各地でイノシシと遭遇して襲われる事故が起きています。イノシシによるけが人は、2022年度に過去最多の81人を記録し、2023年度には12月末までに42人と報告されています[1] [2] [3] 。[1]この原因の1つに挙げられているのが、餌が豊富にあり人目につかない耕作放棄地です。
この記事では、耕作放棄地とは何か、日本の現状、減らない理由、問題点、活用方法、活用事例を解説します。耕作放棄地という言葉は聞きなれないかもしれませんが、実は誰もがどこかで関わっている問題です。最後には、耕作放棄地から作られた商品も紹介しています。
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耕作放棄地とは
耕作放棄地とは、以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地のことです。農林水産省が5年ごとに行う農林業の統計「農林業センサス」の用語として用いられていました。耕作の意思を農家などが判断する、「主観ベース」であることが特徴です。
農林業センサスでは、2020年より耕作放棄地を調査する項目を廃止しました。しかし現在でも、耕作放棄地の意味はそのままで一般に使用されています。
荒廃農地との違い
荒廃農地とは、荒廃農地調査で用いられる用語で、「現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地」のことです。
荒廃農地調査は、市町村と農業委員会が毎年行い、その結果を農林水産省が取りまとめて公表していました。耕作放棄地が「主観ベース」であるのに対して、荒廃農地は市町村と農業委員会が判断する「客観ベース」であることが大きな違いです。
なお、令和3年度より、荒廃農地調査は、農地法に基づいて行われる遊休農地の利用状況調査に統合されています。
遊休農地との違い
遊休農地とは、農地法において定義されている用語であり、次のいずれかに該当する農地を言います。
遊休農地を調査するのは、農業委員会です。毎年1回、区域内の農地を調査することが義務付けられています。
現在、耕作放棄地、荒廃農地、遊休農地のいずれの用語も一般的に使われています。ただし、実際に調査が行われているのは、遊休農地の利用状況調査のみです。
日本における耕作放棄地の現状
では、日本にはどのくらいの耕作放棄地があるのでしょうか。先述の通り、「耕作放棄地」という名目での調査は、2015年農林業センサスを最後に終了しています。代わりに、農林水産省が公表している荒廃農地の推移を見てみましょう。
荒廃農地は数年間で微減
2023年7月15日現在、全国の耕地面積は429.7万ヘクタールと、前年に比べて2.8万ヘクタール減少しています。さらに、昭和36年からの推移を調べてみると、減少の一途をたどっています。
(引用元:令和5年耕地面積(7月15日現在):農林水産省)
耕地面積の減少の理由は、耕地の荒廃や転用です。耕地の荒廃、つまり耕作放棄地を含んだ荒廃農地の面積を見てみると、令和4年度の面積の合計(下表右)は25.3万ヘクタールと、令和3年度の26.0万ヘクタールに比べてわずかに減少しています。
(引用元:令和4年度の荒廃農地面積(令和5年3月31日現在))
また、令和2年度の荒廃農地の面積は28.2万ヘクタール、令和元年は28.4万ヘクタールと、過去4年間では減少傾向にあることが分かります。
荒廃農地が減少すること自体は良いこととして捉えられますが、耕地面積が縮小する原因になっているため、問題であるのは確かです。
荒廃農地の再生利用はまだわずか
荒廃農地には、再生が困難なため農地としての利用が難しい場合もあります。しかし、再生利用が可能な農地もあり、再活用も進められています。まずは、2017年以降の再生利用可能な荒廃農地面積の推移を地域類型別に見てみましょう。
(引用元:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」令和6年1月)
再生利用可能な荒廃農地の面積は、平成29年の9.2万ヘクタールから、令和4年には9.0万ヘクタールと、わずかに減少しています。令和4年は、荒廃農地の3~4割が再生可能な農地であることが分かります。
しかし、実際に再生された農地は1.1万ヘクタールと、全体の1割にも満たないことに加え、新たに発生した面積に追いつかない状況です。農地を再生することがいかに難しいかが分かります。
(引用元:令和4年度の荒廃農地面積(令和5年3月31日現在))
日本は今、再生利用できる農地の活用も思うように進んでいない、厳しい状況に置かれています。こうした状況を受け、農林水産省は荒廃農地の発生を防止し、解消する対策を進めているところです。
なぜ耕作放棄地は減らないのか
耕作放棄地は過去4年でわずかに減少していますが、なぜ大きく減らすことができないのでしょうか。令和3年1月に全市町村を対象に行われた「荒廃農地対策に関する実態調査」(回収率96%、農林水産省農村振興局調べ)から分かる、主な原因を3つ取り上げます。
自然の条件が適さない
1つ目は、山あいや谷地の水田など、自然環境が耕作に適さないことです。特に山間農業地帯と中間農業地帯で、この割合が多くなっています。
(引用元:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」令和6年1月)
高齢化などに伴う労働力不足
2つ目は、農業従事者の高齢化や病気により、引退する人が増えていることが挙げられます。また、後継者などの労働力不足も深刻な問題です。
(引用元:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」令和6年1月)
鳥獣被害
3つ目は、野生のシカやイノシシ、鳥類などによる作物被害です。農林水産省の農作物被害状況によると、令和4年度の被害額は約156憶円に上り、ここ数年で高水準を維持し続けています。
(引用元:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」令和6年1月)
耕作放棄地が減らない理由は、周辺の環境や社会構造などの複合的な要因が関係しています。これらの問題を解消し、耕作放棄地を減らすこと、また新たに作らないことが求められています。
耕作放棄地が増えることによる問題点
農林水産省の「荒廃農地対策に関する実態調査」(令和3年1月)によると、荒廃農地の状況は5年後には「増加している」と答えた市町村が73%と大半を占めました。耕作放棄地の問題点は、今後増えたときにより大きくなると予想されます。大きなポイントを2つ確認していきましょう。
食料の安定供給の危機
1つ目は、農業生産に必要な農地を確保できないと、食料を安定的に供給することが難しいことです。農業を持続的に発展させていくためには、農地が欠かせません。耕作放棄地には再生利用できる農地もあるため、耕作面積が減り続ける中、これらを活用して農業生産量を増やしていくことが必要です。
農業の多面的機能の喪失
2つ目は、農業の持つ多面的な機能が失われ、さまざまな影響を受ける可能性があることです。農業は作物を作るだけではありません。畑の土壌は雨水を一時的に貯留し、斜面の田畑は土砂崩れを防ぐなど、農業は多くの機能を備えています。また、多様な生物の保全や、五穀豊穣祈願などの伝統行事をはじめとした文化も担っています。
周辺農地に及ぼす悪影響
3つ目は、周辺の農地に悪影響を及ぼす場合があることです。耕作放棄地は野生の鳥獣のすみかになることもあり、周辺の農地や人に被害をもたらす原因になります。また、手入れをしないことで雑草が生い茂り、病害虫が発生するケースがあるのも事実です。周辺の農地が害虫駆除を行っているにもかかわらず、被害に遭うことも考えられます。
耕作放棄地を放っておくだけでも、こうした問題は起きてしまいます。耕作放棄地を作らない、減らしていくためには、どのような対策が必要なのでしょうか。次の章で見ていきましょう。
耕作放棄地を活用するためには
農地バンクを利用し耕作を開始(栃木県足利市川崎町地区)
(引用元:「令和4年度版 農地中間管理事業の優良事例集」令和5年9月農林水産省)
耕作放棄地を活用するためには、さまざまな視点からの取り組みが必要です。国や市町村などが設けている制度や交付金などを利用しながら、地域や組織で行う取り組みを紹介します。
地域・集落の共同活動を行う
環境整備やまちおこしなどにより、地域や集落が共同で地域の活性化を図ることが有効です。例えば、農地法面の草刈りや水路のひび割れ補修、農業の生産条件が不利な地域での体験農園などを行うなどがあります。
農業の多面的機能の向上や農地・水路などの整備に貢献するこうした活動には、「多面的機能支払交付金」「中山間地域等直接支払交付金」など、国や都道府県の交付金が設けられています。これらを利用して、活動を進めていくことも可能です。
農地中間管理機構を利用する
農地中間管理機構とは、都道府県、市町村、農業団体などの出資により組織された法人です。「農地バンク」「機構」「公社」と呼ばれることもあります。農地中間管理機構は、荒廃農地を借り入れて耕作農地に再生し、借り受けたい人にまとまった農地を長期間にわたり貸し付けます。
また、農地中間管理機構と連携して農地集積(拡大)する、または高収益作物を導入する地区に、費用の一部を負担する制度もあります。都道府県、市町村、土地改良区、農業協同組合、農業法人などが交付の対象です。
農福連携を行う
福祉施設と連携し、荒廃農地を活用して作物を育てることも1つの手段です。農業を雇用創出の場にするほか、学習活動として利用するなど、福祉を通じて荒廃農地を減らすことができます。これに加えて、地域の活性化にもつながります。
利用できる交付金は、福祉と連携した農林水産業に関わる取り組みを支援する「農山漁村振興交付金」、都道府県が単独で交付する補助金などです。
耕作放棄地の活用事例
耕作放棄地は、実際にどのように活用されているのでしょうか。2つの事例を見ていきましょう。
茨城県・JA常陸奥久慈枝物部会
JA常陸奥久慈枝物部会は、枝物産地である常陸大宮市、常陸太田市、大子町の中山間地を管轄としています。この地域では、農業担い手の高齢化と耕作放棄地が増えていることが課題でした。
そこで「荒れた農地を何とかしたい」という思いから、平成10年にハナモモを定植。平成17年には市場出荷の体制を整え、令和元年に茨城県花き銘柄産地に指定されました。令和3年時点で、部会員130名、68.2ヘクタール、1.74億円を販売するまでに成長しています。
(引用元:荒廃農地解消の優良事例集~荒廃農地再生の取組~(令和5年3月):農林水産省)
耕作放棄地を利用するにあたり、国の耕作放棄地再生利用緊急対策交付金や、強い農業づくり交付金などを活用して、ほ場整備(雑草・雑木の除去)、土壌改良を実施しました。また、乗用草刈り機や貯蔵施設などの整備も行っています。
静岡県・老舗茶問屋
静岡県は、茶園面積・荒茶生産量・荒茶産出額ともに日本一を誇る県です。しかし、消費者のお茶ばなれや茶の価格低迷、高齢化や後継者不足などにより耕作放棄地が増加していることが問題でした。
この状況に原料メーカーである老舗茶問屋は「茶畑の景観を守りたい」という強い思いがあったと言います。そこで、手入れをされていない畑から採れる茶の実を使った美容オイル、茶の実の「采茶〜SAICHA」(さいちゃ)を開発しました。耕作放棄地から茶の実を収穫することで農家に収入をもたらしています。
(引用元:backbone | 采茶 SAICHA)
さらに、茶の実の選別を福祉施設に依頼することで、就労の機会を創出しています。またコスメの開発により、日本茶産業にも貢献する好循環が生まれています。もう一つ、注目すべきは耕作放棄地なので、農薬は使用されていないということです。そのため、茶の実オイルを使う人にもやさしい美容オイルを提供しています。
采茶について
「采茶〜SAICHA」は、耕作放棄地の活用事例の老舗茶問屋が作った、無農薬・無添加、茶の実の美容オイルです。興味を持った人のために、ここで簡単に紹介します。
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「采茶〜SAICHA」は、性別や年齢、肌質に関係なく使用できます。朝晩の洗顔後、もしくはスキンケアで肌を保湿した後、2〜3滴を手に取り、顔全体にやさしく塗布して使用します。
コエンザイムQ10*1や豊富な美容成分が*2、潤いやハリ、ツヤ、肌荒れ防止、肌の引き締め、やわらか肌、キメの整ったなめらか肌に導き、乾燥による小じわを目立ちにくくします*3[4] [5] [6] [7] 。肌を整えたいすべての人におすすめです。
*1ユビキノン(整肌成分)*2β-カロテン、オレイン酸、リノレン酸(すべて整肌成分)*3効能評価試験済み
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「耕作放棄地は自分には遠い存在だ」「あまりなじみがない」という人も多いでしょう。それでも、食料や環境の問題は、私たちの生活につながっています。
「采茶〜SAICHA」には、地球と共存していく未来を一緒に目指していきたいという思いも込められています。実際に手に取って耕作放棄地の問題を考えることは、豊かな未来への一歩になるでしょう。
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まとめ
耕作放棄地とは、以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地のことです。令和4年度の耕作放棄地の面積は、25.3万ヘクタールと、過去4年間でわずかに減っています。しかし大きく減少していない理由には、山間などの自然の条件が適さない農地であることや、農業を担う人の高齢化や労働力不足、鳥獣被害が挙げられます。
耕作放棄地が増えると、食料の安定供給ができない、環境維持が難しくなる、周辺農地に悪影響を及ぼすなどの問題点があります。これを解消するためには、地域・集落の共同活動を行う、農地中間管理機構を利用する、農福連携を行うなどの取り組みが必要です。
例えば、耕作放棄地にもともとあるチャノキから茶の実を収穫し、美容オイルを製造・販売するといった事例があります。耕作放棄地の問題は、食料や環境といった私たちの生活にも直結しています。そのため、一人一人がその取り組みを応援することも大切です。