「生ごみが減ってうれしい」「生ごみが堆肥になっていくのを見るのが楽しい」と、注目されているコンポスト。
生ごみを容器に入れれば堆肥になって便利に使えるだけでなく、ごみを減らせるのも魅力のひとつです。
この記事では、コンポストにはどのようなメリットやデメリットがあるのか、また自作する方法やおすすめのコンポスト6選などをご紹介します。自分に合うコンポストを見つけて、実際に使ったらどうなるかな?とイメージする参考にしてみてくださいね。
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コンポストとは
コンポストとは、家庭から出る野菜くずなどの生ごみや葉、紙などの有機物を、微生物の働きにより発酵・分解して堆肥を作ることを言います。
コンポストと似た言葉に「コンポスター」があります。コンポストはもともと堆肥という意味であるのに対して、コンポスターは堆肥をつくる容器や装置のことです。
コンポストは近代技術によって確立された
コンポストは植物を栽培するのに古くから利用されてきました。しかし、そのやり方は自然任せであったり、経験を頼りにしたりして作られていました。
これを技術として体系的にまとめたのが、イギリスの植物学者アルバート・ハワード卿(1873-1947)です。ハワード卿は、インドのインドール地方でコンポストの研究を進め、堆肥づくりの方法「インドール式堆肥化法」を確立しました。
日本では1920年に神奈川県内務部より、堆肥の効果や製造方法などを紹介した「堆肥のすゝめ」が発行されます。この冊子は、日本で堆肥の重要性を説いた先駆けといわれています。
コンポストは昔からの知恵でありながら、その技術は近代に確立した比較的新しい手法なのです。
それでは、コンポストにはどのようなメリットがあるのでしょうか。次に見ていきましょう。
参考:公益財団法人北九州国際技術協力協会(KITA)「コンポスト化技術-基本的な考え方」
コンポストのメリット
コンポストは、個人だけでなく、広く地球環境や持続可能な食の循環にもメリットがあります。早速見ていきましょう。
コンポストのメリット①生ごみが減る
ご飯や魚、野菜などの食品のごみをコンポストに入れて処理できるため、生ごみの量を減らすことができます。また、生ごみを捨てる回数やごみ袋の購入も少なく済みます。
ちなみに、1人が1日に出すごみの量は1キログラムです。これらを処理するのにかかる費用は日本全体で年間約1兆8627億円。一人当たり14,600円の税金が使われる計算です。
ごみの量が多くなれば、それだけ処理するのに使われる税金も増えます。より多くの人がコンポストを利用すれば、大幅なコストの削減もできるでしょう。
参考:一般財団法人 環境イノベーション情報機構「ごみと税金に関するエコライフ」
コンポストのメリット②二酸化炭素の排出を削減できる
家庭から出る食品由来の廃棄物は年間754万トンに上り、そのうち食べることができずに捨てるごみは全体の約65%にあたる493万トンとされています。
生ごみの約80%は水分といわれており、焼却するにはより多くの燃料が必要になるほか、二酸化炭素の排出量も増えます。
コンポストを利用して生ごみの量を減らせば、二酸化炭素の排出を抑えることが期待できます。
参考:環境省「食品廃棄物等の利用状況等(令和元年度推計)<概念図>」
コンポストのメリット③堆肥をプランターや庭、畑に利用できる
コンポストで作られた堆肥は、栄養がたっぷり含まれています。そのため、植物の栄養分を補うのに役立つことに加え、土壌を改善する効果もあります。
一方、化学肥料は肥料としての成分は豊富にありますが、土壌中の微生物の餌になる有機物は含まれません。そのため、化学肥料を土に与えると微生物は死滅してしまいます。
微生物は無機物をつくり続けて植物の成長に役立っています。コンポストの堆肥をプランターや庭、家庭菜園や畑に使えば、植物が健康に育つ助けになるでしょう。
コンポストのメリット④食料サイクルができる
コンポストで作った堆肥を菜園で使用し、収穫した野菜を食べる、そこで出た野菜くずをコンポストに入れる、そんな食の循環に取り組んでいる団体があります。
ここでは、各家庭のコンポスト活動を推進している、特定非営利活動法人 循環生活研究所(じゅんなまけん:福岡市)の「コミュニティコンポスト方式(LFC)」を紹介します。
画像引用:特定非営利活動法人 循環生活研究所「ローカルフードサイクリング」
まず、家庭で出た生ごみは各自のコンポストに入れます。そして、担当者がコンポストを回収します。
コンポストで作った堆肥を菜園で使用し、野菜を栽培します。
収穫した野菜は、地元のマーケットで販売されます。
そうして、自分が食べた野菜の生ごみが堆肥になって新しい野菜を作り、また食卓に上るという食の循環をつくっています。
画像引用:特定非営利活動法人 循環生活研究所「ローカルフードサイクリング」
この食料のサイクルは、地域だけでなく個人でもできる取り組みです。食が自然の恵みであることを実感し、また持続可能な食の大切さを学ぶことができるでしょう。
コンポストのデメリット
コンポストには、メリットだけでなくデメリットもあります。3つのポイントを押さえておきましょう。
コンポストのデメリット①堆肥になるまで手間や時間がかかる
堆肥を作るには、コンポストの容器や装置、設置場所などにより数時間から4カ月程度かかります。またその間も、毎日あるいは週に1回程度かき混ぜる場合があります
どの程度の手間や時間をかけられるのかを事前に考えて、コンポストを選ぶことが重要です。
コンポストのデメリット②微生物が分解できない材料は使用できない
コンポストは微生物が材料を分解することで堆肥ができます。つまり、コンポストに微生物が分解できない材料を入れても堆肥はできません。
生ごみでも、タケノコの皮やクリの皮など、微生物が分解しにくい食品もあります。コンポストに入れられない材料については、購入する際に説明書を確認すると良いでしょう。
コンポストのデメリット③虫や悪臭が発生する場合がある
土の量に対して生ごみや水分が多くなると、虫や悪臭が発生する可能性があります。生ごみの入れ過ぎや、水分量に注意して管理することが大切です。
臭いを防ぐためには、脱臭フィルターの付いているコンポストを選ぶのも一つの方法でしょう。もし、虫や悪臭が発生してしまっても、対策できることはあります。詳しくは、後述する「コンポストのトラブル対策」を参考にしてください。
ここまでコンポストのメリット・デメリットを見てきましたが、そもそもコンポストに生ごみを入れるとどうして堆肥になるのでしょうか。次に解説します。
コンポストが堆肥になるまで
コンポストの容器や装置に生ごみを入れると、生ごみの原料や空気中に存在する微生物がそれを食べて分解します。
微生物には、酸素を必要とする好気性と、必要としない嫌気性があります。コンポスト種類の中でも密閉型は、容器を密閉して酸素を遮断することで、嫌気性の微生物を利用する方式です。
ミミズコンポストは、ミミズと微生物の働きを利用しています。ミミズが生ごみを食べて細かくすることで、微生物がそれを分解するのを早めるのが特徴です。
コンポストの種類とおすすめ7選
コンポストは、まず容器を選ぶことから始まります。種類によって大きさや機能、熟成期間、管理方法などが異なるので、それぞれの特徴をチェックして自分に合ったコンポストを見つけましょう。種類ごとにおすすめの商品も紹介します。
設置型コンポスト
設置型コンポストは、底のない容器を屋外に設置するタイプです。生ごみと共に発酵促進剤や土などを入れて使用する種類もあります。
容量が比較的大きいものが多く、堆肥をたくさん作ることができます。微生物が分解するのはおよそ3カ月、その後の熟成期間は2カ月で、かき混ぜる頻度は週1回程度が目安です。
【設置型のおすすめ】アイリスオーヤマ/エココンポスト IC-130 ブラック
引用元:アイリスオーヤマ
アイリスオーヤマのエココンポスト IC-130 ブラックは、日当たりの良い場所を選んで土を掘り、コンポスターを5~10センチ程度埋めて使用します。容器の色が黒色なので、太陽の熱を吸収して熱をためやすく、発酵するスピードが速いのが特徴です。
容器がいっぱいになったらコンポスターを引き抜き、全体が隠れるように土で覆います。そのまま1カ月程度熟成させて完成です。
防臭剤がセットされているので、「臭いが心配」という場合は安心ですね。
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回転式コンポスト
回転式コンポストは、容器を回転させて生ごみをかき混ぜるタイプです。また、生ごみと、米ぬかなどに土やもみ殻を加えて発酵させたぼかしという肥料を使うタイプもあります。
手を使わずにかき混ぜられるので、作業が楽に済むのが特徴です。堆肥ができるまでは2カ月から半年程度。2、3日に1度5~10回程度回転させる必要があります。
【回転式のおすすめ】国華園/ロータリーコンポスターダブル
引用元:国華園
国華園のロータリーコンポスターダブルは、自分で組み立てて作ります。また、開口部を下に向けて堆肥が取り出しやすいのも特徴です。
仕切りを使って容器の内部を2つに分けられるので、一つのコンポスターがいっぱいになったらそのまま熟成させ、もう一方に新しく生ごみを入れて堆肥を作ることができます。
「手を汚したくない」と思ったら、使いやすいタイプのコンポストでしょう。
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密閉型コンポスト
密閉型コンポストは、生ごみとEM生ごみ発酵促進剤を容器に入れて密閉して使います。微生物が分解する期間は2週間、その後熟成に1カ月程度かかります。
他と違う大きな特徴は、生ごみを入れると、容器の下から液体の肥料が出ること。薄めて肥料として使います。また、かき混ぜる必要もありません。ただし、臭いが気になるという人もいるようです。
【密閉型のおすすめ】アイリスオーヤマ/生ゴミ発酵器 EM-18 ベージュ
引用元:アイリスオーヤマ
アイリスオーヤマの生ゴミ発酵器 EM-18 ベージュは、生ごみとEM菌(有効微生物群)を一次発酵させて堆肥を作ります。そのため、別売りの生ごみ発酵用発酵促進剤が必要です。
容器がいっぱいになったら、10~20日間寝かせて一次発酵させます。その後、土に混ぜて2次発酵させて完成です。
密閉式のため虫が発生しにくく、「虫の発生をできるだけ抑えたい」というときの一つの選択肢になるでしょう。
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小型コンポスト
小型コンポストは、他の種類に比べて容器が小さく、都会やマンションでも使用できるタイプです。他にバッグ型などもあります。
生ごみと共に、土や基材と呼ばれる原料を入れて使用します。2~4週間程度で堆肥ができます。
【小型のおすすめ】竹ファイバー製フードコンポスター/GRAY(フィルター2個付き)
竹ファイバー製フードコンポスター/GRAY(フィルター2個付き)は、「自宅に庭がない」「忙しくて十分な時間が取れない」という場合でも無理なくできるコンポストです。
サイズが192cm ×183cm ×250cm(H)と小型なため、置く場所に困りません。「コンポストは初めて」「まずは試しに使ってみたい」という人にも、最初の1台として使いやすくおすすめです。
コンポスターがいっぱいになったら、3~4週間そのままにしておけば完成。臭気用フィルターが2枚付いているので、臭いも心配ありません。また、容器はBPAフリーで竹ファイバー50%を使用。環境に優しい素材でできています。
【小型のおすすめ】ローカルフードサイクリング/LFCコンポスト
出典:LFCコンポスト
おしゃれなバッグ型のLFCコンポストは、生ごみの分解を速め、悪臭の発生を抑える独自の配合基材(生ごみと混ぜ合わせる原料)や水や虫の侵入を防ぐ特注のファスナーなど、初めての方でも続けやすい工夫がたくさん詰まっています。
室内やベランダに置いても映えるスタイリッシュなデザインと、左右端まで大きく開くバッグ口は機能性にも優れています。
コンパクトなので、ベランダで利用するのにぴったりですよ。
電気生ゴミ処理機
電気生ごみ処理機は、原料を入れて自動で回すタイプや、温風で生ごみを乾燥させるものなどがあります。電力を使用するので手間が少ない分、電気代がかかります。
処理時間は数時間と他の種類に比べて早いのが特徴です。ただし、機種によっては運転時の音が気になる場合もあります。
【電気生ゴミ処理機】NAXLU/室内用生ゴミ処理機ナクスル
引用元:NAXLU
室内用生ゴミ処理機ナクスルは、バイオ剤と生ごみを入れて、微生物の働きで堆肥を作る全自動ごみ処理装置です。
処理後の生ごみはすぐに利用できますが、容器の限界線までためておくこともできます。取り出す頻度は3人暮らしで半年に1回程度が目安です。
初期設定以外は手間がかからないため、「生ごみを捨てるだけ」と楽に使えます。
>> NAXLU/室内用生ゴミ処理機ナクスルの詳細はこちら
ミミズコンポスト
ミミズコンポストは、容器にミミズと資材、生ごみを入れて使用します。ミミズが生ごみを細かくし、微生物がそれを分解してくれる仕組みです。
分解される期間は3~4カ月ほど。植物はミミズのふんに含まれる栄養分を吸収するため、質の高い堆肥ができます。
【ミミズコンポストのおすすめ】光和商事/金子みみずちゃんの家
金子みみずちゃんの家は、ココナッツ繊維の床土とミミズ、水で堆肥を作るコンポストです。容器がいっぱいになったら、堆肥を取り出します。
また、容器の下から液体の肥料が取れるので、10~50倍に薄めて植物に与えることができます。
ミミズに餌をあげて育てるような気持ちで、楽しみながらできるコンポストかもしれませんね。
>>光和商事/金子みみずちゃんの家の詳細はこちら
コンポストを自作!ダンボールコンポストの作り方
コンポストの種類とおすすめ6選を紹介しましたが、コンポストは自作もできます。作り方を公開している自治体もあるので、調べてみても良いでしょう。
ここでは、横浜市(神奈川県)が提供しているダンボールコンポストの作り方を見ていきます。
【ダンボールコンポストの作り方】
引用:横浜市「生ごみブレンドプロジェクト」
必要な材料はホームセンターなどで購入できます。一から手作りすれば、愛着のあるコンポストになりそうですね。
コンポストを購入すると助成金がもらえる自治体もある
自作もできるコンポストですが、購入するなら、自治体から助成金が受けられる場合があります。生ごみを減らすことは、エネルギーの有効利用につながるため、力を入れて取り組む市町村も少なくありません。
例えば、千代田区(東京都)では、次のような要件で補助を受けられます。
・電気やガスなどの動力を利用する機械式の生ごみ処理機
・手動式の生ごみ処理機
[助成を受けられる人]
・購入者が千代田区民であること
・購入日から1年を経過していないこと
・3年以内に購入助成を受けていないこと
※助成を受けられるのは、1世帯で1台に限る。
[助成金額]
生ごみ処理機購入金額(税込み、領収書で確認)に3分の2を乗じた額を補助。(限度額は3万円で、実際に負担した金額に対して助成します。
補助金制度はこの他にも、北海道から沖縄までの市町村に設けられている場合があるので、ぜひ住んでいる地域の情報をチェックして、購入の際に利用しましょう。
コンポストのトラブル対策
実際にコンポストを使ってみて、困ったと思う場面があるかもしれません。そんなときは状況に応じて対策をしましょう。3つのトラブルについて見ていきます。
コンポストのトラブル①におい
コンポストが臭ってきたら、土や枯葉、もみ殻、米ぬかなどを入れます。それでも気になるときには、市販の発酵促進剤も有効です。
密閉式の場合は、ふたを開けたときに臭いがすることがあります。早めに取り出して使用するようにしましょう。
コンポストのトラブル②虫
コンポストに虫が発生してしまったら、容器の中身を出して、1~数日間、日光に当てます。虫がいなくなったら容器に戻して再開できます。
ミミズコンポストの場合は、土をかぶせたり、生ごみを細かく切って入れたりするのが一般的な対策方法です。
コンポストのトラブル③カビ
生ごみにカビが生えて驚くことがあるかもしれません。白いカビならば、正しく発酵・分解している証拠なので、そのまま混ぜて使用します。
黒や青のカビの場合は、少量なら石灰や土などをかけてかき混ぜれば、解消できることもあります。量が多くて臭いがすれば、カビの部分を土に埋めるか、ごみとして処分します。
コンポストで処理できる食品とできない食品
コンポストには処理できる食品とできない食品があります。処理できない食品を入れると、分解されずに残ったり腐ったりしてしまうので注意が必要です。
[コンポストで処理できる食品]
[コンポストで処理できない食品]
ただし、コンポストの種類によって異なる場合があるので、購入前に必ず確認しておきましょう。
コンポストでできた堆肥の使い方
コンポストで作った堆肥を取り出した後、すぐに使えるものや、数カ月熟成させた方がより優れた効果があるものなど、容器や装置の種類によって異なります。使用するコンポストの説明を読んで確認しましょう。
堆肥はプランターや庭、家庭菜園などの畑に利用できます。ただし、堆肥だけをプランターに入れて、草花や野菜の苗を植えると、栄養過多になってしまいます。必ず土と一緒に利用するようにしましょう。
堆肥を土の上にまく、穴に埋めるなど、育てている植物や野菜に合った方法で使ってみてください。
コンポストで地球環境に優しい暮らしの第一歩を踏み出そう
コンポストは微生物やミミズの働きを利用する、自然を利用した生ごみの処理方法です。日々の暮らしの中で排出される生ごみを土に返して、地球環境に配慮したライフスタイルを始めましょう。
生ごみから堆肥ができる過程は、大人だけでなく、子どもにも良い学びになります。最初は土と生ごみで作る手軽なコンポストから始めてみませんか。