SDGs目標1「貧困をなくそう」を考える|現状や原因、個人でできることも

SDGs目標1「貧困をなくそう」を考える|現状や原因、個人でできることも

テレビや新聞・電車などで目にする機会が増えてきたSDGs。

自分たちも取り組みを始めなければ…と考えている企業も多いのではないでしょうか?

しかし、とっつきやすいアイコンのキャッチコピーとは裏腹に、ターゲットを見てみるとちょっとよくわからない…と頭を抱える方も多いはず。

そこでこの記事では、企業がSDGs目標1に取り組むうえで、目標が設定された背景や現状、実際に企業が行なっている取り組みなどの大事なポイントを見ていきたいと思います。

これを読めば重要キーワードもわかり、今後の取り組み内容を考える土台になるかもしれません。

ではまずはSDGsのおさらいから始めましょう。
 

目次
1.SDGsとは
2.SDGs目標1「貧困をなくそう」とは
3.貧困の線引きについて(1.25ドル?1.90ドル?)
4.世界の貧困状況
5.貧困状態にいる人々はどのような生活をしているのか
6.日本の貧困の現状
7.気候変動と貧困の関係
8.SDGs目標1「貧困をなくそう」達成に向けた企業の取り組み
9.SDGs目標1「貧困をなくそう」達成のためにわたしたちにできること
10.貧困をなくすためにできることから始めよう

SDGsとは


まずは、SDGsの基本的な概要のおさらいです。

SDGsとは、SustainableDevelopmentGoalsの頭の文字を合わせた言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。

読み方は、SDGs(エスディジーズ)です。

2015年9月、ニューヨーク国際本部にて開かれた国際サミットで、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。

これは、2016年から2030年の15年間で達成する目標を記したもので、17の目標と169のターゲットから構成されています。

「地球上の誰一人取り残さない」という強い意志のもと、地球を保護しながら、あらゆる貧困を解消し、すべての人が平和と豊かさを得ることのできる社会を目指し設定されました。

SDGs目標1「貧困をなくそう」とは



SDGs目標1の「貧困をなくそう」はキャッチコピーで、正式な和訳は「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」です。

貧困の解決というと、経済的な貧しさの改善を真っ先に思い浮かべますが、教育を受ける・医療を受けるといった人間らしい生活を送れるようにすることも含まれます。

では世界にはどの地域が貧困で苦しんでいるのか、日本でも貧困はあるのか。

具体例やデータを交えながらできるだけイメージしやすいように書き進めていますので、気負わずに読み進めてくださいね。

次ではSDGs目標1に設定されたターゲットを見ていきましょう。
 

ターゲット


ターゲットとは具体的な行動指針のようなもので、「目標番号.●」の●に数字が入る場合(例:1.1など)は目標に対する具体的な課題を挙げて、これを達成させましょう、という意味で、●にアルファベットが入る場合(例:1.b)は課題を達成させるための手段や策を指します。

詳しい説明は後述するので、まずは一通り目を通してみましょう。
 

1.1

2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。

1.2

2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。

1.3

各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。

1.4

2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。

1.5

2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。

1.a

あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。

1.b

貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

出典:外務省「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット(外務省仮訳)」

ポップなアイコンと馴染みやすいキャッチフレーズとは一変してターゲットは複雑で難解な内容です。

次ではSDGs目標1の重要なポイントをピックアップしたのでまずは概要をつかみましょう。

SDGs目標1「貧困をなくそう」のポイントをわかりやすくまずはSDGs目標1「貧困をなくそう」の概要を把握するために、大事なポイントを3つピックアップしました。

取り急ぎSDGs目標1「貧困をなくそう」が何を目指しているのかを知りたい方はこちらを読むことで全体像がわかります。

その後に目標が設定された背景や貧困の現状、行われている取り組みなどを詳しく記載しているので、より理解を深化させたい場合は目を通してみてください。
 

①貧困を知る




1つ目のポイントは貧困の定義です。

貧困の定義は国や機関によって異なり、SDGs目標1「貧困をなくそう」では、最も一般的な「1日1.25ドル未満で生活する人々」が用いられています。

また、貧困には必要最低限の生活水準が満たされていない「絶対的貧困」と特定の地域社会の大多数の標準と比べて貧しい状態の「相対的貧困」があります。

SDGs目標1は、「絶対的貧困」と「相対的貧困」のどちらの貧困もなくすことが掲げられているのです。
 

◆絶対的貧困について

2021年1月現在で、1.25ドルは日本円にして約129円です。

国によって物価の違いはあるものの、1日129円・1ヶ月で4,000円弱で暮らさなければならないのは人間らしい生活とは言えません。

世界銀行によれば、2015年の時点で貧困の状況にある人々は世界に7億3,600万人おり、そのうち4億1,300万人がサブサハラ(サハラ以南のアフリカ)に集中していると報告しています。

また、多くの貧困層は農民です。
 

◆相対的貧困について

相対的貧困については、ターゲット1.2に書かれている各国定義による貧困層を減少させることが関わりを持ちます。

日本においては相対的貧困に陥る年代は特に子どもと高齢者に見られ、対策が必要です。
 

②貧困が招く問題を知る




貧困は様々な問題を引き起こします。

1.25ドル未満で生活する貧困地域では、
・満足な食事ができない
・きれいな水が飲めない
・トイレがなく、不衛生な環境にさらされる
・子どもは仕事を優先されて教育を受けられない
・医療を受けられない
・紛争が起きる
などが挙げられ、これらはSDGsのその他の目標とも関わりを持つ内容です。

日本でも相対的貧困家庭では、
・満足な食事ができない
・子供は習い事ができず、本も買ってもらえない
など、格差を生み出す原因となっています。

SDGs目標1「貧困をなくそう」では、ここまでに挙げた世界中の貧困を2030年までに半減させることが求められているのです。
 

③気候変動などによる災害時の保護を考える


貧困に陥っている人々は、気候変動による大雨や干ばつなどの災害の被害に合うと、貧困以外の人々に比べてより大きなダメージを負ってしまいます。

収入源である農作物が自然災害により全滅してしまう、家が流されても避難する場所がないなど、より貧困が加速する可能性が高いのです。

日本でも相対的貧困家庭はもちろんのこと、貧困ラインの瀬戸際にいる家庭も災害で働けなくなることで、貧困に陥るなどが考えられます。

このような事態に備えて、気候変動の原因と言われている温暖化を防ぐことやインフラ整備、保証制度といった保護体制を整えていかなければなりません。
 

ここまでがSDGs目標1「貧困をなくそう」の簡単な概要です。

この記事を読んでいる方は、SDGs全体の目標の中で手始めにSDGs目標1「貧困をなくそう」の内容を調べている場合が多いと思います。

今後、SDGs目標1「貧困をなくそう」以外の目標を見ていただくとわかりますが、大半が貧困と関わりを持つ内容です。

貧困に陥らないために行動する、貧困地域を改善することがSDGsのテーマのなかの1つとして設定されています。

SDGsについてより理解を深化させるためにも、まずはSDGs目標1「貧困をなくそう」で現状をしっかりと把握しておきましょう。

全体がわかったところで次からは、さらに踏み込んで現状や課題を見て行きます。

貧困の線引きについて(1.25ドル?1.90ドル?)

【SDGs目標1のポイントをわかりやすく】の章でも触れましたが、SDGs目標1「貧困をなくそう」では、1日1.25ドル未満で生活している人々を貧困と定義しています。

しかしSDGs目標1「貧困をなくそう」について調べていると、貧困の線引きが1.25ドル未満だったり、1.90ドル未満だったりと資料によって異なるケースがあります。

この1.25ドルと1.90ドルの違いについて、詳しく背景を確認しましょう。
 

貧困の線引きは世界銀行が中心となって決めている




貧困の線引きが初めて登場したのが1990年です。

これは、世界の貧困層を把握するために世界銀行が中心となり決めたもので、当時の物価や国際情勢を鑑みて、1ドル未満と設定されました。

これを「世界貧困ライン」と呼びます。

その後、2005年に1.25ドルに変更され、2015年からは1.90ドルになりました。

1.90ドルに変更された同時期にSDGsが採択されたわけですが、なぜSDGs目標1「貧困をなくそう」では1.25ドルに設定されたのでしょうか。

SDGsアワードの選考委員でもある蟹江憲史さんの著書「SDGs(持続可能な開発目標/中公新書)」によると、1.25ドルはSDGsの前身であるMDGsからそのまま引き継いだことによると書かれています。

引き継ぐことで1990年を基準として、2015年までに貧困の半減を目指したMDGsからどれだけSDGsで目標を深化させられたかが比較しやすくなっているとのことです。

とはいえ、私たちが目にするデータや資料のほとんどが世界貧困ラインは1.90ドル未満の貧困層について語られています。

貧困を調べる上での現在の基準は1.90ドルと覚えておけばいいでしょう。

そして本記事では、1.90ドルを基準として話を進めていきます。

世界の貧困状況

ここでは世界の貧困状況を見ていきます。

貧困の現状や、貧困に陥っている人々がどのような生活を強いられているのかを把握しましょう。
 

世界の貧困率の推移


世界の貧困状況は、まだまだ深刻であることに変わりませんが、徐々に改善されつつあります。

【世界の貧困率の推移】

出典:THE WORLD BANK

「世界貧困ライン」が定められた1990年は、世界の人口の36.2%が貧困に陥っていましたが、2015年には10.1%まで減少しています。

とはいえ、未だ7億3,600万人が貧困で苦しんでおり、SDGsの目標達成年である2030年までにゼロにしなければならないことを考えると、解決に向けた取り組みをさらに加速させなければなりません。
 

世界の貧困層の半数は5カ国に集中している


世界の貧困層の分布はどのようになっているのでしょうか。

地域・国別に見た世界の貧困の割合を示した表で確認しましょう。

【地域・国別に見た世界の貧困の割合】

出典:THE WORLD BANK

世界の貧困層は、南アジアとサブサハラ(サハラ以南のアフリカ)に集中しており、特にインド・バングラディシュ・ナイジェリア・コンゴ民主共和国・エチオピアの5カ国が半数を占めています。

残りの半分を見てもサブサハラ(サハラ以南のアフリカ)の国々の割合が高く、これらの地域への支援が必要なことがわかります。

貧困状態にいる人々はどのような生活をしているのか

では貧困状態にいる人々はどのような生活を強いられているのでしょうか。

お金がないなどの経済的な貧困はイメージがつきやすいと思いますが、「絶対的貧困」は安全な水を飲めない、電気を使えない、教育を受けられない、医療を受けられないなどの生きていく上で欠かせないサービスを受けられない状態も貧困の中に含まれています。

1つずつ現状を確認していきましょう。
 

安全な水を飲めない




貧困状態に陥っている人々の多くは安全に管理された飲み水を利用できず、川などに水を汲みに行かなければなりません。

そしてようやく水源に辿り着いても、そこにあるのは泥や細菌、動物の糞尿が混じっている危険な水です。

その水を口にすると、特に子どもは下痢になり、最悪の場合命を落としてしまいます。

この下痢が原因で命を落としている乳幼児は年間30万人にのぼります。
 
自宅にあり、必要な時に入手でき、排泄物や化学物質によって汚染されていない、改善された水源から得られる飲み水のこと。

 

電気を使えない


貧困状態に陥っている人々は、電気も満足に利用することができません。

そこで電気の代わりとなるのは木材です。

灯や家事、暖をとるために森林を切り開いて燃料を確保し、燃料源である森林が不足してくると、今度は家畜の排せつ物を利用しているのです。

森林を切り開くことで森林減少や土地の劣化など、別の課題も発生しており、負の連鎖が続いています。
 

教育を受けられない


教育を受けられない原因として、
・環境が整っていない→住んでいる場所の近くに学校がない
・教師の数が確保できていない
・お金がない→制服や教材を買うお金がなく断念
・紛争のため紛争が激化し難民となり、教育を受けるどころではなくなってしまう
などが挙げられます。

また、先述した安全な水を飲めない、電気を使えないことも原因の1つです。

飲み水を汲みに行ったり、燃料を確保するために森林に出向き、薪を集めてくるのは主に女性や子供の仕事です。

何時間もかけて現場へ向かい作業にあたり、その後、重い荷物を自宅まで持ち帰る。

これだけの重労働をすれば子どもは学校に行く体力は残っておらず、休む日が増えると言います。

その結果、授業についていくこともできずに最終的には学校を辞めてしまうのです。

教育を受けられないと、文字の読み書きが満足にできず、働くためのスキルも身につかないことが懸念されています。

さらに、教育を受けていない子どもが大人になると、教育の必要性が分からずに自分の子どもにも同様に教育を受けさせないという負の連鎖も起きてしまいます。
 

医療を受けられない




貧困状態の人々は、適切な医療を受けられずに命を落としてしまうケースが多発しています。

特に影響が大きいのが妊産婦や新生児、5歳未満の子どもたちです。

ユニセフによれば、先進国に比べて貧困状態の人々が多く住むサブサハラ(サハラ以南のアフリカ)の妊産婦死亡水準は約50倍にのぼり、新生児が生後1カ月以内に死亡する確率は約10倍高いとのことです。

これらは清潔な水を飲む・石鹸で手を洗う・適切な栄養摂取と抗生物質の投与・医療従事者の配置などで防ぐことができます。

しかし設備が整っていない、適切な治療を行える人材がいないことで、多数の人々の命が危険にさらされているのです。
 

紛争が起こる


世界の紛争が発生している地域と貧困状態にいる人々がいる地域には関係があります。

国連広報センターによれば、紛争が起こる原因として、
“地域的緊張状態の未解決、法の支配の崩壊、国家機構の不在または私物化、不正な経済利益や、気候変動によって助長される資源の希少化は、紛争を激化させる重大要素となっています。”
【国連広報センターより引用】

などが挙げられ、UNDP『人間開発報告書2005』 プレスリリース IVでは以下のように述べています。
”「これらの国々が紛争のせいで貧しいのか、貧しいから紛争が起きたのかを明らかにしようとするのは、無駄であり、ほとんど意味をなさない」と述べている。「明らかなのは、貧困は、武力紛争を創り出し、半永久的に存続させる悪循環の一部であり、そして、武力紛争がさらに貧困を悪化させるということである。」”
【UNDP『人間開発報告書2005』 プレスリリース IVより引用】

2018年時点で紛争により避難を余儀なくされた人の数は約7,080万人にのぼりました。

2018年の1年間で避難することになった人々は、過去最多人数を記録した2017年よりも230万人増加しているのです。

そして注目すべきは難民の約50%が18歳未満の子どもで、親や保護者と離れてしまう子どもは13万8,600人もいます。

守ってくれる親や保護者がおらず、1人で見知らぬ土地に避難することで、さらに貧困は悪化してしまいます。
 

ここまで今世界で起きている貧困の現状と、貧困状態に陥っている人々の生活を見てきました。

次では日本の現状を説明します。

日本は水も飲め、電気も使え、紛争もないため、遠い話に感じる方も多いと思いますが、「相対的貧困」の人々が数多くおり、解決しなければならない問題なのです。

日本の貧困の現状



日本などの先進国で貧困を語る場合は、これまで見てきた「絶対的貧困」ではなく、その地域社会の大多数の標準と比べて貧しい状態の「相対的貧困」で考える必要があります。
 

相対的貧困とは


「相対的貧困」の貧困ラインは、世界銀行が定める世界貧困ラインのような一定なものではなく、その国や地域の水準を元に割り出されています。

日本を例に見ていきましょう。内閣府のHPには、「相対的貧困」の問題を考える上で指標になる「相対的貧困率」の定義が書かれています。
“「相対的貧困率」とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って 調整した所得)の貧困線(中央値の半分)に 満たない世帯員の割合である。”
【内閣府より引用】

読んでもいまいち理解しにくいですよね。

少し踏み込んで説明します。

⑴可処分所得→給与から税金や社会保険料を差し引いたもので、いわゆる手取り
⑵手取りを世帯の人数の平方根で割る
 
【具体例】
・4人世帯の可処分所得(手取り)が800万の場合→800万÷√4=1人あたりの等価可処分所得は400万
・1人世帯の可処分所得(手取り)が200万の場合→200万÷√1=1人あたりの等価可処分所得は200万

なぜ世帯人数で割らずに平方根なのでしょうか。

上記の例であれば、4人世帯の可処分所得(手取り)である800万をそのまま4人で割ると200万となるため、1人世帯と変わらないように見えます。

しかし実際に共同生活をしていると、光熱費や賃料などの生活コストは家族で共通する部分が多々あります。

そのため人数が多ければ多いほど生活コストが安くなる傾向があるので、平方根で割るようです。

とはいえ「相対的貧困率」の計算式はわかりにくく感じる方も多いのではないでしょうか。

毎年日本の世帯の可処分所得(手取り)は変動もするので、その年により貧困ラインも変わるという程度の認識で問題ありません。

2017年の数値でいうと、1人世帯であれば年収127万円未満の世帯が相対的貧困となります。
 

日本は相対的貧困率が上昇している




「絶対的貧困」パートでは、世界の貧困率は減少傾向にあることと述べました。

その一方で日本の「相対的貧困率」は上昇傾向にあるのです。

【日本の貧困率の年次推移】

出典:厚生労働省政策統括官(統計・情報政策担当)「平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフでみる 世帯の状況」

平成24年以降は多少の減少が見られましたが、それでもグラフの数値はほぼ横ばいです。

2018年に厚生労働省が報告した「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」には、相対的貧困に陥っている世帯は全体の15.4%となっており、2015年の報告書には相対的貧困世帯の特徴が掲載されています。
 
【相対的貧困層の特徴】
・高齢者・単身世帯
・ひとり親世帯
・郡、町村の地方在住

この中でも特にひとり親世帯の場合は、親はもちろんのこと、子どもの貧困にもつながるため、対応が急がれます。
 

子どもの貧困を解決するにはひとり親世帯への対応が急務


日本のひとり親世帯の貧困率は先進国の中でも頭一つ抜けている状態です。

ひとり親世帯かつ親が就業している場合の相対的貧困率は2016年時点で54.6%と、ひとり親世帯のおよそ半数が貧困に苦しんでいます。

また、このひとり親世帯のほとんどが母子家庭であり、子どもがいるために正規職につけない、また適切な養育費をもらえないことで貧困に陥ってしまうようです。

このひとり親世帯の貧困はそのまま子どもの貧困につながり、現在、子どもの7人に1人は貧困と言われています。

貧困に陥った子どもは、他の子どもが行なっている“当たり前”ができません。

例えば、
・修学旅行に行けない
・塾や習い事に通えない
・本を買えない
・運動用具を買えずに部活に入れない
などが挙げられ、コミュニケーションをとる機会が極端に少なくなる傾向にあります。

さらに、勉学に励む十分な時間を確保できないといった現状もあります。

生活費を稼ぐために親が仕事を掛け持ちするなどして自宅におらず、帰宅後に家事をすべてこなす必要がある、家計を支えるためにほぼ毎日アルバイトに通うといった状況に陥ってしまうのです。

結果的に進学率が下がり、非正規の仕事に就く可能性が高くなるといったデータもあります。

これらを解決するために様々な支援が行われていますが、2020年では新型コロナウィルスの影響でさらに収入が減り、貧困が加速するといった見方もされています。

気候変動と貧困の関係



SDGs目標1「貧困をなくそう」では、気候変動と貧困の関係についても触れています。

一見、気候変動と貧困とは無縁のように見えますが、実は密接な関係を持っているのです。
 

気候変動とは


気候変動とはその名の通り、気温や降水量が変化することです。

環境問題を語る場合は「地球温暖化」による影響を指しています。

SDGsでも気候変動に関する文脈は、地球温暖化による気温上昇・異常気象による災害・海水面の上昇による地球や人類への影響を指しており、17の目標が掲げるターゲットの約8割が気候変動との関わりを持っています。

気候変動を改善しない限り、SDGsの達成は困難であることを理解しておきましょう。

では、気候変動と貧困はどのような関係を持つのでしょうか。
 

気候変動の影響


気候変動と貧困の関係を理解するためには、まず気候変動による地球と人類への影響を把握する必要があります。

ここでは「気温の上昇」「多発する異常気象」「海水面の上昇」の3つの観点をピックアップしました。
 

◆気温の上昇

地球の平均気温は年々上昇傾向にあります。

下の表は、1880年から2012年の世界の地上気温の変化を示したものです。

出典:温室効果ガスインベントリオフィス 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
 
:英国気象庁による解析データ(HadCRUT4)、薄オレンジ:米国海洋大気庁国立気候データセンターによる解析データ(MLOST)、濃オレンジ:米国航空宇宙局ゴダード宇宙科学研究所による解析データ(GISS)

この表は、1961年〜1990年の平均気温を基準(0.0)として、そこからの差異がまとめられています。

これを見ると、1880年から2012年の間に0.85℃上昇していることがわかります。(表を読み込もうとすると、専門的な知識や様々な前提を知る必要があるため、気温が上昇している、程度の認識で良いでしょう。)

今後この気温は上がり続け、2100年には最大で4.8℃も上昇することが予測されているのです。
 

◆多発する異常気象

異常気象と地球温暖化の相関関係は未だ解明されてはいません。

しかし、世界気象機関(WMO)は、異常気象は地球温暖化の傾向と一致していると発表しています。

そのため、SDGsを考える上で、地球温暖化と異常気象はセットで考える必要があります。

異常気象とは、気象庁の定義によると、
“・気温、降水量などの気象要素が過去30年以上にわたって観測されなかったほど 著しく高いか、あるいは低い値を示す場合。 ・30年に1回以下の出現確率の現象(正規分布すると仮定した場合、平均値から 標準偏差の約2.2倍以上偏った現象が発生する確率に相当)”
【環境省 資料2 国内外の異常気象などの状況(原沢委員提出資料)より引用】
とされていますが、近年では毎年のように大雨や酷暑についての報道を目にします。

日本でも台風による水害や記録的な猛暑のニュースが当たり前のようになってきました。

また、異常気象は日本だけの問題ではなく、世界共通で起きています。

アメリカ南東部からカリブ海諸国にかけての地域で190名以上の犠牲者を出したハリケーン(2017年)、北極圏でも30℃を超える記録的高温など、これまでに体験したことのない異常気象が頻発してるのです。
 

◆海面推移の上昇



海面推移の上昇も問題です。

海面の水位は1901年から2010年の約100年の間に19cmほど上昇しました。

1年あたりで見ると、海面上昇の平均は1.7mmですが、とりわけ1993年から2010年は3.2mm上昇するなど、急激な変化が見られ、気温同様に何も対策をしなければ21世紀末には0.82m上昇するとの予測が出されています。

海面が上昇すると、海抜の低い島国は高潮の被害を受けやすく、普段でも潮が満ちると住宅街に海水が浸水し、地下水が利用できなくなるなどの弊害が発生しているようです。
 

気候変動が貧困を加速させる


これらの気候変動により、貧困状態に陥っている人々はさらに貧しい生活を強いられるようになります。
 

◆サブサハラ(サハラ以南のアフリカ)のケース

気候変動によってアフリカなどでは大規模な干ばつや突発的な大雨による異常気象が多発するようになりました。

アフリカの人々の生活基盤は農業や漁業です。

特に農業は雨水に頼る伝統的な手法で作物を育てているため、深刻な干ばつが起きると食料源が断たれてしまいます。

また、気温上昇により、水に生息する生物の生態系も変化することが考えられ、漁獲量にも影響を及ぼすでしょう。
 

◆南アジアのケース

南アジアでは、主に水害による困窮が考えられます。

気候変動による降雨パターンが変化(一定時期に降水量が極端に増えたり減ったりすること)することで、
・一部の地域が水没・発電量の不足(川の水を利用した発電方法が主流であるため)
・飲料水の不足
などの問題が発生します。

さらには気候変動によって食糧難に陥ると、希少な資源を巡って争いに発展することもあるそうです。
 

◆日本のケース

日本でもサブサハラ(サハラ以南のアフリカ)や南アジアのような、気候変動と貧困の関係はあるのでしょうか。

気候変動とは直接の関係はないものの、2011年に発生した東日本大震災のケースで考えてみましょう。

2020年12月10日の毎日新聞に「震災遺児が直面する貧困 所得200万円未満4割超、保護者の半数は非正規か無職」という記事が掲載されました。
“世帯所得200万円未満の家庭が震災前は6%しかなかったのに、震災後は4割超に増えていた。保護者の現在の職業は非正規が3割、無職が2割で、合わせると5割を超える。ひとり親となった家庭や、孤児を育てる家庭の家計が困窮している状況がうかがえた。”
【毎日新聞「震災遺児が直面する貧困 所得200万円未満4割超、保護者の半数は非正規か無職」より引用】

震災で職場が被災したことで職を失い、次の職がなかなか決まらない・決まっても非正規で収入が安定しないなどが考えられます。

これは東日本大震災に限ったことではなく、豪雨による災害やコロナ禍でも同様で、これまで貧困状態だった家庭はさらに苦しく、貧困ラインの瀬戸際で生活していた家庭が貧困状態に陥るなど負の連鎖を生み出してしまうのです。

貧困そのものの解決はもちろんのこと、災害が発生した際には貧困状態の人々を保護する取り組みや制度が求められています。

SDGs目標1「貧困をなくそう」達成に向けた企業の取り組み



ここまでがSDGs目標1「貧困をなくそう」の背景や現状でした。

世界的には減少傾向にあるものの、いまだ課題は山積みで、2030年までに達成させるためにはさらなる対応が必要です。

では、SDGs目標1「貧困をなくそう」に向けて企業はどのような取り組みを展開しているのでしょうか。

2015年にカンボジアで「森の叡智プロジェクト」をスタートさせたフロムファーイースト株式会社を紹介します。
 

「森の叡智プロジェクト」で雇用の創出も「フロムファーイースト株式会社」


フロムファーイースト株式会社は、「森の叡智プロジェクト」というカンボジアに植林をするプロジェクトを2015年から展開しています。

植えた植物の葉や種がコスメの原料になるため、カンボジアに新しい仕事を生み出すことも期待され、現地の人々も、植えた木が長期にわたって収入源となるため、むやみやたらに伐採をしなくなるようです。

さらに、この取り組みは気候変動での洪水被害を抑制する働きも兼ね備えていることからCOP21(気候変動枠組条約締約国会議)でも取り上げられました。

「森の叡智プロジェクト」は、環境破壊への対策・雇用の創出・気候変動への対策と複合的な点で貧困の解決を目指しており、SDGsの達成に貢献しています。

>>詳しくはフロムファーイースト株式会社のHPをご参照ください。
 

魚を与えることも釣り方を教えることも重要


貧困を解決するためには、一時的に食料や水などを支援する方法と、貧困から脱出するための手法を提供する方法の2つが挙げられます。

上記のフロムファーイースト株式会社は、貧困から脱出するための手法を提供する支援の形です。

「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」という言葉がありますが、貧困の解決には魚を与えること(寄付による支援)も、釣り方を教えること(現地に雇用を生み出す、医療の方法を指導する、学校教材を普及させて教師の質を上げるなど)も必要となるのです。

SDGs目標1「貧困をなくそう」達成のためにわたしたちにできること



とはいえ、個人がいますぐ企業のようなプロジェクトを始めるのは困難です。

また、企業も事業内容と貧困をリンクさせられない場合もあると思います。

そんな時に私たちがまずできることは寄付による支援でしょう。

とは言っても、寄付先が多数ありどこに寄付をすればいいのか選べないといったこともあります。

そこでこの記事では、貧困状態の国の1つであるシエラレオネを例に、貧困の現状を知ることから始めるアプローチ法をご紹介します。
 

本や動画で現状を知る




SDGsでは提示された問題を自分ゴト化して行動に移すことを求めており、そのためにもまずは今世界でどのようなことが問題になっているのかを知ることが大切です。

本を読む、YouTubeや映画を見るなどその手段は様々ですが、現状を知れば自分が特に興味関心を持つ分野が分かり、寄付先を選ぶ際の参考になるでしょう。

次では貧困状態の国の1つであるシエラレオネを例にした、現状が分かるおすすめの本や動画を紹介します。
 

【本で現状を知る】世界で一番いのちの短い国: シエラレオネの国境なき医師団/小学館文庫


シエラレオネはデータがとれない国を除いて世界で最も平均寿命が短い国の1つです。

2002年まで10年以上続いた内戦がで医師も看護師も逃げ出してしまい、医療システムが崩壊していました。

この本は、著者の山本敏晴さんが現地に赴き、いのちを救うために奮闘した実際の体験をもとに記されたものです。

「貧困」というワードを目にするとどうしても身構えてしまう、本を読んでいて辛くなってしまうという方も多いと思います。

しかし、この本ではユーモラスな表現を交えながら現地の状況を伝えているため、暗い気持ちにならずに読み進められます。

医療事情はもちろんのこと、トイレ事情など現地の生活ぶりもわかり、考えさせられる内容です。

写真も多く掲載されているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

>>世界で一番いのちの短い国: シエラレオネの国境なき医師団/小学館文庫の詳細はこちらから
 

【動画で現状を知る】UNICEF Sierra Leone(ユニセフ シエラレオネ)チャンネル


本でシエラレオネの現状を知った後は、動画でもチェックするとより問題意識を強く持てるのではないでしょうか。



こちらはユニセフが運営しているシエラレオネ専門のチャンネルです。

英語字幕ではありますが、現地の生活ぶりや教育事情などが垣間見られるため、より具体的に理解ができるでしょう。

>>UNICEF Sierra Leone(ユニセフ シエラレオネ)チャンネルはこちらから
 

寄付先を選ぶ


貧困についての現状や自分の興味関心が分かったら、いよいよ寄付先の選択に入ります。

これといった寄付先がすぐに見つかる方ばかりではないと思いますので、国際NGOワールド・ビジョン職員の與十田喜絵さんに寄付先を選ぶポイントを伺いました。

以下、SDGs「質の高い教育をみんなに」とは|私たちにできることより引用
 
【與十田喜絵さん】
都立国際高校在学中、多様なバックグラウンドを持つ友人に出会う。津田塾大学に在学中、外国籍を持って日本に暮らす子どもをサポートするサークル活動に参加。卒業後は一般企業に勤務したが、2006年ワールド・ビジョン・ジャパンに入団。ファンドレイズ、支援者サービス部署を経て、現在は広報を担当。

教育に関する寄付と言っても、国内か国外か、またチャイルド支援や難民支援など、寄付の範囲や内容もまちまちで、選ぶのも難しいですよね。

ですので、まずはイベントに参加して、その団体で働く職員と触れ合ってみるのはどうでしょうか。

雰囲気や目指す方向性をじかに感じられると思います。

それが難しければ、たまたま目にした団体でもいいと思います。

私たちの支援者さんの中にも、広告を見て始めてみました、という方もいらっしゃいます。

あとは、とにかくやってみることです。

違うと思えば、別の団体に変えることも簡単にできますので。

以下に寄付を受け付けている有名な団体を記載しています。
 

◆特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン

水・家族の生活・貧困・栄養・教育など33カ国で154事業の事業に取り組んでいるまさに「支援の世界的総合デパート」。

毎月や一回など募金の頻度やキャンペーンの種類が豊富で、あなたにぴったりの寄付先が見つかりそうです。

>>特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンのHPはこちら
 

◆特例認定NPO法人e-Education

「最高の教育を世界の果てまで」というコンセプトのもと、途上国の子どもたちの教育を映像で支援しています。

また、寄付はもちろん、インターンやボランティアの参加、SNSをフォローしよう!など、様々な支援の方法を提示してくれていますので、是非一度ご覧ください。

>>特例認定NPO法人e-EducationのHPはこちら

この他にも支援団体はたくさんあるので、自分の興味関心がある団体を探してみてはいかがでしょうか。

貧困をなくすためにできることから始めよう

この記事ではSDGs目標1「貧困をなくそう」について詳しく見てきました。

SDGsの1番最初に設定されている目標であり、目標2〜17までと密接な関わりを持つためボリュームの大きい内容になりましたが、一度ですべてを理解するのは難しいと思います。

少しずつ理解を深めていき、これから貧困の解決に向けて自分が何をできるかを考えてみてはいかがでしょうか。

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SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を考える|インフラの現状や企業の取り組みも
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