テレビや雑誌で耳にする機会が増え、私たちの生活に定着してきたSDGs。
本記事をお読みになる方は、すでにSDGsについて大まかに理解できていて、「各目標についてもう少し知りたい!」と思っている方が多いのではないでしょうか。
・SDGs10「人や国の不平等をなくそう」のポイントを知りたい
・目標を達成するために個人や企業でできることはないのか
これらの疑問にお答えすべく、SDGs目標10が設定された背景や取り組み事例を交えながらわかりやすく説明していきます!
まずはSDGsのおさらいからはじめましょう。
SDGsとは
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの頭の文字を合わせた言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。
読み方は、SDGs(エスディジーズ)です。2015年9月、ニューヨーク国際本部にて開かれた国際サミットで、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。
これは、2016年から2030年の15年間で達成する目標を記したもので、「地球上の誰一人取り残さない」という強い意志のもと、地球を保護しながら、あらゆる貧困を解消し、すべての人が平和と豊かさを得ることのできる社会を目指し設定されました。
そのなかで設定された17の目標は、課題解決の糸口になるもので、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」は、格差の是正が主な内容となっています。
ではここからはそのSDGs目標10について掘り下げながら見ていきましょう。
>>SDGsをさらに知りたい方は以下の記事をご参照ください。
SDGsとは|概要や背景・日本や世界の取り組みまで |
SDGs目標10のターゲット
まずは目標10に設定されたターゲットを確認しましょう。
ターゲットとは具体的な行動指針のようなもので、「目標番号.●」の●に数字が入る場合(例:10.1など)は目標に対する具体的な課題を挙げて、「これを達成させましょう」という意味で、●にアルファベットが入る場合(例:10.b)は課題を達成させるための手段や策を指します。
詳しい説明は後述するので、まずは一通り目を通してみましょう。
10.1 |
2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。 |
10.2 |
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
10.3 |
差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。 |
10.4 |
税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。 |
10.5 |
世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。 |
10.6 |
地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。 |
10.7 |
計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。 |
10.a |
世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。 |
10.b |
各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。 |
10.c |
2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。 |
難解な文章が並ぶため理解しにくい内容ですが、格差を是正するための手段と方法が書かれています。
SDGs目標10と似た目標として、SDGs目標1「貧困をなくそう」とSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」が挙げられます。
SDGs目標1と目標5は貧困とジェンダー平等の改善が主な内容である一方、目標10ではより経済面に焦点を当てたターゲットという違いがあります。
>>SDGs目標10に関連する目標をさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください
SDGs1「貧困をなくそう」とは|現状や取り組み事例・私たちにできること
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは|SDGsに取り組む企業担当者のインタビューも
なぜSDGs目標16が必要なのか?―平等な社会を目指す上での問題点とは―
貧困支援活動をする国際協力団体オックスファムは2017年1月、「99%のための経済(An Economy for the 99%)」という報告書を発表しました。そこには「世界のもっとも豊かな1%の人々が、世界全体の富の約33%を持っている」という驚きの事実が書かれていました。
一方では、「10人に1人が、1日2ドル以下(100円台)で過ごすことを余儀なくされている」というのです。
1%の富裕層のために、99%を取り残しながら回っている世界経済の現状があり、それはSDGsがスローガンに掲げる「誰一人取り残さない」に反するものです。
このスローガンを実現するためには、SDGs目標16が必要不可欠なのです。
また、人々の間にある不平等は経済的なものだけではありません。
ジェンダーやセクシャルマイノリティによる格差や、人種・少数民族への差別、子どもへの差別、障害者への差別など様々な格差が生じています。
これらを是正するために取り決められたのがSDGs目標10なのです。
ではSDG目標10を達成するために、今ある問題点に対してどのような解決策があるのでしょうか。
ここからはポイントを大きく3つに分けて解説していきます。
SDGs目標10のポイント①経済格差の是正
日本を含め、世界各地に格差は存在します。では、どのような格差があるのか、世界と日本の現状から探っていきましょう。ほんの一部の富裕層に世界の富が集中している
最もイメージしやすい格差の1つとして経済が挙げられます。
「オックスファム」の2019年時点の報告書によると、「世界の富裕層※2,100人の資産の合計は、世界人口の約6割にあたる46億人の資産の合計を上回っている」ということです。
この経済格差は日本を含む先進国やアジア、アフリカの途上国など、世界の3分の2で広がりを見せており、今なお進行しています。
特に、新型コロナが蔓延した2020年3月~2022年3月の2年間においては、新たに573人の富裕層※が誕生すると同時に、2022年だけで2億6300万人が極度の貧困に陥り、貧富の差がさらに大きくなっていることをオックスファムは報告しています。
※ここでの富裕層とは、10億ドル(日本円にして約1,000億円)以上の資産を持つ人と定義。
もう少し踏み込んで、世界と日本の状況を確認しましょう。
(参考:HUFFPOST「コロナ禍で30時間に1人の億万長者が誕生し、100万人が貧困に追いやられている【Oxfam報告書】」)
世界の経済格差の現状
2015年時点で世界には、1日約200円以下で生活する貧困層がおよそ7億3,600万人います。2015年の世界の人口は73億人でしたので、約10%が貧しい生活を送っていることになります。
一方で、2008年のリーマンショック以降、それまでの2倍以上の億万長者が生まれました。
クレディスイスが発表したデータによると、2018年に世界全体で生み出された資産の82%はたった1%の富裕層の手に渡っているのです。
これは、世界の経済の仕組みが富裕層に有利にできていることを意味し、未だ改善の傾向は見られません。
この仕組みを露見し注目を集めることになった具体的な例として、バングラディシュの商業ビル「ラナ・プラザ」の崩落事故があります。
時給13円で働く女性たち
バングラディシュは、繊維産業の輸出入で急成長を見せる国です。ここでは世界中のファストファッションが製造されており、多くの人々がミシンで衣服を縫う仕事に従事しています。
その環境の中で「ラナ・プラザ」の崩落事故が発生しました。
死者1,100人以上、負傷者は約2,500人にのぼるこの大事故は、国際的な注目を集めます。
その理由は、ビルの耐久性の問題、脆弱で劣悪な労働環境、さらに労働者の時給がなんと約13円だったことからです。
(引用元:SDGs8「働きがいも 経済成長も」とは|現状や取り組み事例・私たちにできること)
働いても稼げない不平等な現実を解決するには?
この「ラナ・プラザ」の事故で犠牲になった人の多くがスラムや貧困家庭出身の若者でした。
時給13円で、減給も重なれば働いても働いても生活を向上させることができず、貧しい環境から抜け出すことができません。
先述した富裕層の上位1%が今後10年間、今よりも税金を0.5%多く支払えば、介護や教育の分野で1億人以上の雇用を生み出すと言われています。
富裕層から貧困層にお金が流れるような、国際的な課題解決策を検討しなければならないのです。
(参考:NHK「世界の3分の2の国で所得格差が拡大 国連報告書」,世界銀行「世界の貧困に関するデータ」,日本郵政グループ労働組合「2013 年バングラデシュ 衣料工場(ラナプラザ)倒壊とその後」,ILO「ラナプラザの記憶と前途:各地で追悼式典/生存者は語る」)
日本の経済格差の現状
世界で起きている経済格差は日本でも見られます。
この格差を考える前に、「相対的貧困」という言葉を簡単に理解しておきましょう。
相対的貧困とは、住んでいる国や地域の平均的な生活水準と比較して貧しい状態を指します。
具体的な定義としては、税金などを差し引いた世帯の1人あたりの手取り収入の中央値を基準とし、その半分未満の収入しかない世帯を指します。
2017年の数値でいうと、1人世帯であれば年収127万円未満の世帯が相対的貧困です。
2018年に厚生労働省が報告した「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」には、相対的貧困に陥っている世帯は全体の15.4%となっています。また、2015年の報告書には相対的貧困世帯の特徴が掲載されています。
・高齢者
・単身世帯
・ひとり親世帯
・郡・町村の地方在住
この中でもとりわけひとり親世帯の問題は深刻です。
ひとり親世帯への対応が急務
日本のひとり親世帯の貧困率は先進国の中でも頭一つ抜けている状態で、ひとり親世帯かつ親が就業している場合の相対的貧困率は2016年時点で54.6%と、ひとり親世帯のおよそ半数が貧困に苦しんでいます。
このひとり親世帯の貧困はそのまま子どもの貧困につながり、現在、子どもの7人に1人は貧困と言われています。
貧困に陥った子どもは、他の子どもが行なっている“当たり前”ができません。
例えば、
・塾や習い事に通えない
・本を買えない
・運動用具を買えずに部活に入れない
さらに、勉学に励む十分な時間を確保できないといった現状もあります。
生活費を稼ぐために親が仕事を掛け持ちするなどして自宅におらず、帰宅後に家事をすべてこなす必要がある、家計を支えるためにほぼ毎日アルバイトに通うといった状況に陥ってしまうのです。
結果的に進学率が下がり、非正規の仕事に就く可能性が高くなるといったデータもあります。
これらを解決するために様々な支援が行われていますが、2020年では新型コロナウィルスの影響でさらに収入が減り、貧困が加速するといった見方もされています。
現状を知り、多角的なものの見方ができるようになることが大切
またひとり親の貧困事情に対する理解不足により、そのような世帯が声を上げにくくなるといった課題もあります。
例えばテレビでひとり親の貧困事情が取り上げられると、ネット上でバッシングの声が上がることがあります。家計の内訳が掲載され、子どものスマートフォンの通信費をみつけると「子どもにスマホを持たせるのが悪い」というようなネガティブな意見が書き込まれるのです。
しかし、親が夜遅くまで働き子どもとの時間が満足にとれない世帯では、スマートフォンは唯一のコミュニケーションツールであり、生活に欠かせないものでしょう。
1人1人が現状を知り多角的なものの見方ができるようになれば、SDGs目標10の達成に近づいていくのではないでしょうか。
(参考:内閣府「第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題」,日本財団「子どもの貧困対策」,子供の未来応援国民運動「子供の貧困とは」,内閣府「第16回 子供の貧困対策に関する有識者会議」)
SDGs目標10のポイント②性差の是正
ここまでは経済的な格差について見てきましたが、SDGs目標10では、ジェンダー格差をなくすことも含まれています。
このジェンダーの定義は、生物学的な性差(性別)のことを指すセックスとは異なり、「男性/女性はこうあるべき」といった社会や文化が形成されていく中でセックス(性別)に付け加えられた性差を指します。
文化的な面からのジェンダー平等はSDGs目標5で掲げられているため、ここでは労働状況の現状を見ていきましょう。
世界のジェンダー格差の現状
性差の現状を測る指標として就業率や賃金格差などがあります。これらは改善のペースは遅いものの対策が練られています。
その一方で、世界的にもまだ関心を持たれていないのが無償労働(アンペイドワーク)で、未だ改善傾向はみられません。
無償労働(アンペイドワーク)とは、家事労働・育児・介護など金銭が発生しない労働のことで、そのほとんどを女性が行なっています。
たとえ今後就業率や賃金格差の不平等がなくなったとしても、この無償労働(アンペイドワーク)の改善がない限り、本当の意味での平等は訪れないと考えられているのです。
女性は男性よりも長時間働いている
女性は先進国でも途上国でも男性より長時間働いているというデータがあります。
とりわけ途上国でその傾向が顕著にあらわれており、オックスファムによれば女性が一週間に働く時間は60時間から90時間にのぼるようです。
出典:世界子供白書2007
このグラフは2007年に発表されたものですが、2020年現在でもこの状況にほとんど変化は見られません。
さらには、女性が給与の発生する仕事に就いている世帯でも、男性と女性の無償労働(アンペイドワーク)の比率は変わらない傾向にさえあります。
例えばメキシコでは、給与が発生する仕事に加えて週33時間の無償労働(アンペイドワーク)を行なっている女性に対し、男性は週6時間にとどまっているのです。
これは「家事を行うのは女性」と付け加えられた性差が根強く残っていることを示しています。地域によっては宗教上の理由や伝統的なしきたりが関係するため、性差への認識を変えることは困難ではありますが、効果的な政策や支援を行なっていくことが求められています。
このような世界の状況に対して日本はどのような格差が見られるのでしょうか。
(参考:世界子供白書2007)
日本のジェンダー格差の現状
男女間の不均衡を示すものとして、ジェンダー・ギャップ指数があります。
ジェンダー・ギャップ指数とは、世界経済フォーラムが経済・教育・政治・保健の4分野、合計14の項目から各国の男女の不均衡を数値化したものです。
2020年にとりまとめられたランキングによると、日本は149ヶ国中110位でした。
引用元:内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)「参考資料」
4分野のなかでも目立つのが経済と政治で、ほとんどの項目が低い数値となっています。
経済面で特に課題に挙げられるのが役員・管理職に占める女性の割合です。
出典:男女共同参画局「第11図 階級別役職者に占める女性の割合の推移」
この表を見ると、女性の企業における地位は年々向上しているように見えますが、海外と比較するとその差は歴然です。
出典:男女共同参画局「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」
この理由として考えられるのが、非正規雇用の増加や出産・子育てで仕事を離れなければならないことです。
今後、女性の社会進出を加速させるためにも国の政策に加え、企業による積極的な環境整備が必要です。
(参考:内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)「参考資料」,男女共同参画局「第11図 階級別役職者に占める女性の割合の推移」,男女共同参画局「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」)
SDGs目標10のポイント③人権侵害の是正
SDGs目標10の最期のポイントは人権侵害を是正することです。ここでいう人権侵害とは、国籍や肌の色、移民が主となります。
日本も含めて世界には様々な差別が根強く残っており、これらを解決しなければSDGsの達成は望めません。
様々な立場の人権を守り、不平等をなくす
人権とは一言でいうと「人間らしく生きる権利」を指します。人権は人間が生まれながらにして持つ権利で、すべて平等で誰からも奪われるものでもありません。
しかし、人権侵害は世界中のいたるところで起きています。この現状を知るためにいくつかの例をピックアップしました。
移民・難民への人権侵害
移民とは、生活のためにある場所から別の場所に一時的または永久的に移動する人を指します。一方、難民とは紛争や差別、貧困など様々な理由で母国を離れなければならなくなった人のことです。
移民・難民は移動先で
・安い労働力で危険な仕事に就かされる(搾取の対象となる)
・差別される
子どもへの人権侵害
子どもの人権侵害も問題となっています。世界には、教育を受けられない、性的搾取や児童労働により搾取される対象となってしまうことや虐待を受けるなど、子どもの人権が保護されているとは言い難い状況があります。
これらに加えてアジア・アフリカなどでは宗教や文化の理由から女の子の女性器の一部を切り落とす習慣(FGM)が今なお続いています。これにより出血が続いたり、感染症にかかり命を落としてしまったり、さらには成長過程で精神的に深刻なダメージを負うこともあるのです。
判断力が成熟してない弱い立場の子どもの権利も当然守らなければなりません。
少数民族への人権侵害
世界にはマヤ族、アイヌ民族、ウイグル族など多数の少数民族が暮らしています。彼らはこれまでの歴史的背景によって偏見の目で見られたり、法律で差別を受けることが多いようです。また、住んでいる地域を奪われることもあり、弱い立場にさらされています。
このように、世界には多くの人々の人権が守られていない現状があり、すべての人々がこれまでの考えを捨てて平等についての認識を改める必要があるでしょう。
(参考:アムネスティ・インターナショナル「人権について学ぶ」)
LGBTQへの取り組みも必要
上記の差別以外にも、LGBTQについても検討する必要があります。
LGBTQとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)、Questioning(クエッショニング、性自認・性的嗜好を定めていないまたは定まっていない人)の頭文字をとったもので、性的マイノリティのことです。
実はSDGsにはLGBTQについての記載は一切ありません。
これは、宗教上の問題などから性的マイノリティを認められない国があるなど、国際的な枠組みの中には取り入れられなかったことにあります。
とはいえ、性的マイノリティに対してその地域ごとに取り組みを進めていくことで、すべての人々の人権は守られていくのです。
ここまでがSDGs目標10の押さえておきたい3つのポイントです。
では、私たちは目標達成のためにどのような行動を起こせばよいのでしょうか。
(参考:「SDGs(持続可能な開発目標)/蟹江憲史著/中公新書」)
不平等をなくすため、私たちにできること
不平等という壮大なテーマということもあり、個人ですぐに始められることは限られているかも知れません。
しかし、何事も現状を知ることがすべての始まりです。
その意味では今日この記事を読んでいただき、世界、日本の不平等の状況を知ったことが既にSDGs目標10の達成への第一歩になっているのです。
ここでは書ききれなかったこともまだまだ多くあるため、この機会に不平等について調べ、知識を深めることもいいかもしれません。とはいえ、具体的な行動が知りたい方もいると思います。
ここでは経済格差の解決につながる「フェアトレード」の観点から私たちができることを紹介します。
経済格差の是正につながる「フェアトレード」とは
フェアトレードとは、「公平で公正な取引」を意味します。
私たちが生活を送る上で、安い価格で品物を手にする機会が増えていますが、この価格がなぜ実現しているのか、考えたことはあるでしょうか。
実はこの安い価格を実現するために、途上国などでは正当な賃金が払わなかったり、大量生産のために大量の農薬を使い、それにより体調を崩す人がでたり環境破壊につながるなどの問題が起きているのです。
そこで彼らの生活水準を向上させ、環境に配慮した取引を行なっていこう、というのがフェアトレードで、フェアトレードであると認められた製品は、フェアトレード製品として世界に出荷されます。
>>フェアトレードについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください
フェアトレードとは?仕組みと商品を見極めるためのマークを簡単に説明!
◆フェアトレードは厳しい審査基準をクリアしなければならない
フェアトレードであるためには、フェアトレード最低価格の保障や長期的な取引の促進などの経済的基準、民主的な運営などの安全な労働環境、さらには農薬・薬品の使用削減と適正使用など、厳しい基準をクリアする必要があります。また、フェアトレードに関連して、労働者の最低賃金を保証する「リヴィングウェイジ」というものもあります。
「リヴィングウェイジ」とは
リヴィングウェイジとは、労働者が最低限の生活を送るために必要な賃金を算出して決定されたものです。具体的には、
・子どもを学校に通わせられる
・栄養のある食事を取れる
国や地域で決められた「最低賃金」は、上記のような社会保障・教育・食生活は検討材料には入っておらず、より生活者に優しい基準がリヴィングウェイジと言えます。
つまり、途上国の労働者の生活を守るためには、購入者はフェアトレードと同時にリヴィングウェイジも意識する必要があるのです。
フェアトレード製品のラベル
フェアトレード製品は、フェアトレードである証明ラベルの有無を確認することで見分けることができます。
「国際フェアトレード認証ラベル」
引用元:フェアトレードジャパン
国際フェアトレード認証ラベルは、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた基準をクリアした商品に貼られるラベルです。
商品の原料が生産されてから、加工、製造工程、輸出入、完成までのすべての工程で基準をクリアしていることが求められます。
身近な場所では、コンビニで売られるインスタントコーヒーやチョコレートにこのラベルが貼られています。
また、商品にラベルがない場合でもフェアトレードであることもあります。
「WFTOマーク」
WFTOマークは、フェアトレードに取り組んでいる団体がWFTO(世界フェアトレード連盟)に加盟することで発行されるラベルです。製品には直接ラベルが貼られてはいないものの、企業のHPで確認することができます。
これらのラベルを確認することに加えて、企業の製品紹介ページにはフェアトレードであることやリヴィングウェイジであることが記載されていることがあるため、商品を購入する前には手間でも製品の詳細を確認すると良いですね。
フェアトレードの成果
このフェアトレードに参加することで、生産者の生活や環境にどのような変化が起こったのでしょうか。
その一部をご紹介します。
“チュニジア“国際マーケットは変動が激しく影響を受けやすいですが、フェアトレードでは最低価格が保証されるのでとても助かります。フェアトレードから得たプレミアムを使って、作物を害虫や雨から守る防護網を購入することができ、より品質のいいものを生産できるようになりました。・・デーツ生産者組合代表 アブデラ・メスバさんコスタリカ“私は今30歳ですが、フェアトレードで得た収入を使って22歳からビジネスや英語を勉強し始め、コーヒー生産を続けながら学校に通いました。今では生産者組合で営業も担当しています。私たちの組合では、フェアトレードの売上で得たプレミアムによって、組合メンバーに社会と環境に配慮した持続可能な農業研修を行っています。その結果、水の消費量を80%削減、木材燃料の使用を20%削減することに成功しました。また枯れた植物の木や葉を材料に有機堆肥を作ったり、コーヒーの品質向上にも継続的に取り組んでいます。・・コーヒー生産者組合 フェリックス・モンゲさん“
引用元:フェアトレードジャパン
このようにフェアトレードは、生産者や環境にとって良い変化をもたらしているのです。
(参考:フェアトレードジャパン,日本労働組合総連合会)
>>関連するSDGsの目標「目標8|働きがいも 経済成長も」についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください
SDGs8「働きがいも 経済成長も」とは|現状や取り組み事例・私たちにできること
日本の企業の取り組み
では最後にこのフェアトレードやリヴィングウェイジの観点からSDGs目標10の達成を目指す企業の取り組みを紹介します。
株式会社ピー・エス・インターナショナル|リヴィングウェイジで児童労働問題の解決を目指す
株式会社ピー・エス・インターナショナルが扱う固形シャンプーバーのエティークは、市場で販売されているビューティープロダクツが環境に与える問題に着目し、ニュージーランドで設立されました。
エティークの原材料はフェアトレードであることに加えて、リヴィングウェイジであることを条件として作られています。
不当に搾取されていない原材料を利用することは、不当な搾取商品の需要を減らせ、不平等の解消が期待されるのです。
◆エティークのその他の特徴
年間800億本廃棄されるシャンプーとコンディショナーのプラスティックボトルは、たったの9%しかリサイクルされていません。そこで容器のない固形バー(髪や頭皮に必要な美容液成分と、必要最小限の洗浄成分を凝縮したシャンプー・コンディショナー)を作り、2019年までの7年間で600万本のプラスティックボトルの削減を実現しました。
さらに2025年までに5,000万本削減を目標にしています。
◆パッケージも環境に優しい
またすべてのパッケージは生分解性(微生物によって分解される物質のこと)によるもので作っており、土に還ります。なおかつインクも植物からとれるベジタブルインクを使用しているため、例えば開けたパッケージに土とタネを入れて、植物を育てることもできるのです。
一定の大きさに植物が育ったあとは、庭にパッケージごと埋められるのでゴミの削減につながります。
>>エティークの詳細はこちらから(リンク先で音楽が流れます。)
SDGs目標10の達成に向けてまずは現状を知ろう
この記事ではSDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」につながる3つのポイントを見てきました。目標の達成には多岐にわたる不平等を是正していかなければなりません。そのためにもまずは世界で起きている不平等の現状を知ることが大切です。
SDGsに関する様々な書籍には、SDGsは地球上で起きている問題を知り、「自分ゴト化」することが第一歩と書かれています。自分ゴト化することで何をすべきかがわかり、行動を起こせるようになるからでしょう。
SDGs目標10をきっかけに、様々な問題を詳しく調べてSDGs達成に向けた取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。