SDGs15「陸の豊かさも守ろう」とは?現状や取り組み事例・私たちにできること

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SDGs15の「陸の豊かさも守ろう」はキャッチコピーで、正式目標は「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」です。

とても長い文章ですが、一言で言うと「森林や動物を含めた陸上生物すべての生態系を守ろう」という内容です。

早速SDGs15「陸の豊かさも守ろう」を詳しく見ていきましょう。

>>SDGsについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください

SDGsとは|概要や背景・日本や世界の取り組みまで

 
目次
1.SDGs15「陸の豊かさも守ろう」を考える
2.なぜSDGs15が必要なのか?2つのポイント
3.SDGs15のポイント①減少する森林・砂漠化による土地の劣化への対応
4.土地の劣化による弊害
5.SDGs15のポイント②生物多様性の損失を阻止
6.絶滅危惧種は約3万8,500種。世界的な生物多様性の危機
7.日本の生物多様性の状況
8.すべての課題と関連し合うSDGs15への世界的な取り組み
9.SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の達成に向けた世界の取り組み
10.SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の達成に向けた日本の企業の取り組み
11.SDGs15を達成するために私たちにできること
12.すべての生物に配慮しよう

 

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」を考える



まずは設定されたターゲットから確認していきましょう。
 

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」のターゲット


ターゲットとは具体的な行動指針のようなもので、「目標番号.●」の●に数字が入る場合(例:15.1など)は目標に対する具体的な課題を挙げて、これを達成させましょう、という意味で、●にアルファベットが入る場合(例:15.b)は課題を達成させるための手段や策を指します。

SDGs目標15のターゲットは、①森林・砂漠化・土地の劣化への対応②生物多様性の損失を阻止の2つのポイントから成り立っています。

これをターゲットにあてはめると、①減少する森林・砂漠化による土地の劣化への対応(15.2・15.3・5.6)②生物多様性の損失を阻止(15.1・15.4・15.5・15.7・15.8・15.9)に分けられます。

※厳密にはそれぞれのターゲットに相互関係があるので、このほかの分け方もあります。

詳しい説明は後述するので、まずは一通り目を通してみましょう。

<まずは実際のターゲットを確認!>

 15.1 

 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。

15.2

 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。

15.3

 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。

15.4

 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。

15.5

 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。

15.6

 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。

15.7

 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。

15.8

 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。

15.9

 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。

15.a

 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。

15.b

 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。

15.c

 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。

出典:外務省「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット(外務省仮訳)」

難しい単語が複数並んでいるので理解へのハードルが上がってしまいそうですよね。

ここからはポイントをわかりやすく説明していきます。

なぜSDGs15が必要なのか?2つのポイント

なぜSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」が必要なのでしょうか。
そもそも、森林から得られる木材や食料は、人々が使う燃料や飼料になり、直接利用するだけでなくそれらを元に生計を立てている人も多くいます。
森林は世界中の人々の暮らしを支えるものなのです。
しかし、過剰な森林伐採により毎年約1300万ヘクタールもの森林が失われているという現状があります。
これは健全な森を破壊し、生物多様性のバランスにも影響を及ぼす危機的状況で、私たちは森林を含む陸地の健全な維持について早急に考えていく必要があります。

また、自然環境に関わるSDGsの目標は、その他の経済や社会に関する目標を支える土台になっています。
陸上の生態系や海洋資源を守り、生かし続けることで初めて、持続可能な経済や社会システムを作ることができるのです。

持続可能な世界にしていくうえで、SDGs目標15は不可欠なものと言えます。

ここからは、①森林・砂漠化・土地の劣化への対応②生物多様性の損失を阻止の2つのポイントに沿って、現状やなぜそれが問題になっているのかを見ていきましょう。

SDGs15のポイント①森林減少・砂漠化による土地の劣化への対応



1つめのポイントは、森林の減少や砂漠化による土地の劣化への対応や、そもそもの森林の減少・砂漠化を食い止める必要性についてです。

森林の減少・砂漠化と聞くと、なんとなく環境に悪そうなイメージがあります。しかし、それがなぜ問題なのか、どうして起きてしまうのかはよくわかりませんよね。

これらの問題の本質をつかむと、貧困や災害などの関連性も見えてくるので、順を追って見ていきましょう。
 

土地の劣化につながる課題①森林の減少


森林は、地球の陸地面積の約30%(約39.9億ヘクター ル)を占めており、陸域の生物種が80%生息しています。(参考:Forest Partnership Platform)

そんな中、世界の森林は減少を続けており、環境省が発刊している「森林と生きる-世界の森林を守るため、いま、私たちにできること-」によると、2010年から2015年で平均330万ヘクタールの森林が毎年失われています。

森林減少の原因はいくつか考えられますが、その中でも深刻なのが「貧困」との関わりと「違法伐採」です。

まずは貧困との関わりを説明します。

森林減少の原因①貧困 ―タイの事例―

一見すると、森林減少と貧困の間に相関関係があるとは思えませんが、その具体的な例として、環境省が出す「環境白書」にタイの現状が載せられていました。

【タイの現状】
タイも世界の国々と同様に、年々森林の減少が課題になっている国の1つです。

要因として、不法な商業伐採もありますが、もう一つ大きな理由が貧困です。

貧困地域の多くは土地を持てない貧しい農民です。

そのため生活が困窮し、生きるため許可なく森林を伐採し農地にしました。



ところが農業の技術を持っておらず、森林によって貯えられていた地力のみに依存して栽培を進めていったのです。

伐採→耕作→放棄→樹木回復のサイクルを長期間かけて行う伝統的な焼畑耕作とは異なり、このようなその場しのぎの農作では焼畑のサイクルが短く、地力を回復させることができないため土地は次第に荒れてしまいます。

その結果、地力がなくなり作物が育たなくなると、貧農たちはその土地を放棄して、また次の森林の伐採に向かうのです。

こうして森林が減少していってしまいました。
 
【本来の森林サイクル】


引用元:東北森林管理局「森を育てる」

また、農地転用の他にも、料理や暖をとるための燃料剤として木々を利用するのに森林伐採を行うケースがあります。この場合のほとんどが、森林の再生を待たずしてどんどん伐採するため、森林が枯渇してしまいます。

森林が減少し、燃料源がなくなると、今度は火を確保するのに家畜の糞を用いるのです。

本来であれば糞は農地に返し、肥料として使うことで土壌を豊かにしますが、燃料として用いるため、農地に栄養が行き渡らなくなり、土地が疲弊してしまうのです。

そうなると作物が育たなくなり、また別の土地に移って同じことを繰り返す負のスパイラルに陥ります。
 

森林減少の原因②違法伐採

森林減少の原因として、違法伐採も挙げられます。

違法伐採とはその名の通り、それぞれの国の法律に反して木を切ることです。

切られた木のほとんどは商業用の丸太や木材製品となって外国に輸出されています。2015年6月に開催されたエルマウ・サミットでの報告によると、世界で生産される木材の15〜30%が違法伐採によるものです。

本来、木材には伐採した後の植林や森林区域の管理費用が含まれた価格で販売されます。



しかし違法伐採された木材にはこれらの費用が含まれないため、安価で流通してしまうのです。違法伐採の木材を輸入した国では、国内で生産された正規の木材が価格競争に負けて売れなくなってしまい、林業の雇用の減少や適切な森林管理が不可能になってしまいます。

このように違法伐採は、違法伐採が行われている国の森林減少だけでなく、他国の森林への影響も引き起こすなど、多くの問題を抱えているのです。(参考:環境省「世界の森林の現状」)
 

土地の劣化につながる課題②砂漠化




続いて砂漠化についても見てみましょう。

砂漠化とは、乾燥地域・半乾燥地域・乾燥半湿潤地域において、気候変動や人間活動などによって土地が劣化し、作物などが育たなくなってしまうことを指します。

より簡単に言うと、もともと人が住めない・植物も育たない地域の「砂漠」と違い、人々が生活し、植物も生えていた乾燥地域が異常気象や人間活動によって不毛の地になってしまうことを意味します。

この砂漠化に陥りやすい乾燥地域は、地球の陸地の約40%を占めています。そのうちの10〜20%が既に砂漠化によって土地が劣化し、生産性を失っていると言われているようです。

◆砂漠化の原因

ではなぜ砂漠化が進むのでしょうか。

砂漠化の原因は、「気候的要因」と「人為的要因」の2種類が挙げられます。
 
1.気候的要因 地球規模での気候変動・干ばつ・乾燥化によるもの
2.人為的要因 自然の許容範囲を超える過放牧・森林減少・過耕作などの活動によるもの

国連環境計画(UNEP)によると、砂漠化の原因の9割がこの2.人為的要因によるものです。

砂漠化は世界中で起きていますが、とりわけアフリカとアジアが深刻な状態です。

アフリカの場合は人口の増加に伴う過放牧、アジアは森林減少が砂漠化の主な原因です。



森林減少は先ほど説明した通りですが、過放牧は、牛や馬・羊などをその自然が持つ許容量以上を放牧してしまい、草木の成長スピードを超えた量を家畜が食べてしまうことで資源が減少してしまうことを指します。

これらが原因で砂漠化は今もなお進行しており、UNCCD(国連砂漠化対処条約事務局)によると2015年には毎年264万ヘクタールが砂漠化していると発表ています。(参考:鳥取大学乾燥地研究センター「きみもなろう砂漠博士」,JICA「データファイル」,山形大学環境保全センター「砂漠化」)

ここまで、森林減少と砂漠化が進む背景を説明してきましたが、このような土地劣化が起こるとどのような弊害があるのでしょうか。

土地の劣化による弊害

森林の減少や砂漠化による5つの弊害について順を追って説明します。
 

弊害①森林減少による貧困の加速


世界には、森林に依存をして生計を立てている人が16億人います。

このまま森林減少が進めば、食料を得られなくなったり、職業を失ってしまったりと、貧困を加速させてしまう可能性があります。

>>貧困の課題とSDGsの目標についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください

SDGs1「貧困をなくそう」とは|現状や取り組み事例・私たちにできること

 

弊害②森林減少による温暖化の加速




木々は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を樹木内に取り込みます。

さらに落ち葉も土壌の炭素を吸収する役割を担っており、温暖化の抑止に欠かせない存在です。

森林を必要以上に伐採することで、二酸化炭素の吸収源を失うと同時に、吸収していた炭素も排出してしまうのです。

このまま森林の減少が続き、温暖化が進行すると、2100年には2000年と比べて平均4.8度も上昇することが予想されています。(参考:環境省「森林の減少と温暖化」)
 

弊害③森林減少による災害抑止力の低下




木々が根を生やす土壌には多数の隙間があり、雨が降ると一旦そこに水が蓄えられます。

そして時間をかけてゆっくりと川へ送り出されることで、氾濫が起きるのを防いでいます。

また、この貯水機能はダムのような役割も担っており、しばらく晴天が続いても川が枯れ果てることはありません。

さらに、木々が多方面に根を生やすことは、土壌をつなぐ役割も担っており、土砂災害までも抑制しているのです。

森林が減少することで、土壌はこれらの機能を失い、災害が起こりやすい土地になってしまうのです。(参考:林野庁「水を育む森林のはなし」)
 

弊害④砂漠化による食料難、難民の発生




砂漠化が進むと、食料を生産することが難しくなり、生活が困難になってしまいます。

生活が難しくなると、その土地に住めなくなり、別の土地へ移動しなければなりません。

これを環境難民と呼びます。

環境難民の主な移動先は職や食が豊富にある「都市」です。

もちろん都市にも貧富の差はありますが、もともと住んでいた土地とは比べ物にならないほど日銭を稼ぎやすく、食べ物にも困りません。

これだけを読むと、「都市に移動することはメリットが多い」と思うのではないでしょうか。

しかし、このような環境難民の都市部への移動により、都市が膨張し、それにより世界各国で様々な問題が発生しています。(参考:環境省「環境白書」)
 

◆環境難民は都市へ―都市膨張がさらなる環境汚染を引き起こす―




都市膨張が引き起こす問題の1つに、自動車の増加が挙げられます。

Dargay,etal,2007の発表によると、自動車の販売数は年々増加傾向にあり、その半数が都市部によるものです。

このままだと現在世界全体で12億台保有されている自動車が倍増すると見られており、これにより新たな課題が発生します。

例えば2050年までに、都市に住む人たちは年間で100時間以上渋滞に巻き込まれることが予想されます。(現在の約3倍)

また、自動車が増加することで排出ガスも増え、温暖化の原因にもつながってしまうことでしょう。
 

弊害⑤森林減少・砂漠化による生物多様性の減少


森林減少・砂漠化の共通の弊害として、生物多様性の減少があります。

この森林減少・砂漠化は、SDGs目標15の2つ目のポイント②生物多様性の損失を阻止にも大きく関わってきます。

早速、生物多様性の定義や現状などについて見ていきます。

SDGs15のポイント②生物多様性の損失を阻止



まずは生物多様性の説明です。

地球に生命が誕生して約40億年が経ち、その間、陸・川・海のあらゆる場所で多種多様な生命の営みが生まれました。

2020年現在、科学的に明らかにされている生物種は約175万種に上り、未だ発見されていない生物を含めると3,000万種が地球上で生活していると考えられています。

このような「多種多様な生物」「多種多様な生物が互いにつながりバランスを保っている生態系」「遺伝子の個性(例えば同じカニでも海で生きていくことに特化したカニ、川で生活することに特化したカニがいるように、同じ種類の生物でもそれぞれ個性が違うこと)」の3つを含めたものが生物多様性です。
 

生物多様性の恵み


私たち人間の生活は、この生物多様性の恵みの上に成り立っています。

これは、自然が人間にもたらすサービスであることから、「生態系サービス」とも呼ばれています。

この生態系サービスを例に、私たちの生活がどのような影響を受けているのか見てみましょう。

人間は、野菜や肉、魚介類などに食生活を支えてもらっています。

国連広報センターの「事実と数字」によれば、人間が摂取する食料の80%以上は植物に由来しており、魚は約30億人に、摂取する動物性タンパク質の20%を提供しています。

また、動植物の成分を使って医薬品が作られたり、開発途上国の農村部の住民の80%が伝統的な植物ベースの薬を調合しているなど、医療もまた生態系サービスの恩恵を受けています。

他にも衣料・住居・文化・防災・産業など、あらゆる分野に影響しており、生態系サービスなしには生きていけません。(参考:環境省「ipbes 生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」)
 

絶滅危惧種は3万8,500種以上。世界的な生物多様性の危機




しかし近年、この生物多様性のバランスが崩れる危機に陥っています。

レッドリストと呼ばれる絶滅の恐れがある野生生物の種のリストに掲載される生物は年々増加しているのです。

これは世界共通の課題で、2019年IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)によって発刊された「地球規模評価報告書」によると、過去50年の間に、人類史上かつてない速度で地球全体の自然が変化し、それを受けて生物多様性が悪化しているというのです。
2021年10月の時点でIUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」には、最も絶滅の恐れが高いとされる3つのカテゴリーに、3万8,543種以上の野生生物が記載されました。
(参考:WWF「絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリスト「レッドリスト」について」

この自然の変化の要因としては、
 
ⅰ土地と海の利用の変化
ⅱ生物の直接採取(漁獲、狩猟含む)
ⅲ気候変動
ⅳ汚染
ⅴ外来種の侵入
※ⅰからⅴで影響の大きい順

が挙げられています。

この5つの要因について、1つずつ見ていきましょう。

要因①土地と海の利用の変化

土地と海の利用の変化では、特に農地拡大が顕著です。


陸地の1/3以上が作物栽培や畜産に利用されており、これらのほとんどを森林や草地から転用しています。
 

要因②生物の直接採取(漁獲、狩猟含む)

森林伐採や漁業の乱獲などが影響を及ぼしています。
 

要因③気候変動

温室効果ガスの増加による温暖化による異常気象、洪水、干ばつなどが増加傾向です。

この気候変動により、生物の分布や生態系の機能に多大な影響を与えています。
 

要因④汚染

大気・水・土壌の汚染が悪化しています。

特に海洋プラスチックによる海の汚染が深刻で、海洋生物に影響を及ぼしています。

>>海洋プラスチックごみ問題や関連するSDGsの目標についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください

SDGs14「海の豊かさを守ろう」とは|現状や取り組み事例・私たちにできること

 

要因⑤外来種の侵入

貿易量の増加や、人口の移動に伴い、外来種の累計は1980年以降40%増加しました。

外来種が在来種を食べることでその数が減少することや、在来種と交配してしまい、在来生物の遺伝的な独自性が失われてしまうといった影響があります。

また、産業の対象となる生物を捕食するなどの被害が発生します。

この5つの変化で、動植物全体の約25%が脆弱な状態に陥っており、今後数十年以内に約100万種が絶滅しかねません。

この状況は、日本も同様です。
 

日本の生物多様性の状況




日本での生物多様性は4つの危機にさらされています。
 
ⅰ開発や乱獲による種の減少
ⅱ里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下
ⅲ外来種の侵入
ⅳ地球温暖化の影響

ⅰ、ⅲ、ⅳは世界的な課題と共通するので、ここではⅱについて説明します。
 

里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下

里地や里山を放置することは、自然の質の低下につながります。

以前は里地や里山では、落ち葉を集めて肥料にしたり、田んぼに水を張るなど、自然を有効利用した生産活動が行われており、それに伴った生物が生息していました。

しかし、その土地が放置されてしまうと、生物の住処が失われてしまうのです。

また、山の放置は災害にもつながります。



日本はスギやヒノキの人工林と呼ばれる木々が40%を占めています。

この人工林は、定期的な間伐や枝打ちの管理が必要で、それをしないと枝や葉が生い茂り、日光が地表に届かずに土がやせ細り、大雨による土砂災害が発生しやすくなるのです。

今後、里地里山の定期的な管理が求められるでしょう。(参考:環境省「みんなで学ぶ、みんなで守る 生物多様性」)

ここまでSDGs目標15のポイントとなる課題内容を見てきました。

これらの課題を受けて、世界ではどのような対策を行なっているのでしょうか。

すべての課題と関連し合うSDGs15への世界的な取り組み



SDGs目標15のポイントとして、貧困・違法伐採による森林減少や砂漠化、生物多様性の保全が挙げられました。

これらは、それぞれの課題を単独で解決していくものではなく、相互に関わりを持たせながら達成を目指すものです。

例えば貧困による森林減少の解決を目指そうとしたとき、生物多様性の保全に取り組むことで、適切な生物のつながりが回復し、食料の確保が見込めます。

また、砂漠化の改善で生産活動の地盤が安定すれば、過剰な伐採を食い止めることもできるはずです。

さらに踏み込んでしまえば、SDGs目標1「貧困をなくそう」と関連させ、教育の普及やインフラ整備などの支援を通して貧困を解決することで、森林減少の解決にも成果が見込めるでしょう。

世界各国では、これらの課題を総合的に解決するために、世界共通の条約などが締結されており、国際的な取り組みが進められています。

例えば砂漠化であれば、先進国が砂漠化に直面する途上国に支援を行う「砂漠化対処条約」、生物多様性の保全であれば、先進国が途上国に対して資金面や技術面の両面から支援を行う「生物多様性条約」などがあります。

このような中、企業や個人でも取り組めることにも注目が集まっています。具体的に考えていきましょう。
 

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の達成に向けた世界の取り組み

まずは、世界の取り組みを確認していきましょう。
 

WWF(World Wide Fund for Nature)

1961年にスイスで設立された国際NGO団体のWWFは、世界100カ国以上で環境保護活動に取り組み、人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。

急激に失われつつある生物多様性の豊かさの回復と、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けて、希少な野生生物の保全や、持続可能な生産と消費を促進しています。

設立当初は、絶滅危機のある野生動物を救うことを活動の目的としてましたが、「野生動物を守るためには自然環境全体の保護が重要」という考えに基づき、現在では寄付金の60%以上を自然保護活動に使っています

詳しく知りたい方はこちらからどうぞ(WWFのサイトに飛びます)

 

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の達成に向けた日本の企業の取り組み




株式会社ピー・エス・インターナショナルは、化粧品の輸入やエステサロンの経営などを通して美を提供している企業です。

取り扱っている商品の一つに「エティーク」という固形シャンプーバーがあります。

「エティーク」は市場で販売されているビューティープロダクツが環境に与える問題に着目し、設立されました。

1番の特徴としては、容器のない固形バー(髪や頭皮に必要な美容液成分と、必要最小限の洗浄成分を凝縮したシャンプー・コンディショナー)を作り、2019年までの7年間で600万本のプラスティックボトルの削減を実現したことです。

加えて、すべてのパッケージは生分解性(微生物によって分解される物質のこと)によるもので作っていること、動物実験を行っていないこと、すべての材料がフェアトレード(公正取引)であることが前提です。

商品すべてにおいて環境・動物・人体に影響を及ぼさないことで、生態系の回復を目指しています。

 

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の達成に向けて私たちができること

今日からでもすぐに始められる取り組みの一つ。

それは「問題に関心を持つ」ことです。

私はこれまでSDGs関連の本を何冊も読んできましたが、そのなかで共通して語られていたことは、関心を持てば意識も変わり、それが日々の生活に活かせるということでした。

SDGs目標15であれば、世界や日本の森林減少の状況や、どのような生物が絶滅危惧種に指定されているのかさらに深く調べることから始めるといいでしょう。

その一歩を踏み出す方が増えれば増えるほど、目標の達成は加速します。

SDGs関連でおすすめの本をまとめた記事もあるので、そちらをチェックしていただくのもいいかもしれません。

>>SDGsに関する本をまとめた記事は以下のリンクをご参照ください。


また、世界中で広がりを見せているのが「違法伐採された木材や木材製品を購入しない」ことです。
 

違法伐採された木材や木材製品の購入をやめる




違法伐採された木材や木材製品を購入しなければ、違法伐採者に対価が払われることがないため、この違法伐採から始まる負の連鎖を根絶することができます。

ではどのようにして違法伐採された木材や木材製品を見分ければいいのでしょうか。
 

違法伐採かどうかを見極める「FSC認証」

違法伐採されたものかどうかを見分けるための代表的なものとして、「森林認証」があります。

森林認証とは、第三者機関が、一定の基準をもとに環境・経済・社会の3つの側面から適切な森林経営がされているかを判断。

認証された森林から生産・調達された木材に認証ラベルが貼られて流通します。

1993年にドイツで創設された「FSC」や1999年に欧州で開始された「PEFC」が国際的に普及している認証です。

引用元:FSC  JAPAN

その後、インドネシアの「LEI(インドネシア・エコラベル協会)」や「マレーシアのMTCC(マレーシア木材認証協議会)」など、各国で制定された認証も普及してきました。

日本でも2003年に「SGEC(一般社団法人緑の循環認証会議)」がスタートしています。

これらのラベルが貼られた商品を消費者が選択することで、課題の解決に貢献できます。
 

ペーパーレス化を目指す

紙は、日本での生活の中にあふれている素材と言えるでしょう。日本製紙連合会によると、2019年時点で日本の紙の消費量は世界3位となっています。
紙の原料は木材です。現代は紙の種類も多様化し、「再生紙」など、森林の再生力をふまえた紙の生産を行う企業も多くありますが、やはり紙の消費には森林伐採やそれに伴う二酸化炭素の発生が避けられません。
私たち個人にもできることは、代用できる時には紙を使わず、デジタル化するなど地道に取り組んでいくことです。
例えば、
・メモを紙ではなくスマホやパソコンのソフトに入力する
・請求書や明細書をWeb明細書に切り替える
など、身近なものをデジタル化できないか、考えてみましょう。

学校でできること・子どもにもできること

お子さんの場合は、デジタル機器を持っていない場合もあるかと思います。
他にも、SDGs目標15に貢献できる方法はあります。

例えば、図書館で生き物や絶滅危惧種に関する本を借りて読んでみましょう。

(出典:絵本ナビ「日本の絶滅危惧種を考える」

自分の身近にいる意外な生き物が、絶滅の危機に瀕していることが分かるかもしれません。

また、「5R」を実践するのも良いでしょう。
5Rとは、「リユース(Reuse:再利用)」「リデュース(Reduce:減らす)」「リサイクル(Recycle:資源として再利用)」の3Rに、「リフューズ(Refuse:断る)」「リペア(Repair:修理する)」を加えた資源の有効活用のキーワードです。
限りある資源を有効に使うために、ごみを減らしたり、まだ使えるものを再利用したり、いらないものは初めから断ったりすることから始めてみましょう。
 

すべての生物に配慮しよう


SDGs15「陸の豊かさを守ろう」のポイントを見てきました。

SDGs15は、人間がどれだけ地球上の自然に支えられて生きているのかがわかる目標内容です。
我々の生活を支えてくれている自然に、今度は何か返さなくてはなりません。

そのためにも今日からできることをみつけて関心を持ち、行動に移していきたいですね。

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