スペシャルティコーヒーとは?特徴や楽しむための方法も紹介

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最近、「スペシャルティコーヒー」という言葉を耳にするようになりましたが、通常のコーヒーとの違いは知っていますか?

本記事ではスペシャルティコーヒーの詳細や特徴、楽しむための方法をお伝えします。

さらに、スペシャルティコーヒー専門のサブスク「PostCoffee」の代表である下村さんにもお話を伺いました。
早速スペシャルティコーヒーについて見ていきましょう。
 

目次
1.スペシャルティコーヒーとは?
2.スペシャルティコーヒーの評価基準
3.スペシャルコーヒーとトレーサビリティ
4.スペシャルティコーヒーを楽しむための方法
5.Web診断を取り入れたPostCoffeeがおすすめ
6.PostCoffee代表下村さん・広報白鳥さんへインタビュー

スペシャルティコーヒーとは?



スペシャルティコーヒーとは、味や香りなど決められた評価基準を満たし、コーヒー豆の体制・工程・品質管理が徹底された品質の高い生豆のことです。

詳しい内容に入る前に、まずスペシャルティコーヒーの歴史を確認していきましょう。
 

スペシャルティコーヒーの歴史


ここではスペシャルティコーヒーの考え方が誕生するまでの流れを簡単にまとめました。
 

1960年~1970年代

東西冷戦中、アメリカは中南米の共産化を阻止する目的として、主産業であったコーヒー豆の栽培に注目。コーヒーを安い値段で大量に買い付けました。

これにより、生産国のコーヒー豆の品質低下につながります。その後、東西冷戦が終結に近づくと、カリフォルニアでは高品質なコーヒーを提供する自家焙煎のお店が続々と登場します。

当時のお店では、カリフォルニアで有名な高級コーヒーであるピーツコーヒーや深煎りコーヒーが提供されていたそうです。

1982年

1980年代に入るとアメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)の設立により、コーヒーの消費に対する考え方が、高品質なものを求める傾向へと変わっていきます。

1989年

しかし、再びコーヒーの供給過剰が目立ち始め相場は暴落。コーヒーの原価割れが相次ぎ、多くのコーヒー農園が苦しい状況に陥ります。

同時に、回復を見せていたコーヒーの質も再び下がり始めました。

1999年

生産国はこの状況を改善するために、スペシャルティコーヒーのインターネットオークションである「カップオブエクセレンス プロジェクト()」を開始。

2000年~現在

この頃から消費国側は、市場価格に振り回される生産者や時代の流れに危機感を持ち始めます。そして「高品質のコーヒーを適正価格で買い付けることが大事」という意識が広まり始めたのです。

これにより、品質と生産者の生活が守られるようになりました。

現在もその方向性は変わっていませんが、すべての取引で意識されているとは言えないのが現状です。


)カップオブエクセレンス プロジェクト:世界中のコーヒー生産国の政府が、ITC(国際貿易センター)とIOC(国際コーヒー機構)の協力のもと、高品質なコーヒーの生産と発展途上国の自立を促進するために進められている国際プロジェクト。

このようにスペシャルティコーヒーは、高品質であることはもちろん、生産者のことも考えられている商品であると言えます。

とはいえ、品質にこだわっているコーヒーすべてがスペシャルティコーヒーと呼ばれるわけではなく、明確な評価基準をクリアしなければなりません。では、どのような基準で評価されているのかを見ていきましょう。

スペシャルティコーヒーの評価基準



一般的にスペシャルティコーヒーの評価は、世界各国の「スペシャルティコーヒー協会」独自の評価基準と、アメリカのコーヒー協会「SCAA」の評価基準を合わせた内容で行います。

日本でも独自の定義が決められており、
”消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続するコーヒー感が甘さの感覚で消えていくこと。カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。” 引用元:日本スペシャルティコーヒー協会
となっています。

では、日本のケースからスペシャルティコーヒーを審査する評価基準を具体的に見ていきましょう。
 

評価基準


日本では、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)によって評価が決められています。評価項目は大きく以下の7つに分けられています。
 
・カップ・クオリティのきれいさ
・甘さ
・酸味
・口に含んだ際の質感
・風味特性とプロフィール
・後味の印象
・バランス

100点満点で採点され、80点以上のものをスペシャルティコーヒーと認定。それぞれの項目を1つずつ簡単に説明します。
 

カップ・クオリティのきれいさ

カップ・クオリティとは、SCAJのカップ基準評価に基づいたコーヒーの風味を指します。

ここで言う「きれいさ」とは、風味の欠点や汚れがまったくないことを示しており、加えて、コーヒーの栽培地特性を明確にすることも必要です。

栽培地特性を明確にするためには、「栽培」「収穫」「回収」「選別」「生産処理」「保管」「焙煎」「抽出」の8つの項目が適切に行われていることや、正しい情報が公開されていなければなりません。

一般的なコーヒーは栽培地特性が曖昧になっているものも多く、ここを明確にすることで、安心安全な「透明性」のあるクリーンなコーヒーだと判断されるのです。
 

甘さ

コーヒーの実の熟度と均一な熟成具合は、甘さに直接関係してきます。

ここでの「甘さ」とは、コーヒー豆自体に含まれる糖分量ではなく、甘さを感じる成分や要素のことです。たとえ糖分が高い場合でも、甘さを感じる際に邪魔をする
辛さのある苦み
刺激的な酸味
渋みや汚れ
などがあると評価が下がります。
 

酸味

酸味は、「爽やかな酸味」あるいは「繊細な酸味」が評価のポイントとなり、特に質に注目。

良質な酸味のあるコーヒーが、スペシャルティコーヒーにふさわしいとされています。そのため、
過度な酸味
爽やかさ
キレのない酸味
劣化が原因で発生した酸味
不快な印象を与える酸味
上記のような酸味は評価が下がるようです。
 

口に含んだ際の質感

スペシャルティコーヒーは味覚の評価だけでなく、触覚や感覚に関する評価も大切にしています。

そのため、コーヒーを口に含んだ際に感じる、
粘り気
密度
濃さ
重さ
舌触りの滑らかさ
なども評価項目に入っているのです。

そして、口に含むとフルーツを連想させる酸味のコーヒーが評価されます。
 

風味特性とプロフィール

スペシャルティコーヒーと通常のコーヒーを見分ける際に、最も重要な評価項目になる「味覚」「嗅覚の組み合わせ」「プロフィール」。

プロフィールとは、栽培地域の気候や風土などの詳細を指し、地域特性を正しく評価するために必要です。
 

後味の印象

スペシャルティコーヒーとして認められるためには、後味も重要な要素。コーヒーを口に含み飲み込んだ際に、コーヒーの後味が「甘さの感覚で消えていく」のか「過度な刺激のある嫌な残り方をするのか」で評価をします。
 

バランス

ここでの評価ポイントは、

風味の調和
欠けている要素は何か
突出している要素は何か

に注目しています。

スペシャルティコーヒーは「総合的にバランスのとれたコーヒー」であることが前提です。酸味や渋みに際立つやコクがない、香りが弱いなど、何かが強すぎても弱すぎてもいけません。

絶妙なバランスと飲むと心地良くなれるコーヒーこそ、スペシャルティコーヒーの名にふさわしいのです。

スペシャルティコーヒーは時代とともに発展や変化を遂げているため、評価基準も随時修正されています。


ここまで評価基準について見てきましたが、評価後には適切な保管を行う・劣化のない状態で焙煎されなければいけないといった、徹底した管理体制も求められています。
 

適切な保管


輸送から販売までの保管方法として、相性が良い方法は真空パックによる梱包です。真空パックを利用することでコーヒー豆の劣化や雑菌の繁殖を抑えます。

また空調の付いていないコンテナで輸送する場合は、グレインプロと呼ばれる厚手のビニール袋で包み、麻袋に入れて輸送します。
 

劣化のない状態で焙煎


スペシャルティコーヒーは、お店に届いたあとの管理も重要で、劣化のない状態で焙煎されなければなりません。ここでいう劣化のない状態とは、「欠点豆が少ないこと」が挙げられます。

欠点豆とは、コーヒーの質を落とす要素となるもので、
欠豆:製造、運搬の過程で割れるや欠けてしまった豆
潰れ豆:コーヒー豆を製造する過程で踏まれて潰れた豆
貝殻豆:製造過程でコーヒ豆の中身がなくなった豆
発酵豆:コーヒーの内部まで発酵した豆
黒豆:発酵して黒くなった豆
生育異常豆:遺伝子異常などの理由から正常に育たなかった豆
カビ豆:カビが生えてしまった豆
虫食い豆:虫に食べられて損傷がある豆
死豆:成熟後に死んでしまった豆
パーチメント:果肉の内側にある種子を包んでいる皮が残っている豆
などが挙げられます。上記のような欠点豆の混入を防ぐために、お店では機械や手を使って取り除いているのです。

このように独自の評価基準・適切な保管・欠点豆の排除など、厳しい審査や管理を経て、高品質なスペシャルティコーヒーとして販売されます。

ここまでスペシャルティコーヒーとはどのようなものか見てきました。味や風味以外にも、そのコーヒーがどこで、誰が、どのように作られ、消費者にどのように届くかが大切なポイントであることも特徴として挙げられていました。

次ではこの点について、もう少し踏み込んで見ていきましょう。

スペシャルコーヒーとトレーサビリティ



コーヒーの、どこで、誰が、どのように作られ、消費者にどのように届くかを明確にするのが「トレーサビリティ」と呼ばれるものです。
 

トレーサビリティとは?


トレーサビリティとは、仕入れから廃棄にいたるまで追跡可能な状態を指します。

トレーサビリティにより、「生産国」「コーヒーを栽培した農園」「生産者」「栽培方法」「流通経路」などが、企業だけでなく消費者にも分かるようになり、透明性が確保されます。

これにより、安心してコーヒーを楽しめるようになるため、信頼の獲得にもつながるのです。とはいえ、気になるのがフェアトレードコーヒーとの違いです。

フェアトレードコーヒーも、トレーサビリティが明確になっているコーヒーですが、どこに違いがあるのかを次では見ていきましょう。スペシャルティコーヒーとフェアトレードコーヒーの違いそれぞれの違いを確認する前に、まずはフェアトレードコーヒーがどのようなコーヒーになのか確認します。
 

フェアトレードコーヒーとは?


まず、フェアトレードは「公正な貿易」を意味します。貧困で苦しむ人が多い発展途上国の、経済の安定や自立支援などを目的に作られた貿易の仕組みで、生産者の納得のいく価格で取引される点も特徴です。

つまり、フェアトレードコーヒーは公平な取引によって成り立っているコーヒーということになります。
 

流通経路が異なる


「スペシャルティコーヒー」と「フェアトレードコーヒー」どちらとも、生産者に適正な金額が支払われているなどの配慮がされている点では同じですが、主に、①流通経路②重視しているポイントの2点に違いがあります。
 

①流通経路

フェアトレードコーヒーの場合、生産者と輸出業者の間にフェアトレード団体が入ります。団体が入ることで、生産者が不利にならないよう条件などが調整されているのです。

一方でスペシャルティコーヒーは、カフェや焙煎業者が生産者から直で買い付ける仕組みとなっています。


 

②重視しているポイント

次に、それぞれのコーヒーが重視しているポイントも異なります。フェアトレードは途上国の経済を安定させることや自立支援など、生産者を第一に考えて作られました。

それに対してスペシャルティコーヒーは特に品質にこだわっており、良いコーヒーを適正な価格で買い取ることで、結果的に生産者の安定につながります。

とはいえどちらもサスティナブルなコーヒーであるには変わりないので、その日の気分によって選択しても良いかもしれません。



ここまでがスペシャルティコーヒーの説明となります。次は、実際にスペシャルティコーヒーを楽しむ方法を見ていきましょう。

スペシャルティコーヒーを楽しむための方法



実際にスペシャルティコーヒーを楽しむためには、「専門店に行く」「オンラインショップで購入する」「サブスクを利用する」の3つの方法があります。

1つずつ説明するので自分に合った方法を見つけ、スペシャルティコーヒーを日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。
 

【方法①】専門店に行く


まず1つ目が、近年増加傾向にあるスペシャルティコーヒー専門のカフェを利用する方法です。

お店を訪れることで、知識がなくてもおすすめのコーヒーや、それぞれの味の違いを教えてもらえるといったメリットがあります。それに加えて、なによりプロが淹れてくれるため、スペシャルティコーヒー本来の味を楽しめます。
 

【方法②】オンラインショップで購入する


自宅にコーヒーを淹れる道具があれば、オンラインショップを利用してコーヒー豆を購入するのも方法の1つです。

最近では、スペシャルティコーヒー専門のオンラインショップも増えており、生産国や生産者、コーヒー豆の特徴なども確認できます。「さまざまな選択肢の中からじっくり選びたい」という方にはおすすめです。

しかし種類が多すぎて、選びきれずに悩んでしまう可能性もあるかもしれません。また、「1袋購入したけど、選んだコーヒー豆が口に合わなかった」というデメリットもあります。
 

【方法③】サブスクを利用する


そして今回、特におすすめしたいのがサブスクを利用する方法です。

自宅にコーヒー豆が定期的に届く気軽さと、さらには1袋単位ではなく、短期間に飲み切れる量で届くのが魅力です。忙しい、専門店に足を運びづらい、ちょっと試してみたいといった人に最適なサービスと言えるでしょう。

サブスクをきっかけに今まで知らなかったコーヒー豆と出会うことができ、自分でコーヒーを豆からひいて淹れる楽しさも味わえます。

最近ではコーヒーのサブスクが増えてきていますが、そのなかでもスペシャルティコーヒー専門のサービスを展開しているのがPostCoffeeです。そこで次では、自宅で気軽にスペシャルティコーヒーを楽しめるPostCoffeeについて紹介します。

Web診断を取り入れたPostCoffeeがおすすめ


引用:PostCoffee

先述したようにPostCoffeeは、スペシャルティコーヒー専門のサブスクを展開する会社です。「自分の好みのコーヒーが分からない」「コーヒーに詳しくないけど、おいしいコーヒーが飲みたい」という人には最適なサービスだと言えるので、詳しく紹介します。
 

PostCoffeeとは?


PostCoffee(ポストコーヒー)では、毎月3種類のスペシャルティコーヒーが入ったボックスが届きます。コーヒー豆の形状も、粉末にしたコーヒー豆やコーヒーバックなど、自分に合ったタイプを選べるのが嬉しいポイントです。

ボックスの中にはコーヒーだけでなく、フィルターやドリッパーなど、コーヒーを飲む際に必要な道具も一緒に送られてきます。お湯とマグカップを用意するだけで、誰でも手軽においしいコーヒーを楽しめます。
 

お得な価格設定

お店でスペシャルティコーヒーを飲む場合、一般的には1杯500円以上と言われています。対してPostCoffeeでは、1袋45gのコーヒー豆が3袋入って月額税込1,598円。1回のコーヒーに必要なコーヒー豆の量は15gのため、コーヒーを9杯楽しめる計算になり、1杯あたり約177円で味わえるのです。

このお得感が「スペシャルティコーヒーを飲んでみよう」「PostCoffeeを利用して楽しんでみよう」と初心者のハードルを下げ、生活に取り入れやすくしています。

 

web診断によって自分に合ったコーヒーを選んでもらえる


PostCoffeeでは、自分に合ったコーヒーを選んでくれるweb診断を取り入れています。

web診断では、コーヒーに関する内容から「行きたい国」や「休日の過ごし方」など7つの質問に回答。その回答をもとに、1人ひとりの好みに合ったスペシャルティコーヒーを教えてくれます。

その後、申し込みを行えば定期的に自宅のポストにスペリャルティコーヒーが届きます。コーヒーの種類は毎月変わりますが、フィードバックを繰り返すことで好みの味のコーヒーに近づくのです。
 
フィードバックとは、届いたコーヒーに対して「好き」「普通」「嫌い」の評価を行い、それを参考にしたコーヒー豆が次の月に届く仕組みです。

このように、楽しく飲める仕組みがPostCoffeeの最大の魅力です。では、なぜこのようなサービスを始めようと考えたのでしょうか。

今回、PostCoffeeの代表である下村さんと、広報の白鳥さんにスペシャルティコーヒーやサスティナビリティに関する話をお伺いしました。

PostCoffee代表下村さん・広報白鳥さんへインタビュー


ここからは会話形式でお届けします。

---今日はよろしくお願いします。早速ですが、販売方法にサブスクリプション(定期便)を選んだ理由を教えてください。

下村 お客様に世界中のおいしいコーヒー(スペシャルティコーヒー)との出会いを提供し、そこから自分にあったコーヒーを選び取れるようになることで、充実したライフスタイルを送ってほしいと思ったからです。

---そのように考えたきっかけがあったんですか?

下村 私は過去に3年ほどコーヒー屋を営んでいた時期がありました。そこで分かったのが「自分に合ったコーヒーを知っている人があまりにも少ない」ということです。そこでWeb診断で、お客様のコーヒーの好みを把握したのち、それに沿ったスペシャルティコーヒーを提案するというサブスクリプションを使ったサービスを始めることにしたんです。

---私もWeb診断をしてみましたが、ランチの後に食べたいデザートや休日の過ごし方などコーヒーと関連性の低いものもたくさんありました。

下村 自分に合うコーヒーを知らない人が、「浅煎り中煎りどちらが好みか」「どこの生産地のものが好きか」と聞かれても正直迷ってしまいますよね。だから、好きなデザートや休日の過ごし方といった身近な話題から、その人の嗜好やライフスタイルを探る形にしました。
 

おいしいコーヒーを広めたい


---スペシャルティコーヒーを取り扱おうと思った理由も教えてください。

下村 「おいしいコーヒーを広め、ユーザーがそこから自分にあったコーヒーを選び取れるようにしたい」と思ったからです。

---何かきっかけがあったんですか?

下村 コーヒー屋を始める前の話になりますが、自分は缶コーヒーばかり飲む、自称コーヒー好きだったんです。ある時スペシャルティコーヒーを飲む機会があって、あまりの美味しさにカルチャーショックを受けました。その後自分でハンドドリップをするまでになり、生活自体も豊かになったと感じているんです。この体験を多くの人に届けられるよう、スペシャルティコーヒーを取り扱うPostCoffeeを設立したというわけです。

---スペシャルティコーヒーの国内流通率は8%と言われています。仕入れに苦労することはありませんでしたか?

下村 輸入手続きや費用の問題はネックではありましたが、仕入れ先自体には困りませんでした。というのも、世界的にスペシャルティコーヒーのマーケットは大きくなっていて、流通もどんどんスムーズになっているからです。

---日本にいるとそう感じませんが、世界では広がりつつあるんですね。

下村 そうですね。日本では消費者側の需要が大きくないので、スペシャルティコーヒー専門店もそれほど多くありません。そのためPostCoffeeでは仕入れを有利に進められていると思います。

--PostCoffeeさんはどんな人にこのサービスを使ってほしいと思っていますか?

下村 生活の中でコーヒーを飲む機会は多いけど、コーヒー自体へのこだわりはない方ですね。「インスタントコーヒーを飲んでる」「コンビニで目についた缶コーヒーを買う」といったような。
 

SNSで広めたくなるような商品設計


---そういった方々にPostCoffeeを知ってもらうために、具体的にどういった施策を行いましたか?

下村 SNSを使ったマーケティング活動ですね。スペシャルティコーヒーのあるライフスタイルをイメージできる投稿で露出を増やし、「オシャレだな。試してみようかな。」といった「なんか楽しそう」というノリで購買行動に移れるきっかけとなるようにしました。

---SNSにPostCoffeeについての投稿をしてくれる人もいるんじゃないですか?

下村 そうですね。投稿したくなる仕掛けづくりも強化しました。簡単なところで言うと、手元に届く商品の入った箱をおしゃれなつくりにしました。思わず写真に撮ってSNSに投稿したくなるように出来ればと。地道ですが少しずつその輪も広がってきていると思います。

---確かに私も届いてすぐに写真を撮ってしまいました。


 

スペシャルティコーヒーは一度体験すると後戻りできなくなる


---スペシャルティコーヒーを一時の流行で終わらせずに、定着させるためにはどうしたらよいでしょうか?

下村 ブームになるかは運次第ですが、定着することはできるかなと思ってます。

---というと?

下村 とにかく味の違いが圧倒的だからです。スペシャルティコーヒーを1ヶ月飲んだ後に「市販のコーヒーを飲もう」と思っても飲めないんですよ。現状日本で一般的に飲まれているコーヒーとスペシャルティコーヒーの味や香りの違いってそのくらいあるんです。

---確かに普通のコーヒーとの差に驚きました。

下村 しかもスペシャルティコーヒーって手が届かないほど高いものではないし、日常に取り入れやすい。一度体験してしまうとなかなか後戻りできないんですよね。

---一度習慣になれば継続しそうですね。

下村 はい。そのためにも地道に少しずつマーケットを開拓していくことが重要なのかなと考えています。
 

ユーザーの声を聞きながらコーヒーを厳選




---PostCoffeeさんでは、さまざまな国のロースターパートナー()から仕入れたコーヒーを楽しめますが、ロースターパートナーを選ぶ際の基準などはありますか?スペシャルティコーヒー以外の基準があれば教えてください。
)ロースターパートナー:PostCoffeeとパートナー契約を結んだ、コーヒー豆の焙煎も行っているコーヒーショップのこと。

下村 コーヒーに詳しいユーザーの声を聞いて厳選しています。結果的に界隈で良く名前を聞くロースターさんが集まりましたが、これまでに美味しいコーヒーを知らないお客様が、コーヒーライフをスタートする入口としては良いのかなと。

---個人的には、生産者や環境の部分にも配慮をした豆を使っている印象も受けましたが。

下村 スペシャルティコーヒーという商材自体がもともとエコでサスティナブルな生産体制であることが多いので、そのような観点で特別選んではいませんね。

---スペシャルティコーヒーを買うことで、意識せずに人や環境に配慮したおいしいコーヒーを選んでいることになるんですね。

下村 そうです。だから有名な所とかネームバリューのある所を選択することによって、結果的にエコやサスティナブルにつながる。消費活動と同時に社会的、環境的な課題にも貢献できるっていうのが理想なので、みんなが飲みたいであろうコーヒーを厳選しています。

---なるほど。ちなみに、おいしいコーヒーができる環境(地域や風土)の特徴とは、どのような点が挙げられますか?

下村 個人の好みに寄るので一概には言えないですね。例えばエチオピアのコーヒーはフルーティーなものが多かったり、インドネシアのコーヒーは苦みとか香りが強いものが多い。さらには焙煎でも変わります。そのため「この環境で育てられたコーヒーが一番良い」ってのはないですね。

---そうなるとPostCoffeeさんのサブスクは、毎月違う種類のコーヒーが届くので、好みや知識の幅が広がりそうですね。

下村 そうですね。PostCoffeeを続けていくと、知識や体験が蓄積されていって「あ、自分はエチオピアのフルーティーなものが好きなんだ」と分かってくるかなと。そんな感じで好みを把握しつつ、選ぶのがさらに楽しくなるようになったらいいなと思っています。

---おいしいコーヒーを飲みたいけど、それを扱っている場所が少ないというのが今の日本だと思っています。現在は個人に向けて販売していますが、オフィスや自治体に向けた展開は考えていますか?

下村 もちろん、企業や自治体に対しての販売もいずれやりたいなと考えています。ただ、今はまず個人の方に集中して活動していきたいです。

---コーヒーミルやグッズなどがある程度揃うと楽しみ方の幅が広がると思いました。このあたりに関しては何か展開する予定はありますか?

下村 つい最近、グローバルのコーヒー器具メーカーの「HARIO」と資本業務提携しましたので、これからは周辺の器具もセットで提案していきたいですね。

リアルでのコーヒーの体験の場を作りたい




---他にもスペシャルティコーヒーを広めるための案はありますか?


下村 コロナ禍次第ですが、「リアルでのコーヒー体験の場」をどんどん作っていきたいなと思っています。PostCoffeeの正式版をリリースした際に、リアル店舗も一緒にオープンしたんですがやっぱりリアルの強さはありますよね。

--具体的に、どのような場にしたいと考えていますか?

下村 それこそロースターパートナーが国内外合わせて15社いるので、「コーヒーフェスができるな」と思っています。全国各地の主要都市でコーヒーフェスを開催して、リアルでいろいろなコーヒーの違いだったり、美味しいコーヒーの体験をしてもらいたいなと。

ここまでさまざまなお話を聞かせていただきました。楽しいコーヒーライフが送れそうですよね。最後により踏み込んで、これからの課題や環境に対する考え方を伺っていきます。
 

消費行動で自然と社会・環境的な課題にも貢献できる仕組みを作る


---現在、「コーヒーの2050年問題()」が注目されていると思います。PostCoffeeさんでは何か対策は行っていますか?
)コーヒー2050年問題:雨の減少や気温の上昇など地球温暖化が原因でコーヒーが育ちにくくなり、収穫量の減少や低品質なコーヒーの増加につながる恐れがあると危惧されている。

下村 主に地球温暖化によりコーヒー豆が作れなくなるって言われているんですけど、品種改良や新しい生産方法などが、どんどん生まれてくるだろうなと考えています。

---地球環境に負荷のない「循環型の生産」がコーヒー業界でも注目されていると思います。PostCoffeeさんのロースターパートナーである「ロットシックスティワン」も循環型なコーヒーブランドですよね。このようなロースターを増やしていく予定はありますか?

下村 増やしていきたいですね。私たちが自信を持っておすすめできるものを厳選してお届けできればなと考えています。

白鳥 以前、ネームバリューのあるお店に話を聞いた際、ミルクを全て植物性にすることを検討中だと仰っていました。やはりスペシャルティコーヒーを扱っている有名なロースターさんは、もともとエコやサスティナブルに関心を持っている所が多い印象を受けました。

下村 ロースターさんが環境に配慮しているのであれば、PostCoffeeとしては消費側からなにか変えていきたいですね。

---どのようにして変えていきたいですか?

下村 個人的に消費者に対して「この商品がすごくエコだから使ってください!」と押し付けるのは違うかなと考えています。そこでPostCoffeeを利用するだけで勝手に環境や生産者の立場が良くなっていく。そんな仕組みを作りたいです。

---仕組み作りのために何かされていますか?

下村 当たり前のことを粛々とやって行こうと。配送用の梱包材に再生段ボールを利用したり、同封しているマガジンに再生紙や、ボタニカルインクを採用したり。

---現在の梱包材などの状況はいかがでしょうか。

下村 段ボールとボックスの中に入っているマガジンに関しては環境に配慮したものになっています。ただ、それを消費者さんが、資源ごみとして出してくれるかどうかも重要になってくるんですけどね。

---コーヒーのパッケージについても教えていただけますか?

下村 現状はアルミを使っていますね。

---コーヒーのパッケージはアルミが良いんでしょうか?

下村 そうですね。コーヒー、とくに焙煎豆はアルミとの相性がとても良くて、光をちゃんと遮ってくれるし空気も通さない、保存する素材としてはとても良いんです。

ただ、スペシャルティコーヒー自体はどの保存方法でもとてもおいしい。さらには、うちの商品は2週間から1ヶ月ほどで消費するものです。1、2年放っておくものでもない。そのため、パッケージはアルミじゃなくてもいいんじゃないかなと感じています。

---では今後別の素材に切り替えていく予定ですか?

下村 そうですね。いい方法を考えていきたいなと思っています。
 

フェアトレードコーヒーとの違い


---環境や生産者のことを考えるというと、フェアトレードコーヒーがありますよね。スペシャルティコーヒーの違いはどこにあるのでしょうか?

下村 フェアトレードコーヒーは、品質基準が曖昧なんです。高品質だから通常のコーヒーより高い価格設定になっているわけではない。どちらかというと、生産者への対価を重視しています。

そのため、価格=高品質というわけではないんです。それに対してスペシャルティコーヒーは、農家さんからの直接取引が基本です。品質に対する評価のみで値付けがされているので、価格の高さは品質の高さに比例します。

---味はいかがですか?

下村 一概にどちらがおいしいは言えないですね。フェアトレードコーヒーにもさまざまなランクがあるし、好みもあるので。
 

コーヒー自体を楽しんで欲しい




---もうひとつ伺いたいことがあります。私はこれまで様々な方にお話を伺ってきましたが、皆さん「生産者や環境についての現状を消費者は知った方が良い」と仰っていました。その一方で、「生産者が大変だから買わなきゃ」となんとなくネガティブな考えで消費することへの懸念もされていました。もっとポジティブに消費するためのアプローチ方法はあるのでしょうか?


下村 現状を知ることは大切だと思います。スペシャルティコーヒーを取り扱うECサイトを見ると、現状を知るという意味で生産者の写真が並んでいるものがよくあります。でも、PostCoffeeは”生産者推し”はしていません。

---なぜですか?

下村 まずはコーヒー自体を楽しんで欲しいからです。その後で少しずつ生産者のことや抱えている課題を知っていけば良いのかなと。「知ること」を押し付けるのではなく、消費を通して興味を持ったうえで知ってもらうのが大切かなと思いますね。

---まずは「体験を届けたい」や「おいしいコーヒーを広めたい」と仰っていましたもんね。

下村 はい。とはいえ、生産者の情報を載せないという意味ではありません。実際に発信しているマガジンやブログなどには掲載しています。コーヒーを飲む人も多様なので、それぞれの楽しみ方で楽しんでもらえればと思います。

---本日はありがとうございました!

>>PostCoffeeの詳細はこちらから

生活のなかにスペシャルティコーヒーを取り入れてみよう!

スペシャルティコーヒーには「高品質で美味しいコーヒー」を作るために、さまざまな工夫やこだわりが詰まっています。通常のコーヒーよりも厳しく管理し手間をかけ、私たちのもとへ届くのです。

普段はインスタントコーヒーで済ませてしまう人も、この機会にスペシャルティコーヒーを試してみてください。味や香りはもちろんですが、お湯を注ぎコーヒーを入れる、このひと手間が生活をより良いものにしてくれます。

そして、私たちがスペシャルティコーヒーを選択すると、自然と生産者たちの豊かな暮らしにもつながるのです。

生産者と消費者の両方に利点のある、スペシャルティコーヒーを生活のなかに取り入れてみましょう。

書き手:鶴田有紀

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