SDGs7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とは?現状や取り組み事例・私たちにできること

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近年、テレビや雑誌で耳にする機会が増え、私たちの生活にも定着してきたSDGs。本記事をお読みになる方は、すでにSDGsについてだいたいは理解できていて、各目標についてもう少し詳しく知りたいと思っているのではないでしょうか。

本記事では、SDGs7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のポイントは何か、目標を達成するために個人や企業でできることなど、SDGs7が設定された背景や取り組み事例を交えながらわかりやすく説明していきます。

まずはSDGsのおさらいからはじめましょう!
 


 
目次
1.SDGsとは
2.SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を考える
3.SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のポイントをわかりやすく
4.なぜSDGs目標7が必要なのか?
5.【2021年最新データ】電気普及の現状
6.未電化による弊害
7.【グラフで見る】世界のエネルギー消費の問題点
8.解決策の一つは、再生可能エネルギーの活用
9.日本の再生可能エネルギーの現状
10.バイオマスに注目が集まる
11.バイオマスをエネルギーとして利用する方法
12.世界のバイオマスの現状
13.日本のバイオマスの現状
14.SDGsでの原子力の取り扱い
15.SDGs目標7達成のために、私たちにできること
16.エネルギーの現状を知り、持続可能なエネルギーへの理解を深めよう

SDGsとは

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの頭の文字を合わせた言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。

読み方は、SDGs(エスディジーズ)です。

2015年9月、ニューヨーク国際本部にて開かれた国際サミットで、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。

これは、2016年から2030年の15年間で達成する目標を記したもので、「地球上の誰一人取り残さない」という強い意志のもと、地球を保護しながら、あらゆる貧困を解消し、すべての人が平和と豊かさを得ることのできる社会を目指し設定されました。

そのなかで設定された17の目標は、課題解決の糸口になるものです。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、経済・社会活動すべての根元にあるエネルギーにスポットをあてています。

もちろんそれは、環境に配慮した形態のエネルギーでなければなりません。

ではここからはそのSDGs目標7について掘り下げながら見ていきましょう。
 
>>SDGsをさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
SDGsとは|概要や背景・日本や世界の取り組みまで
 

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を考える



SDGs目標7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」はキャッチコピーで、正式な目標の和訳は「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」です。

正式和訳を読むと難しそうな印象を受けますね。

簡潔に言うと、全世界の人々が電気を含めたエネルギーを使えるようにし、なおかつこれまでの石油や石炭といった環境に影響を及ぼすものではなく、クリーンなエネルギーにシフトしていこう、ということです。

ではなぜ「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」がSDGsの目標の中に採用されたのか。

それを読み解くために、世界の電気の普及率やエネルギーの種類などの背景を見ていきましょう。

まずはSDGs目標7に関するターゲットの確認です。

SDGs目標7のターゲット

ターゲットとは具体的な行動指針のようなもので、「目標番号.●」の●に数字が入る場合(例:7.1など)は目標に対する具体的な課題を挙げて、「これを達成させましょう」という意味で、●にアルファベットが入る場合(例:7.b)は課題を達成させるための手段や策を指します。

詳しい説明は後述するので、まずは一通り目を通してみましょう。
 

7.1

2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。

7.2

2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

7.3

2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。

7.a

2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。

7.b

2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

出典:外務省「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット(外務省仮訳)」

SDGs目標7のターゲットは他の目標に比べると項目も少なく、比較的わかりやすい内容が並んでいますが、再生可能エネルギーなどの聞きなれないワードも盛り込まれています。

次ではSDGs目標7の3つのポイントを簡単にまとめたので、概要を抑えたい方はチェックしてみてください。

その後に目標が設定された背景や企業の取り組みを記載しているので、合わせて読んでいただければより理解を深化させられます。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のポイントをわかりやすく

SDGs目標7の概要を抑える上で大切なポイントは3つです。
 
①誰もが電気を使える環境を整える
②再生可能エネルギーを活用する
③エネルギー利用において地球に負荷を与えない技術を向上させる

1つずつ詳細を見ていきましょう。
 

①誰もが電気を使える環境を整える




世界には、2018年時点で約8億6,000万人の人々が電気を使えずに生活しています。

電気が使えない地域のほとんどが、貧困世帯が多いとされる途上国の農村です。

電気が普及していないと、
・教育を満足に受けられる環境が整わない
・農作物や漁業の収穫物を加工する施設も未成熟で、産業が発展しない
など、貧困の解決に必要な行動を起こしにくくなってしまいます。

これを解決するためにも、誰もが電気を利用できるようにしていく必要があるのです。
 

②再生可能エネルギーを活用する


電気を使える環境を整えるにあたり、環境に負担がかからない再生可能エネルギーを活用していくことが求められています。

これまで、石炭や石油などの化石燃料を利用してエネルギーを生み出してきました。

しかし、石炭や天然ガスは限りある資源であり、このまま使い続けると枯渇してしまいます。

また、大量の温室効果ガス排出の原因ともなるので、それに替わる次世代のエネルギーとして期待されているのが再生可能エネルギーなのです。

再生可能エネルギーとは、太陽光や地熱、風力など地球上に常にあるエネルギーを指します。

再生可能エネルギーは、枯渇しない・どこにでもある・CO2を増加させないというメリットがあるため、持続可能な社会を築くために欠かせないエネルギーです。

この再生可能エネルギーを世界中で活用していくことが求められています。
 

③エネルギー利用において地球に負荷を与えない技術を向上させる




とはいえ、メリットばかりに見える再生可能エネルギーにも課題が残されています。

例えば、
・気候によってエネルギーの供給が不安定になってしまうこと
・発電には大量の再生可能エネルギー資源が求められ、さらには巨大な設備が必要になる
などです。

巨大な設備を設置するために、途上国の人々が住む場所を追われたり、その土地の森林を大規模に切り開いて生態系への影響が見られるようでは、持続可能とは言えません。

今後、再生可能エネルギーを効率よく利用できるような技術の向上を目指すことが必要です。

ここまでがSDGs目標7の大まかな概要です。

次からはさらに踏み込んで、目標が設定された背景などを見ていきましょう。

なぜSDGs目標7が必要なのか?

そもそもSDGsの中で、なぜエネルギーの分野が目標に定められているのでしょうか。

エネルギーをとりまく世界の現状とは?

日本ではスイッチひとつで電源がつき、明かりが灯る光景は当たり前と感じるかと思います。
しかし世界では、いまだ約7億6,000万人もの人々が電気を利用できない状況にあるのです。
一方、先進国を中心にエネルギー消費量は増加しています。
エネルギーの元になっているのは石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料と言われるもので、エネルギーを作り出すために燃焼させることで二酸化炭素が発生します。これが地球温暖化の深刻な要因の一つになっているのです。
また、化石燃料は限りある地球の資源です。このまま消費を続けていくと、近い将来化石燃料を使い果たしてしまうと危惧されています。

このように、持続可能な社会の実現に向けては、エネルギーをとりまく世界の問題に取り組むことが不可避と言えます。
 

【2021年最新データ】電気普及の現状

国際連合広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)報告 2021」によると、電気を利用できない人々は2021年時点で約7億6,000万人にものぼります。

では、どのような国で電気が利用できていないのでしょうか。

電気を使えない人(未電化人口)の分布



出典:経済産業省資源エネルギー庁「第3節 二次エネルギーの動向」

このグラフを見るとほとんどがサハラ以南のアフリカ(サブサハラ)と南アジアで占めています。

また、電気が利用可能な地域でも、電気の価格が高いなどの理由により自由に使うことができない人々も多くいるのです。

電気を満足に使えない人々は、灯や家事、暖をとるために森林を切り開いて燃料を確保しており、環境の負荷につながっています。

さらに燃料源である森林が不足してくると、今度は家畜の排泄物を利用しなければなりません。

このような暮らしを強いられている人々は世界に30億人いると言われています。

次は、電気が使えないことによる具体的な弊害についてみてみましょう。

未電化による弊害

ここでは「教育」「産業」「環境」の3つの面をピックアップしました。
 

弊害①教育を満足に受けられない




先述した通り、未電化地域では木材を燃やして灯や暖をとるなどしています。

燃料を確保するために森林に出向き、薪を集めてくるのは主に女性や子供の仕事です。

彼らは何時間もかけて薪を拾い集め、その重い荷物を自宅まで持ち帰ります。

さらに水を汲みに行く仕事も合わせて行わなければなりません。

これだけの重労働のせいで、子どもであれば学校に行く体力は残りません。

欠席が増え授業についていけなくなり、最終的には学校を辞めてしまうのです。

教育を受けられないと、働くためのスキルが身につきにくく、また医療に関わる人材も育たないなど健康にも影響を与えてしまいます。
 

弊害②産業が発展しない


現在、途上国の経済は、一次産業が中心です。

これは農産物や魚類を収穫後に加工せずそのまま販売する産業のことで、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、特にサハラ以南のアフリカ地域の9割がこの一次産業に頼った経済体系です。

さらに国連広報センターの「事実と数字」を見ると、途上国の国内で加工される農産物(=二次産業)はわずか30%にすぎず、同様の割合が98%である先進国と比べると、大きな差があることがわかります。

一次産業は天候によって収穫量が左右される、保存できる環境が整っていないなどのデメリットにより、収入が不安定になることが考えられます。

電気が使えないことで加工するための施設を整備できず、二次産業の発展の妨げになっているのです。
 

弊害③環境破壊が進み、温暖化の原因にも




電気の替わりの燃料として森林を伐採することで、森林減少などの環境破壊が進むことも懸念されます。

この場合、森林の再生を待たずしてどんどん伐採するため、森林が枯渇します。

そして森林が減少して燃料源がなくなると、今度は火を確保するために家畜の糞を用いるのです。

本来であれば糞は農地に返し、肥料として使うことで土壌を豊かにしますが、燃料として用いることで、農地に栄養が行き渡らなくなり、土地が疲弊してしまうのです。

そうなると作物が育たなくなり、また別の土地に移って同じことを繰り返す負のスパイラルに陥ります。
 

森林伐採は、地球温暖化にも直接影響してきます。
木々は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を樹木内に取り込みます。

さらに落ち葉も土壌の炭素を吸収する役割を担っており、温暖化の抑止に欠かせない存在です。

森林を必要以上に伐採することで、二酸化炭素の吸収源を失うと同時に、吸収していた炭素も排出してしまうのです。

このまま森林の減少が続き、温暖化が進行すると、2100年には2000年と比べて平均4.8度も上昇することが予想されています。

このように、電気が使えないことは不便さだけでなく、様々な問題に派生してしまうのです。

また、電気の普及はSDGsの他の目標にも密接な関わりを保つため、この目標が達成されることは、総合的な解決にもつながあります。

そこで求められているのは環境に負担をかけないエネルギーの利用です。

SDGs目標7では実際に、「再生可能エネルギー」の活用を促進する内容も掲げられています。

【グラフで見る】世界のエネルギー消費の問題点

ここまで、電気を使えずに暮らしている世界の人々に焦点をあててきました。
一方で、日本のように電気が普及している国にも問題点があります。グラフも交えて詳しく見ていきましょう。

現在のエネルギーは化石燃料が大半を占める

現在の世界の主なエネルギー源は石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料が大半を占めています。

【世界のエネルギー消費量の推移】

出典:経済産業省資源エネルギー庁「【第221-1-3】世界のエネルギー消費量の推移(エネルギー源別、一次エネルギー)」

この表を見るとわかるように、エネルギーの中心は石炭(青)や石油(赤)ではあるものの、近年では伸び率が鈍化し、天然ガス(緑)が割合を増やしました。

これは、地球温暖化による気候変動への対策が求められている先進国を中心に、天然ガスの需要が増えたことによります。

天然ガスは排出するCO2の量が石炭や石油に比べて少なく、地球に優しいエネルギーとして期待されているからです。

とはいえ、天然ガスも石炭や石油と同様に化石燃料に分類され、使えば使う分だけ資源が減少することを忘れてはなりません。

化石燃料は枯渇する

石油や石炭、天然ガスの化石燃料は、このまま使い続けると資源が枯渇することがわかっています。

それぞれの採掘が可能とされる年数
・石炭 100年
・石油 50年
・天然ガス 50年
新たな油田や鉱山が発見されればこの期間は長くなるとはいえ、有限である以上最終的には枯渇する時がくるでしょう。

温暖化対策や、化石燃料の将来性など総合的な面から勘案した結果、無限に使用できる再生可能エネルギーが注目を集めたのです。

表のオレンジ色箇所が再生可能エネルギーの割合です。

まだまだ全体の中では低い数値となっているものの、着実に増加傾向にあることがわかります。

解決策の一つは、再生可能エネルギーの活用



【SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のポイントをわかりやすく】の章でも触れましたが、再生エネルギーとは、太陽や風、地熱などの自然界にあるエネルギーです。

これらは、枯渇しない・どこにでもある・CO2を増加させないという特徴があります。

ここでは再生可能エネルギーのメリットやデメリットを中心に見ていきましょう。
 

再生可能エネルギーの種類




では、再生可能エネルギーにはどのような種類があるのでしょうか。

主な再生可能エネルギーは7つです。
・太陽光
・風力
・水力
・地熱
・太陽熱
・大気中の熱その他の自然界に存する熱
・バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの)

この7つのなかでとりわけ著しい伸びを見せているのが太陽光です。

「クリーンエネルギー」との違いは?

「再生可能エネルギー」とよく使われる言葉の一つに、「クリーンエネルギー」があります。
「クリーンエネルギー」とは、温暖化の要因となっている温室効果ガスやその他の環境に悪影響を及ぼす物質を排出しないエネルギーのことを指します。例えば太陽光・風力・地熱などの自然由来のエネルギーを「クリーンエネルギー」と呼びます。

ただし、地球に優しい「クリーンエネルギー」も、場合によっては地球環境を破壊するリスクがある場合もあるため、注意が必要です。
例えば水力発電の場合、発電時に二酸化炭素を排出しないものの、ダムの建設などで土地開拓の必要があり、これが地球環境に負荷をかける結果になることもあります。
 

日本の再生可能エネルギーの現状

【再生可能エネルギー発電容量の推移】

出典:環境省「第3節 環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた取組事例」

表を見ると、2012年以降、太陽光の発電容量が急増していることがわかります。

この背景には2012年に導入された固定価格買取制度(FIT制度)の影響があります。

経済産業省資源エネルギー庁によると、固定価格買取制度(FIT制度)とは、
“「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用の一部を電気をご利用の皆様から賦課金という形で集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えていきます。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進みます。”
【引用元】経済産業省資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」
固定価格買取制度(FIT制度)という単語は聞きなれないものの、「売電」というと一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

近年、屋上や屋根にソーラーパネルを設置し、太陽光発電を導入する建物が増えています。

ここで生み出された電力は、自分で使うだけでなく売ることができます。

このシステムこそが売電で、固定価格買取制度(FIT制度)により普及したのです。

そもそも固定価格買取制度(FIT制度)が普及したきっかけは、2011年に起きた東日本大震災による電力不足によるものでした。
 

発電所の停止による電力不足が、再生可能エネルギー普及のきっかけに




東日本大震災の際、全国の複数の発電所が被害を受け、さらには福島第一原子力発電所の事故も重なり、深刻な電力不足に陥ります。

関東圏では電力不足による大規模停電を防ぐために計画停電が行われるなど、私たちの生活にも影響を及ぼしました。

それまでも固定価格買取制度については度々議論が重ねられていましたが、震災を機にこれまで以上にエネルギーの自給が必要とされたのです。

そこで2012年7月から固定価格買取制度(FIT制度)がスタート。

本格的に再生可能エネルギーの普及が進められたことで、【再生可能エネルギー発電容量の推移】の表で見られるような成長を遂げています。

とはいえ、発電コストが欧州に比べて高いことなど課題は残されており、今後加速度的に再生可能エネルギーを普及させるためにも、効果的な対応の検討が必要です。

バイオマスに注目が集まる

再生可能エネルギーは、コスト面での課題以外にも課題は残されています。

それはエネルギーの供給が不安定であることです。

例えば太陽光は、梅雨時期に太陽がほとんど出ない、冬の日照期間が短いことなど、条件によって生み出されるエネルギーの量が左右されてしまいます。

そこで近年注目を集めているのがバイオマスです。
 

バイオマスとは




「再生可能エネルギーの種類」の章でバイオマスとは、動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるものと記述しました。

しかしこれだけではわかりにくいですよね。

経済産業省資源エネルギー庁のHPにわかりやすい記事をみつけたので引用します。
“「バイオマス」というと、木質系の残材や食品残さ(廃棄物)のことを思い浮かべる人が一般的でしょう。しかし、それだけではありません。「バイオマス」とは本来、生物資源(Bio)の量(Mass)を示す概念。そこから転じて、生物由来の有機的な資源のうち、化石資源を除いたものを指します。木や果物のような植物だけが「バイオマス」ではなく、それを食べる動物も「バイオマス」です。陸上だけでなく海の生物、植物プランクトンや海藻、またそれらを食べる魚などもそうです。つまり、地球上の生命体すべてがバイオマスなのです。”
【引用元】経済産業省資源エネルギー庁【インタビュー】「カーボンニュートラルなバイオマスのエネルギー利用」—牛久保 明邦氏(前編)

このことからわかるように、使い続けるといずれなくなってしまう化石資源以外の生命体を資源として活用することがバイオマスです。

現在、資源として活用されているバイオマスは以下の3種類に分けられます。
 
⑴廃棄物系バイオマス
⑵未利用バイオマス
⑶資源作物

次ではこの3つを簡単に説明します。
 

(1)廃棄物系バイオマス


廃棄物系バイオマスは、家畜排せつ物、食品廃棄物、廃棄紙、黒液(パルプ工場廃液)、下水汚泥、し尿汚泥、建設発生木材、製材工場等残材などが挙げられます。

特に食品廃棄物を活用したバイオマスのエネルギーは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」などでピックアップされている「食品ロス」への取り組みにも深い関わりを持つものです。
 

>>SDGs目標12について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」を考える|企業はどう向き合えばいい?
 
 

(2)未利用バイオマス


未利用バイオマスとは、稲わら、麦わら、もみがら、林地残材などが挙げられます。

農作物の食べられない部分や森林で木を切ったあとに出る使うことのできない木材が主です。
 

(3)資源作物


資源作物とは、廃棄物系・未利用バイオマスのような利用後の活用ではなく、最初からバイオマス目的で栽培されるものです。

主に糖質資源(さとうきび等)、でんぷん資源(とうもろこし等)、油脂資源(なたね等)、柳、ポプラ、スイッチグラスが挙げられます。
 

バイオマスをエネルギーとして利用する方法


ではこれらのバイオマスはどのようにエネルギーとして活用されているのでしょうか。

その方法は主に「燃焼」と「ガス化」の2つです。
 

◆燃焼

燃焼とは、その名の通り資源を燃焼し、その際に発生する熱エネルギーを利用することです。

電力で見れば、発生した熱でタービンを回して発電しています。

この原理は火力発電と同じです。
 

◆ガス化

ガス化は、資源を加熱し、その際に発生する「バイオガス」を燃焼させてエネルギーを得る方法です。

この場合、原料によってはバイオガスを抜くと消化液と呼ばれる液体が残ります。

これは肥料成分を含むため、農地へ散布されるなど、無駄のない活用がされています。
 

燃焼によるCO2排出への新たな対応策「カーボンニュートラル」




バイオマスをエネルギーとして活用する方法を見ると、化石燃料と変わらずCO2を排出しているのでは?と疑問を持つ方もいると思います。

確かにバイオマスを活用してもCO2は排出されますが、化石燃料と異なるのは「カーボンニュートラル」という考え方があることです。
 

◆カーボンニュートラルとは


出典:林野庁「なぜ木質バイオマスを使うのか」

植物は光合成によりCO2を吸収し、O2を排出しています。

カーボンニュートラルとは、バイオマス発電により発生したCO2を、今ある森林や新しく植えた苗が吸収して成長することで、両者を差し引いてCO2の排出量をゼロにするという考え方です。

化石燃料ももとを辿れば生物由来のものではありますが、燃焼したら再び作ることは困難です。

その一方で、森林は伐採しても新しい苗を植えることで成長するので、循環したサイクルを実現できます。

バイオマスは原料の収集・輸送時にCO2を排出しているため、カーボンニュートラルではないとの指摘もあることも頭の片隅に置いておく必要がありそうです。

世界のバイオマスの現状

ここまででバイオマスの特徴を説明しましたが、世界の活用状況をここでは触れていきます。

REN21「自然エネルギー世界白書2020」によれば、2018年の世界のエネルギー需要において、再生可能エネルギーの約半分をバイオマスエネルギーが占めています。

これは主に「産業用熱」「空調」「輸送」「発電」に用いられており、年々ゆるやかではあるものの増加傾向にあります。

その一方で、バイオマスエネルギーを牽引してきた欧米などの国々への導入が一段落したことで、成長スピードが鈍化しているのも事実です。

その中で存在感を見せているのが中国で、2017年〜2019年においてバイオマス発電量が世界1位になっています。

とはいえ、中国はエネルギー消費も増加傾向にあるため、バイオマスエネルギーが成長した今でも依然として石炭の消費量も高いことが課題です。

このように世界でも課題を残しつつも需要が少しずつ増えているバイオマスエネルギーですが、日本での状況はどのようになっているのでしょうか。

日本のバイオマスの現状

日本のバイオマスの活用状況は発電容量で見るとここ10年でほぼ横ばいであることがわかります。

再掲:【再生可能エネルギー発電容量の推移】

出典:環境省「第3節 環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた取組事例」

横ばいであることの理由は、
・バイオマスへの認知や手段がまだ広まっていないこと
・資源である廃棄物や廃材の収集にあたる人材が不足していること
などが挙げられます。

今後これらの課題をクリアしていくことが普及の鍵となりそうです。

その一方で、バイオマスは日本の地方活性化を促進する可能性を秘めているとも言われています。
 

バイオマスが地方活性化の起爆剤に


日本のバイオマス資源のほとんどが未利用バイオマスの木材です。

日本の国土は森林に覆われており、豊富な資源の確保が見込めることから、各自治体が注目し実際に取り組みが広がりつつあります。

また、日本政府はSDGsを推進するために、SDGsの手法を取り入れたモデルとなるような先進的な取り組みを行なっている自治体を「SDGs未来都市」として制定しています。

このSDGs未来都市に選定された自治体の取り組みには、バイオマスを取り入れた循環型のまちづくりを進めているものが多くみられます。

ここでは北海道下川町と山形県飯豊町を例に、取り組みを見ていきましょう。
 

森林を軸に持続可能な街へ 北海道下川町の取り組み


引用元:下川町HP

下川町は、2008年に環境モデル都市、2011年に環境未来都市に選ばれ、さらにはSDGs達成に向けた優れた取り組みを表彰するSDGsアワードで、最も優れた賞である「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」を受賞するなど、いわばまちづくりのエキスパートです。

町の面積の9割が森林で覆われている下川町は、この森林を軸にまちづくりを進めています。

その取り組みの1つに伐採→植林→育林→伐採の循環型森林経営が挙げられます。

森林の成長過程では、密集化を避けるために間引きをする必要があります。

その際伐採された木材などを森林バイオマス資源として活用しているのです。

この森林バイオマス資源は公共施設で最も多く利用されています。

例えば二酸化炭素を多く排出していた「五味温泉」に木質エネルギーを利用したボイラーを設置し、二酸化炭素やコストの削減に成功したようです。

木材以外でも、自治体ごとの特色を活かしたバイオマス事業が進められています。

その中でも長年家畜の排せつ物の匂いに悩まされていた山形県飯豊町の取り組みを紹介します。
 

家畜の排せつ物を有効利用 山形県飯豊町の取り組み



引用元:飯豊町HP

山形県飯豊町は、2000年から地域資源を再生可能エネルギーとして活用するための取り組みを進めており、2017年にはバイオマス産業都市にも認定されました。

この背景には、ブランド牛である「米沢牛」などの生産時に出る糞の処理・臭気問題があり、そこに多大なコストと労力をかけてきました。

そこで2004年に有機肥料センターを整備し、家畜の排せつ物を堆肥化して農地に還すためのシステムを構築。

さらに、2017年には、家畜排せつ物等を活用するためにバイオガス発電事業の展開を始めました。

これらの取り組みにより、臭気対策や環境に配慮した循環型農業の実現を推進しています。

バイオマスに注力することで二酸化炭素の軽減も期待でき、様々な点からターゲット11.6の解決につながっているのです。

これらの取り組みは自治体のみでなく、企業などの様々なステークホルダーと連携をとって進めています。

そのため、自治体が組む予算とは別に新しい雇用が生まれることにもつながっているのです。
 
>>SDGs未来都市について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
SDGs未来都市とは?|過去の選定結果・事例から傾向を知ろう!

SDGsでの原子力の取り扱い

ここまでエネルギーの現状や再生可能エネルギーについて見てきました。

最後にエネルギーを語る上で欠かす事のできない原子力に関してSDGs内での取り扱いについて触れます。

結論から言うと、SDGsでは原子力についての記述はありません。

これは、SDGsがさまざまな国々の意見を尊重しながら作り上げてきたことにより、国際的に対立するであろう問題を正面から取り上げることを避けた結果です。

ジャパンSDGsアワードの選考委員でもある蟹江憲史さんの著書「SDGs(持続可能な開発目標)/中公新書」によれば、
【引用】
“しかし、SDGs達成という観点から、今の原発で問題になるのは、まずは廃棄物の問題(目標12)である。最終的な処分方法が決まっていないなかで、放射性廃棄物を出し続けるというのは、持続可能ではない。また、廃棄の問題とも関係するが、3・11福島第1原子力発電所事故のように、いったん事故が起こったときの空間的規模や、世代を超えた影響の大きさを考えると、レジリエントなインフラ(目標9)という点や、すべての人々の健康的な生活確保(目標3)という点からも、持続可能な状態ではないと考えられる。”

と書いているように、「持続可能」な観点から見ても課題が多く、SDGsの文脈の中で取り扱うのは非常に難しいことがわかります。

今後、イノベーションの促進によって、原子力の取り上げ方が変わってくることが考えられますが、現状は触れていないという認識で良いかもしれません。

SDGs目標7達成のために、私たちにできること



最後に、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を達成するために、わたしたちができることをピックアップしました。

まず一番身近で手軽に始められることは、エネルギーの消費量を少しでも減らすことです。

そのための行動としては、
・電気をこまめに消す
・エアコンを適正な温度に設定する
・自家用車ではなく、公共交通機関を使う
などが挙げられます。

加えて、各自治体が開催する再生可能エネルギーや省エネに関するイベントに参加して、住んでいる街の現状を知ることも効果的でしょう。

そして大きな決断が必要となりますが、再生可能エネルギーに力を入れている地域への移住も視野にいれるのも良いかもしれません。

これは、エネルギーに関する行動はもちろんのこと、地方が活性化する、首都圏への一極集中が解消されるなど、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」などの他の目標とも関連を持つ行動となります。
 
>>SDGs目標11について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」を考える|世界の現状や日本の取り組みも
 

エネルギーの現状を知り、持続可能なエネルギーへの理解を深めよう

本記事では、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」について、世界の電気普及率やクリーンなエネルギーとして再生可能エネルギーについて詳しく見てきました。

SDGsに関する多くの本のなかで、SDGsの達成のためにはまず「自分ゴト化」することが大切であると書かれています。

そのために大切なのは現状を知ることです。

現状を知れば1人1人の意識が変わり、行動にうつすことができるのです。

個人でできることは小さなことかもしれません。

しかし、その行動がSDGs目標7の達成、ひいてはSDGs全体の目標の達成につながり、持続可能な社会をつくることができるので、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

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