SDGsとプラスチックゴミ問題の関係は?削減に向けた国や企業の取り組みも

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近年、テレビや新聞で頻繁に取り上げられるようになり、認知が高まりつつあるSDGs。インターネット上でもSDGsに関するさまざまな記事を読むことができます。

そのなかで、SDGsとプラスチックゴミとの関係性をピックアップした記事を目にすることも多いのではないでしょうか?

この記事では、なぜSDGsとプラスチックゴミが関係するのかを知るために、プラスチックゴミが地球に与える影響や削減のために国・企業が行なっている取り組みなどを見ていきます。
 

目次
1.SDGsとプラスチックゴミの関係
2.プラスチック問題はSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」と関係する
3.海洋プラスチックゴミ問題
4.プラスチックゴミの処理問題
5.海洋プラスチックゴミ削減に向けた国や企業の取り組み
6.わたしたちにできることを考えながら課題を解決しよう

SDGsとプラスチックゴミの関係


SDGsとプラスチックの関係を理解するために、まずはSDGsのおさらいから始めましょう。
 

SDGsとは


SDGsとは、SustainableDevelopmentGoalsの頭の文字を合わせた言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。読み方は、SDGs(エスディジーズ)です。

2015年9月、ニューヨーク国際本部にて開かれた国際サミットで、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。これは、2016年から2030年の15年間で達成する目標を記したもので、17の目標と169のターゲットから構成されています。

「地球上の誰一人取り残さない」という強い意志のもと、地球を保護しながら、あらゆる貧困を解消し、すべての人が平和と豊かさを得ることのできる社会を目指し設定されました。
 

SDGsの中にはプラスチックに関する記載がない

実はSDGsの17の目標、169のターゲットを見渡しても、頻繁に取り上げられるプラスチックに関する具体的な記載はありません。

では、なぜSDGsとプラスチックがセットで語られるケースが多いのでしょうか。次ではその理由を紐解いて見ていきましょう。
 

プラスチック問題はSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」と関係する



SDGsとプラスチックの関係性を知る鍵となるのは、目標14「海の豊かさを守ろう」です。
 

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」のポイントは2つ

目標14「海の豊かさを守ろう」の大まかな概要は以下の通りです。
 
①海洋汚染の解決
→二酸化炭素や汚水による海洋の汚染を防ぎ、海洋ごみも減らす。

②海洋生物の保全
→海洋汚染による生態系への被害を阻止することに加えて、漁業において乱獲による減少を食い止める。

つまりは、海に関するすべての課題を解決することを求めているのがSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の主旨となりますが、その中の①海洋汚染の解決がプラスチック問題とつながる箇所です。

では①海洋汚染の解決についてもう少し詳しく見ていきます。
 

プラスチックゴミは海洋汚染問題の大きな原因となっている


海洋汚染の原因は、大きく分けると2種類あります。
 
・目に見えない汚染
→大気中に排出される二酸化炭素や有害物質などによる汚染

・目に見える汚染
→工場・家庭からの排水、川や海に直接捨てられるごみ・農薬、タンカーなどの事故で流出した有害物質などによる汚染

どちらの汚染にも対策が必要ですが、SDGs目標14について語られる際は特に、「目に見える汚染」にややウェイトが高く設定される傾向があります。その理由として考えられるのは以下の通りです。
 

⑴自分ごと化しやすい

SDGsは、世界の課題を「自分ごと化」してすべての人が取り組むことを求めています。

このケースでいうと、生活のあらゆる場面でプラスチックは使用されており、切り離せないものであることや、海に遊びに行った際にはごみが波に流され海岸に打ち上げられたり、海底に沈んでいるのを目にしたことがある方が多く、「目に見える汚染」は身近な問題として具体的にイメージしやすいということがあります。

そのためごみを減らすなどの行動につなげやすいのです。
 

⑵海洋ごみ問題が深刻

次に考えられるのが、近年、海洋ごみが問題になっていることです。

その中でも特にプラスチックごみに関する影響は深刻で、海洋に流れ出ているプラスチックごみの量は、世界全体でおよそ年間800万トン(2016年時点)に上り、このまま対策をしなければ2050年には海にいるすべての魚の重量を上回ってしまうと予測されています。

この2つの理由により、国・企業・個人のあらゆる立場の人が解決に向けて行動を起こせるよう、SDGsとプラスチックについて頻繁に取り上げられていると考えられるのです。

>>さらに詳しくSDGs14「海の豊かさを守ろう」を知りたい方は以下の記事をご参照ください。

海洋プラスチックゴミ問題

SDGsとプラスチックごみの関係性がわかったところで、さらにプラスチックごみの現状について踏み込んでいきます。

ここでは、海洋プラスチックごみ問題とプラスチックごみの処理問題の2つの観点から詳しく見ていきましょう。



海洋プラスチックごみは、どのような問題を引き起こしているのでしょうか。

主なものとしては、
・鳥や海洋生物が誤って食べてしまうことによる生物被害
・漁業用の網などに引っかかってしまうことが原因で海洋生物が死亡してしまう
・海岸の景観破壊・漁船のスクリューなどに絡まり操縦不能になる
などが挙げられます。

さらに、海に流出したプラスチックは、海岸に打ち上げられると紫外線を浴びて強度を失います。その後、風や雨によって砂と擦り合ううちに粉々に形が崩れます。

これをマイクロプラスチック(サイズが5mm以下)と呼びますが、この表面に有害な化学物質が付着するケースが指摘されているのです。
 

マイクロプラスチップの影響

マイクロプラスチックによる海洋汚染は地球規模で広がりを見せており、その現状は以下の図にまとめられています。


出典:環境省「海洋プラスチック問題について」

マイクロプラスチックが海に流出することでさまざまな影響が懸念されます。

例えば、
・マイクロプラスチックを海洋生物が口にしてしまうことによる生態系への悪影響
・水揚げされた魚がマイクロプラスチックを体内に取り込んでいると、消費者の口に渡る
・マイクロプラスチックは海に流出すると回収が困難
などがあり、海外の研究チームの発表によれば、すでにプラスチックを含んだ魚介類が市場に出回っており、人間の便からもプラスチックが検出されたとのことです。
参考:朝日新聞デジタル「微小プラ、すでに人体に 貝からも検出 健康への影響は」

今のところ、プラスチックが人間の体内に取り込まれることで健康に害があるといった研究結果は出ていません。

とはいえ、プラスチックは人間が摂取することを目的として作られてはいないため、なにかしらの悪影響を及ぼす可能性もあります。

プラスチックゴミの処理問題

次に、プラスチックごみの処理に関する問題を見ていきます。
 

プラスチックごみ処理の現状


一般社団法人 プラスチック循環利用協会がまとめた、「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況マテリアルフロー図(2020年12月発行)」によれば、2019年の1年間で排出されたプラスチックはおよそ850万トンにのぼるといいます。


一般社団法人 プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況マテリアルフロー図(2020年12月発行)」を参考に編集部にて作成

この850万トンの85%(約726万トン)は有効利用されていますが、残りの15%(約125万トン)は焼却もしくは埋立処分されています。

プラスチックの有効活用と聞くと、ごみとして出されたプラスチックが別のものに生まれ変わることを想像するかもしれませんが、実はそれとは異なります。

では有効利用されている85%(約726万トン)の内訳を見てみましょう。

有効利用廃プラの廃棄物計には、
・マテリアルリサイクル
・ケミカルリサイクル
・サーマルリサイクル
の3つに分けられています。

この中で私たちがイメージする別の製品に生まれ変わるリサイクルは、マテリアルリサイクルに分類されますが、全体の22%(186万トン)しかありません。

それに対して大半を占めるのがサーマルリサイクルです。これは簡単に言うと、プラスチックを燃焼させた際にでる熱エネルギーを利用することを指します。つまりは、有効活用といってもほとんどのプラスチックが燃やされて役目を終えているのです。

実はリサイクルに使われない未利用の「単純焼却」と合わせると、約69%(584万トン)が燃焼されていることになります。

近年の技術の進歩により、燃焼時に排出される二酸化炭素は減少傾向にあるといいますが、このままペットボトルを燃やし続ければ、SDGsのあらゆる目標に掲げられている「環境保全」解決の進捗が鈍化する可能性があります。
 

埋め立ても課題

先ほどの図の記載でもわかるように、ペットボトルの処分方法は燃焼のほかに埋立もありますが、これにも課題を残します。

環境省が平成30年に発表した「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成28年度)について」によれば、日本の埋め立て場はプラスチックごみに限りませんが、あと20年で寿命を迎えると予測されているからです。


出典:環境省 図-17 一般廃棄物最終処分場の残余容量と残余年数の推移

日本のプラスチック容器の排気量は世界で2位(※UNEPが2018年に発表したSINGLE-USE PLASTICS A Roadmap for Sustainabilityによる)に位置します。

1人1人がプラスチックごみを減らすことを意識していかなければなりません。

海洋プラスチックごみ削減に向けた国や企業の取り組み

これらの問題を受けて、国や企業がプラスチックを削減する取り組みを進めています。
 

【国の取り組み】レジ袋の有料化



国の取り組みのなかで代表的なものが、2020年7月から始まったプラスチック製買い物袋の有料化です。

これは、コンビニやスーパーのレジ袋を有料とすることで、ごみの削減はもちろんのこと、消費者にプラスチックごみに対する問題について考える機会を持ってもらうことも期待できます。

また、この制度に合わせて環境省では「レジ袋チャレンジ」というキャンペーンもスタートしました。

「レジ袋チャレンジ」とは、レジ袋有料化をきっかけに、プラスチックごみ問題について考え、買い物でマイバッグを持参することを当たり前にし、一人一人のライフスタイルの変革を目指すキャンペーンです。

啓蒙動画を配信したり、さまざまな有名人がイベントを行なったりとレジ袋削減を目指した活動が展開されています。

これらの活動により、令和2年11月に行われたレジ袋使用状況に関するWEB調査では、「1週間、レジ袋をつかわない人」は、令和2年3月の調査と比較し、30%から70%に増加しました。プラスチックごみの削減は、こうした国の取り組みに加えて、企業の努力も求められています。

>>プラスチックゴミ削減の取り組みについてもっと詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

脱プラがなぜ注目されている?|生活への取り入れ方や代替商品も紹介!



近年、飲食店ではストローを紙製のものに変更したり、スナック菓子のパッケージを紙でできたものに変更するなど、各企業が脱プラスチックの動きを見せるようになりました。

そこで次では、企業の取り組みの例として、本サイトを運営する株式会社ピー・エス・インターナショナルが取り扱うシャンプーバー「エティーク」を紹介します。
 

【企業の取り組み】株式会社ピー・エス・インターナショナル



株式会社ピー・エス・インターナショナルが扱う固形シャンプーバーのエティークは、市場で販売されているビューティープロダクツが環境に与える問題に着目し、ニュージーランドで設立されました。
 

◆エティークの特徴

年間800億本廃棄されるシャンプーとコンディショナーのプラスティックボトルは、たったの9%しかリサイクルされていません。

この現状を受け、容器のない固形バー(髪や頭皮に必要な美容液成分と、必要最小限の洗浄成分を凝縮したシャンプー・コンディショナー)を作り、2019年までの7年間で600万本のプラスティックボトルの削減を実現しました。さらに2025年までに5,000万本削減を目標にしています。

◆パッケージも環境に優しい

また、すべてのパッケージは生分解性(微生物によって分解される物質のこと)によるもので作っており、土に還ります。

さらにインクも植物からとれるベジタブルインクを使用しているため、例えば開けたパッケージに土とタネを入れて、植物を育てることもできるのです。一定の大きさに植物が育ったあとは、庭にパッケージごと埋められるのでごみの削減につながります。

このようにPSIでは、プラスチックごみを削減する活動を活発化しているのです。

>>さらに詳しいエティークの説明はこちらの記事をご参照ください。

 

わたしたちにできることを考えながら課題を解決しよう

ここまでプラスチックごみに関する問題を見てきました。
・プラスチックごみ問題は、海洋プラスチックごみ問題とプラスチックごみ処理問題の2つを指す
・海洋プラスチックごみが生態系、ひいてはわたしたち人間にも影響がある
・プラスチックごみの処理で焼却することで二酸化炭素を排出する
・埋立地の寿命が近づいている
ことがポイントとして挙げられました。

プラスチックごみは、目標14「海の豊かさを守ろう」が主に関わる内容ですが、燃焼や埋め立てに関する問題も考えると、環境に重きを置いたSDGsにおいては、ほとんどの目標と関連するものです。

SDGsの達成にはプラスチックを削減することが不可欠です。

そのためにも、わたしたちができることとして
・エコバッグを持ち歩いて極力レジ袋は利用しない
・ペットボトルの飲み物は控え、タンブラーや水筒を持ち歩く
・生活用品を、先述したエティークのような脱プラスチックを意識した製品に変えてみる

などがあります。

この機会にぜひプラスチックの削減について考え、SDGsの達成に向けた取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。

>>関連するSDGsの目標について知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」を考える|企業はどう向き合えばいい?


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