食品ロス(フードロス)とは?
最近メディアでも頻繁に取り上げられるようになった「食品ロス(フードロス)」という言葉を知っていますか?言葉を見聞きしたことはあっても、「実際に日本や世界ではどんな状況がおきているの?」、「どうしてこんなに問題になっているの?」とイマイチ実態の掴めない食品ロス。
この記事では、食品ロスの定義、その原因や問題点、私たちにもすぐに取り組めるフードロスの対策を幅広く紹介します。
目次 |
1.食品ロス(フードロス)の定義 |
2.なぜこんなに食品ロス(フードロス)が問題視されているの? |
3.食品ロス(フードロス)はなぜ起こる? |
4.食品ロス(フードロス)はどこで発生している? |
5.食品ロス(フードロス)を減らすために私たちが今日からできること |
6.身近な食品ロス(フードロス)対策はたくさんある。まずはできそうなことから始めてみよう |
食品ロス(フードロス)の定義

「食品ロス(フードロス)」とは、まだ食べられるはずなのに捨てられてしまう食品のことです。
近年ニュースや新聞等でも多く取り上げられることから、最近できた言葉のように思われますが、実は約30年前からメディアに登場し、問題提起されてきたものです。
専門家の研究としては、さらに以前から家庭での食品ロスの実態等について調査が続けられてきています。
数字で見る食品ロス(フードロス)
日本では年間どれくらいの量の食品ロスが出ているのでしょうか。
令和2年4月に農林水産省・環境省から発表された「食品ロス量(平成29年度推計値)」によると、1年間の食品ロスは612万トンとされています。
これを国民1人あたりに換算すると、「お茶碗約1杯分(約132g)」の食べものが「毎日」捨てられていることになります。
世界的にみると状況はさらに深刻です。
世界の年間食品廃棄物の量(食品ロス量を含む)は13億トンにものぼります。
生産されている食料は毎年約40億トンと言われており、生産された量の約1/3は手をつけることなく捨てられていることになります。
食品廃棄とはちがうの?
「食品ロス」と「食品廃棄」は一見同じイメージを持ちますが、厳密には定義が違います。
「食品廃棄」は、もともと食べられない部分、例えば魚や肉の骨、果物の皮や種や芯の部分などを捨てる場合に該当します。
日本では、「食品ロス」と「食品廃棄」それぞれについて実態を数値化し、データを公表しています。
英語では"Food Loss"とは言わない?
日本のメディアでは「食品ロス」とともに「フードロス」というカタカナでの呼び名も一般的ですが、FAO(国際連合食糧農業機関)の公式サイトには、“Food Loss and Food Waste”という言葉が使われています。
“Food Loss(フード ロス)”は「損失」というニュアンスが強く、消費者のもとに届く前の過程で発生する損失を指しています。
消費者による期限切れや食べ残しによる廃棄は“Food Waste(フード ウェイスト)”と区別していますが、実際にはそれらを分けてデータをとることが難しく、両者をまとめて”Food Loss and (Food) Waste”と呼んでいます。
日本でいう「フードロス」は諸外国では少し違った意味になるようですね。
SDGsにも注目される食品ロス(フードロス)

食品ロスは、SDGs(「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」)の目標12「つくる責任つかう責任」の中で、「2030年までに小売・消費レベルにおける『世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減』させ、『収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少』させる」と目標が具体的に示されています。
「小売・消費レベル」での目標も盛りこまれているので、私たち一人ひとりの意識の変化や行動も重要な意味を持つことになります。
なぜこんなに食品ロス(フードロス)が問題視されているの?

そもそもなぜ今、食品ロスが問題視されているのでしょうか。
◆食の不均衡
一つ目の問題点は、「食の不均衡」です。
世界の人口の約9人に1人は飢餓に苦しんでいるという現状があります。
彼らへの食糧援助量は、年間約390万トン。
一方でその約1.5倍以上の量が、日本だけで、食品ロスとして廃棄されています(年間約612万トン)。
◆環境・経済に対する影響
もう一つは、環境や経済に対する影響です。
大量の食品を廃棄するために大量の資源が使われ、莫大なコストがかかります。
さらに、焼却や埋め立てでの廃棄は環境汚染にもつながります。
持続可能な社会を維持するために、食品ロスは世界全体で取り組まなければいけない問題なのです。
食品ロス(フードロス)はなぜ起こる?
食品ロスが起こる原因には主に「家庭・外食での食べ残し」や「腐敗やカビの発生」、「お店での売れ残り」などがあります。「食べ残し」や「売れ残り」という原因から、供給される量に対して消費量が少なく、食品が余ってしまっている状況がわかります。
食料は、人口が多く、収入があり、消費が多く見込まれる先進国の方へどうしても供給量が偏ってしまうため、食料が余ってしまう国と、食料が足りない国が発生してしまうのです。
食品ロス(フードロス)はどこで発生している?
世界で特に食品ロスが多く発生している地域はどこなのでしょうか。「1人あたりの食品ロスと廃棄量」を地域ごとに比較した調査では、最も多い地域が「北アメリカ・オセアニア」、次に多いのが「ヨーロッパ」、そして「アジア・先進工業地域」と続きます。
これらの地域は途上国に比べ、消費段階での食品ロスの割合が高いことが分かっています。
一方、途上国にも食品ロスが発生しないわけではありません。
途上国においては、生産から小売に至る段階での食品ロスの割合が高い現状があります。
地域によって食品ロスの原因は違うため、それぞれに合った対策を考えていく必要があります。
先進国での原因と対策

◆大量・多種陳列が「売れ残り」を生む
スーパーやコンビニでは、様々な種類の食品がたくさん陳列されている状態を維持するために多くの在庫を持ちます。
しかし、販売期限内に売り切れず、廃棄されてしまう商品も多く発生してしまいます。
◆高い「外観品質基準」が規格外品の廃棄を生む
特に先進国の小売店では、商品の“見栄え”(形・サイズ・重さ)に高い品質基準があります。
その要求に対して、加工業者や生産者はその規格に合う食品を作ります。
多少の規格外品であっても、味や栄養価、安全性には何ら問題がないはずです。
しかし、規格外ということで廃棄されることになります。
こうした市場の中で食品ロスをできるだけ起こさないためには、過剰に陳列せず需要に見合った商品を置くことや、商品自体の品質基準を緩和すること、規格外品のみを集めて販売するような新しい小売の形を作っていく必要があります。
このように、フードロスとビジネスは関係しているのです。
途上国での原因と対策

◆食料の貯蔵施設や市場インフラの未整備が廃棄を生む
収穫した食料の貯蔵や輸送、販売インフラに十分な予算がかけられず、鮮度の高い状態を保って消費者に届けることが難しい現状があります。
せっかく収穫しても、小売店に届くまでに悪くなってしまうと廃棄されることになります。
◆貧困によるやむを得ない出荷が廃棄を生む
貧しい農家の場合、お金が必要になり収穫時期には早すぎる未熟な作物を収穫し、売らざるを得ない場合があります。
結果的に、味や栄養価的にも価値が下がってしまい、消費に向かない場合は廃棄されてしまいます。
貧困など途上国ならではの問題が食品ロスの原因になっているため、まずは政府が主体となり生産から流通のインフラを整備することや、小さな生産業者が集まって規模を拡大するなどの対策で必要な量を、十分な鮮度で流通させられるようにしていく必要があります。
日本での原因と対策
日本の食品ロスの現状はどうなっているのか見ていきましょう。
日本での食品ロスのうち、事業系(製造や小売、外食業者から出る食品ロス)と、家庭系(食べ残し、期限切れ等による廃棄から出る食品ロス)の割合はおよそ半々となっています。
実は私たちの家庭から出る食品ロスも大きな要素になっているのです。
①食品ロス(フードロス)を削減する
日本の法律関連法律を2つご紹介します。
1つは「食品リサイクル法」です。
これは「事業系」食品ロスの発生を抑え、減量化することを目的とした法律で、食品関連業者から出る食品ロスの再生利用(飼料や肥料へのリサイクル)を推進しています。
もう1つは2019年10月に施行された「食品ロス削減推進法」です。
この法律は、国や地方公共団体、食品関連事業者が連携し、さらに消費者にも働きかけ、国全体で食品ロスの削減を推進することを目的として、より具体的な行動指針が示されています。
②全国美味しい食べきり運動
ネットワーク協議会国だけでなく、地方公共団体を中心とした取り組みが広がっています。
「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」もその一つです。
これは、「おいしい食べ物を適量で残さず食べきる」ことをテーマに、
・食材をムダなく使い切るレシピを公開
・全国チェーンの飲食店にこもりサイズメニュー導入を要請
・スーパーに、使い切りやすい少量・ばら売り食材の販売を要請
・全国チェーンの飲食店にこもりサイズメニュー導入を要請
・スーパーに、使い切りやすい少量・ばら売り食材の販売を要請
といった「食べきり運動」を推進し、食品ロスを削減するため設立された自治体間のネットワークで、全国各地から賛同する422自治体が参加しています(2020年6月15日現在)。
食品ロス(フードロス)を減らすために私たちが今日からできること

食品ロスが原因で世界では「食の不均衡」がおき、廃棄には環境的にも経済的にも悪影響があること、原因は地域によって異なり、対策も違うこと、日本での食品ロス削減に向けた取り組みが加速してきていることなどをご紹介してきました。
国をあげた対策も重要ですが、私たち個人にもできる食品ロス対策はたくさんあります。
「自分が行動に移しやすいものはどれか?」を選んで、簡単なものから始めてみましょう!
家庭でできる食品ロス(フードロス)対策
◆①買うときのワンポイント
「賞味期限」「消費期限」をチェックしましょう!
「消費期限」は、「過ぎたら食べない(飲まない)ほうがよい期限」、「賞味期限」は、「おいしく食べることができる期限」のことです。
期限の違いをチェックして、自分がその期限内に食べられる分を買いましょう。
◆②作るときのワンポイント
野菜皮むきや芯のカットなど、本来食べられる部分まで取り除いてしまっていませんか?
野菜のくずは集めてベジブロス(野菜だし)にしたり、前日の残り物をリメイクしたりして食べることもできます。
捨てる前に、レシピサイトで検索してみるのがおススメです。
>>詳細はCOOKPAD「消費者庁のキッチン」へ
◆③保存するときのワンポイント
適切な方法で保存すれば、食材が長持ちします。
保存する前に、方法を調べてみましょう。
また、災害用に備蓄されている食品などは、うっかり期限が切れるまで放っておいてしまいがちです。
定期的に確認して、期限の近いものから普段の食事に取り入れることで食品ロスを減らすことができます。
>>詳しくは消費者庁「食品ロスにしない備蓄のすすめ」へ
外食・買い食いするときにできる食品ロス(フードロス)対策

①店舗をさがすときのワンポイント
食品ロスの削減に積極的に取り組む飲食店があります。
自治体によってはこのような飲食店へ、食品ロス対策の協力店としてステッカーなどを提供しているところもあるので、そういった観点でお店を選んでみることで食品ロスに貢献することができます。
②注文するときのワンポイント
最近は、ハーフサイズや少な目の量で提供されるメニューの種類も増えてきています。
また注文するときにどれくらいの量かを聞いてみるのも1つのポイントです。
食べきれる量だけを注文することも食品ロスの立派な対策になります!
③どうしても食べきれないときは・・
食べきれない料理を持ち帰るための容器を提供してくれるお店や、自分で持ち帰り用の容器「ドギーバッグ」を持参すれば残った料理を持ち帰らせてくれるお店もあります。
どうしても食べきれないときは、持ち帰ることができるか相談してみましょう。
>>詳しくはドギーバッグ普及委員会へ
食品ロス(フードロス)をもっと知ろう!

さまざまなメディアやツールで食品ロスについての発信が増えています。
自分に合った学び方で、食品ロスについての知識や対策を増やしていきましょう!
①本や資料を読む
政府関係省庁のホームページには、私たち消費者向けに公開されている食品ロスに関する資料がまとまっています。
また、長野県松本市や北海道では子供たちが食品ロスについて触れるきっかけとなるよう絵本を作成し、ホームページ上で提供しています。
これをきっかけにお子さんと一緒に食品ロスについて学ぶのも良いですね。
>>消費者庁ホームページはこちら
>>長野県松本市環境部環境政策課はこちら
>>北海道農政部食品政策課はこちら
②動画を観る
よりカジュアルに学びたい人は動画を探すのもおすすめです。
YouTube等では、自治体のチャンネルで食品ロスについて紹介する動画も配信されています。
YouTube 東京都公式チャンネル「食品ロスを考えよう【3分版】
③アプリを使う
飲食店で余っている料理を検索し、購入することで「売れ残り」の削減に貢献できるフードシェアリングのアプリ等が提供されています。
これから実際に食品ロス対策に取り組んでみたい!という人におすすめです。
>>TABETEの詳細はこちらから
>>Reduce GOの詳細はこちらから
④食育に関する講座を受ける
自治体により食品ロスについての講座などを定期的に開催していることもあります。
本格的に学んでいきたい人は、「食育インストラクター養成講座」のような資格取得もできる勉強をはじめてみても良いかもしれません!
身近な食品ロス(フードロス)対策はたくさんある。まずはできそうなことから始めてみよう

食品ロスは世界全体で取り組んでいかなければならない大きな課題ですが、私たちが今日から取り組める身近な対策がたくさんあります。
まずは自分にできそうなことから始めて、食品ロスの削減につなげていきましょう!