会
・環境
・株主、投資家
・従業員
・取引先
・地域社会
・環境
・株主、投資家
が挙げられます。
企業の利益は、地域の雇用や税収につながり、取り扱う製品であれば消費者の生活や健康などに関わります。
また、製品の生産過程や企業を運用する際に排出される温室効果ガスも環境への影響が考えられるでしょう。
つまりは自社のみならず、すべてのステークホルダーの利益を追求し、互いの発展を目指すことが求められているのです。
これがCSRの基本的な考え方になり、企業は社会的責任を果たすためにさまざまな取り組みを見せています。
日本におけるCSRの傾向
CSRの大枠がわかったところで、日本ではどのような取り組みが多い傾向にあるのかを確認しましょう。
2017年に企業市民協議会(CBCC)が公表したCSR実態調査事例集には、企業が実際に取り組んでいるCSRがまとめられています。
企業独自の取り組みを行なっているため、細かな統計をとることはできませんが、
・植林などの環境活動
・地震や自然災害の被害を受けた地域へのボランティア
・文化芸術活動への支援
・地震や自然災害の被害を受けた地域へのボランティア
・文化芸術活動への支援
が多く見られました。
このことから、CSRの活動事例はどちらかというと事業内容と結びついていない場所で、企業の利益を還元している傾向があり、社会奉仕的な活動という側面を持つと言えるでしょう。
このCSRが盛り上がりを見せるなか、より事業内容と関わりを持つところで社会的な価値を生み出すためのCSVという考え方が提唱されます。
CSVとは
CSVとはCreating Shared Valueの略で、日本語では「共有価値の創造」などと訳されることが一般的です。
この考え方は、2011年にアメリカの経営学者であるマイケル・E・ポーターとマーク・R・クラマーが提唱しました。
CSRは先述したように、事業内容とは直接リンクしない活動でしたが、一方CSVは事業内容を通じて社会の課題を解決し、社会と企業どちらの価値も高めていこうという考え方です。
企業が利益を求めようとすると、その一方で犠牲が払われることもあります。
例えば製品の製造過程で大量に二酸化炭素を排出したり、低価格を実現するために原材料を安価なものにし、生産者の生活の質を無視するケースもあるといった側面です。
利益を求めるために何かを犠牲にすることをトレードオフといいますが、これまでの企業はいわばこの状態であったのです。
日本におけるCSVの傾向
さまざまな企業のCSV活動について目を通したところ、事業と紐づけて展開しているということもあり、CSRのような植林や芸術文化活動への支援といった決まった型があるわけではありませんでした。
とはいえ共通する面も多く、以下がその特徴です。
・気候変動への対策→自社製品の製造過程のエネルギーをクリーンなものに変更
・原材料の調達過程の変更→生産者の生活の質の向上、製品の品質の向上などを同時にアップさせる
・労働環境の改善→人間らしい生活が送れるような働き方を推奨
・原材料の調達過程の変更→生産者の生活の質の向上、製品の品質の向上などを同時にアップさせる
・労働環境の改善→人間らしい生活が送れるような働き方を推奨
このように、事業と社会貢献を同時に達成させようというのがCSVです。
続いては、SDGsについての考え方の確認です。
SDGsとは
SDGs(エスディジーズ)とは、SustainableDevelopmentGoalsの頭の文字を合わせた言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。
2015年9月、ニューヨーク国際本部にて開かれた国際サミットで、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。
これは、2016年から2030年の15年間で達成する目標を記したもので、17の目標と169のターゲットから構成されています。
「地球上の誰一人取り残さない」という強い意志のもと、地球を保護しながらあらゆる貧困を解消し、すべての人が平和と豊かさを得ることのできる社会を目指し設定されました。
設定された目標は、「環境」「社会」「経済」の3つの側面から、現在世界で起きているさまざまな課題をピックアップしてゴールが定めており、簡潔にいうと行動計画のようなものです。
企業はCSVと同様に事業内容と照らし合わせて行動計画を立てるため、自社の利益と他者の利益を両立させて考えられます。
では実際どのような取り組みが行われているのでしょう。
日本におけるSDGsの傾向
SDGsは、2003年からのCSR、2011年からのCSVより歴史が浅いため、最近になって企業が取り組みに着手したところです。
とはいえ日を追うごとに盛り上がりを見せており、多くの企業が自社のHPにどのような取り組みを行なっているのかを記載しています。
SDGsは17個の目標と169のターゲットが予め決まっていますが、その枠組みの中では特にルールもなく、企業ごとの特色を活かした内容を展開できます。
具体的な内容として、本サイトを運営している株式会社ピー・エス・インターナショナルを例に見ていきましょう。
株式会社ピー・エス・インターナショナルのSDGs
株式会社ピー・エス・インターナショナル(以下PSI)は、
・化粧品の輸入、製造、卸および販売
・エステサロン「美腸エステGENIE(ジニー)」の運営
・ナチュラル・オーガニックコスメショップ「favostyle(ファボスタイル)」、エシカルなライフスタイルを提案する「ethicame(エシカミー)のECサイト運営
・ネイルスクール「CLASTYLE(クラスタイル)」、セラピスト養成スクール「アロマビューティーライフカレッジ」のスクール運営、美容専門のキャリアアップスクール「Beauty Biz UP(ビューティービズアップ)」
・エステサロン「美腸エステGENIE(ジニー)」の運営
・ナチュラル・オーガニックコスメショップ「favostyle(ファボスタイル)」、エシカルなライフスタイルを提案する「ethicame(エシカミー)のECサイト運営
・ネイルスクール「CLASTYLE(クラスタイル)」、セラピスト養成スクール「アロマビューティーライフカレッジ」のスクール運営、美容専門のキャリアアップスクール「Beauty Biz UP(ビューティービズアップ)」
など、美容に関する事業を展開している企業です。
PSIは、事業とSDGsを以下のように関連づけています。
目標3「すべての人に健康と福祉を」
アロマセミナーや腸を美しくする美腸エステを通して、すべての人の健康的な生活に貢献し、福祉を促進します。目標4「質の高い教育をみんなに」
ネイルスクールやセラピスト養成スクールのオンライン化を進め、どこにいてもスキルが身につくようなシステムを確立。特に女性の独立支援に力を入れています。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
ジェンダー差別はなく、役員比率、管理職比率も50%です。また、社員への専門スキル研修など(メディカルアロマ・形態学オーガニックコスメの知識・腸活の学び)を毎月実施しており、社員の参加及び定期的な研修(最低年2回)は行っています。
目標12「つくる責任 つかう責任」
土壌を限りなく汚染しないようなオーガニック ・ナチュラルな化粧品を扱い、自社ブランドの容器は極力リサイクル可能な材料を使用。配送は2020年4月にほぼプラスチック、ビニールを排除した廃プラの梱包材に切り替えが完了しました。
地球温暖化や資源枯渇、廃棄物などの問題を改善解決できるよう取り組んでいます。
目標14「海の豊かさを守ろう」
エティーク、エシカミー を通じて海の豊かさを守るための取り組みを進めています。プロダクト自体、完全に廃プラで、商品をお届けするときの梱包材も廃プラです。
また、地球環境や海洋動物のことなどをまとめた月間紙も同梱しており、親子、パートナー、家族で「環境」のことを話すきっかけ作りも行っています。
目標16「平和と公正をすべての人に」
年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進。会長・社長などの肩書きで呼ばす、「・・さん」と名前で呼ぶ社風や、外国籍の人の雇用、あらゆる宗教の人を受け入れるオープンな環境作りを行っています。
多様性を受け入れ、差別が起こらないようスタッフへの教育なども実施しています。
このように事業内容とSDGsの目標をリンクさせ、同時に複数の目標の達成を目指すのがSDGsです。
CSR・CSV・SDGsの違い
ここまで企業におけるCSR・CSV・SDGsの特徴を見てきましたが、改めて違いをまとめてみましょう。◆CSR
社会的責任を果たすための活動で、必ずしも事業内容と結びつくものではない。
どちらかというと「買い手よし」「世間良し」の傾向がある。
◆CSV
社会的価値と企業価値の両立を目指し、事業内容と関連させた取り組みを展開すること。
売り手・買い手・世間の3方面が満足できる、いわゆる「三方よし」がCSVの考え方。
◆SDGs
CSVと似ている部分があり、社会的価値と企業価値の両立を目指し、事業内容と関連させた取り組みを展開。
SDGsの場合、売り手・買い手・世間に「未来」が加わり、「四方よし」が基本的な考え方。
フォアキャスティングとバックキャスティング
この違いについて、もう少し踏み込んで考えましょう。
CSR・CSV・SDGsは、考え方として【CSR・CSV】【SDGs】に分けられます。
2つのグループの違いは、考え方がフォアキャスティングである、またはバックキャスティングであることです。
フォアキャスティングとは現在を起点とし、これまでの課題や現状を踏まえて何ができるかを考え、取り組みを積み重ねる手法です。
この場合、現在の延長線上に未来があります。
それに対してバックキャスティングは、理想の未来の姿から逆算してどのような取り組みができるのかを考える手法になります。
具体的には、
【CSR・CSVの場合】
①これまでの生産活動で、環境破壊などが進んでしまった。
②では、環境を破壊せずに生産するためにはどのような取り組みを進める必要があるのか。
③その取り組みを進めるにあたり、その企業のこれまでの体制であればこのレベルの目標であれば実現可能。
④目標値が決まる。
【SDGsの場合】
①2030年に生産活動において発生する二酸化炭素を8割削減するという目標を設定。
②達成するために、2025年までに二酸化炭素の排出を4割減、2022年にまでに二酸化炭素を2割減というように逆算して目標を設定。
これが、CSR・CSV・SDGsの大きな違いと言えるでしょう。
フォアキャスティングとバックキャスティングの考え方はどちらが優れているというものではなく、ケースによって異なるものです。
そのため、企業の状況やスタンスによってCSR・CSV・SDGsを使い分けることが必要だと言えます。
ここまでCSR・CSV・SDGsの違いを説明してきましたが、最後になぜこれらの取り組みが企業にとって重要なのかを見ていきましょう。
ESGが背景にある
CSR・CSV・SDGsに関する取り組みを進めることで、企業価値は上がると言われています。
とりわけ、ESGの観点から重要視されているのです。
CSR・CSV・SDGsに加えて新たな単語が登場し、混乱するかもしれませんが簡潔に説明します。
ESGとは
ESGとは、
・Environment(環境)→温室効果ガス廃プラスチックの削減といった環境を守るための取り組み
・Social(社会)→適切な人権対策や多様性の実現などの社会的な問題への対応
・Governance(ガバナンス)→健全かつ効率的な経営
・Social(社会)→適切な人権対策や多様性の実現などの社会的な問題への対応
・Governance(ガバナンス)→健全かつ効率的な経営
の頭文字をとった言葉です。
近年、投資家や金融機関が企業を分析する際、この三観点を特に重視するようになりました。
この判断基準を元に投資することを「ESG投資」といいます。
投資家たちはESGに取り組んでいない企業を投資の対象から外す傾向にあるため、企業側は資金調達が難しくなる側面もあります。
つまり、ESGはこれからの時代を生き抜くために重要な基準といえ、CSR・CSV・SDGsに取り組むことで、企業の信頼度が上がり、価値も上昇するのです。
ESGに関する詳しいデータなどを知りたい方は、経済産業省のHPをご参照ください。
>>経済産業省HP
企業で取り組みの検討を
この記事ではCSR・CSV・SDGsの背景や違い、さらにはESGについて見てきました。企業には、自社の利益を追求すると同時に社会的価値を高める責任もあります。
今後さらにこれらの取り組みは重要視され、加速していくことが予想されるため、特に時流であるSDGsと事業内容を関連させ、取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
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