SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは?現状や取り組み事例・私たちにできること

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テレビや新聞・雑誌などで目にする機会が増え、私たちの生活にも定着してきたSDGs。「自分たちも何か取り組みを始めなければ」と考えている企業も多いのではないでしょうか?

しかし、親しみやすいアイコンのキャッチコピーとは裏腹に、ターゲットを見てみると「難しそうでよくわからない…」と頭を抱える方も多いはず。

そこでこの記事では、企業がSDGs9に取り組むうえで、目標が設定された背景や現状、実際に企業が行なっている取り組みなどの大事なポイントを紹介していきます。

本記事を読んで重要キーワードを理解し、今後の取り組み内容を考える土台にしていきましょう!
まずはSDGsのおさらいから始めます。
 

目次
1.SDGsとは
2.SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を考える
3.なぜSDGs目標9が必要なのか?他のSDGsの目標との関連性は?
4.SDGs目標9のポイント3つをわかりやすく
5.SDGs目標9のポイント①インターネットを含めたインフラの整備
6.インフラ整備における現状と問題点
7.SDGs目標9のポイント②イノベーションを促進させて課題解決を
8.インフラ整備により産業化が進む。そのメリットとは?
9.SDGs目標9のポイント③持続可能な産業の発展を目指す
10.SDGs目標9の達成に向けてわたしたちにできること
11.多角的な視点からSDGs目標9を達成させよう

SDGsとは


まずは、SDGsの基本的な概要のおさらいです。

SDGsとは、SustainableDevelopmentGoalsの頭の文字を合わせた言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。

読み方は、SDGs(エスディジーズ)です。2015年9月、ニューヨーク国際本部にて開かれた国際サミットで、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。

これは、2016年から2030年の15年間で達成する目標を記したもので、17の目標と169のターゲットから構成されています。

「地球上の誰一人取り残さない」という強い意志のもと、地球を保護しながら、あらゆる貧困を解消し、すべての人が平和と豊かさを得ることのできる社会を目指し設定されました。

>>SDGsについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください
SDGsとは|概要や背景・日本や世界の取り組みまで

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を考える



SDGs目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」はキャッチコピーで、正式な和訳は「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」です。

少し難しい内容に聞こえますが、要は技術を向上させて産業を発展させよう、という内容です。

ではそのためには何を意識して行動すればいいのでしょうか。次ではSDGs目標9に設定されたターゲットを見ていきましょう。
 

SDGs目標9のターゲット


ターゲットとは具体的な行動指針のようなもので、「目標番号.●」の●に数字が入る場合(例:9.1など)は目標に対する具体的な課題を挙げて、「これを達成させましょう」という意味で、●にアルファベットが入る場合(例:9.b)は課題を達成させるための手段や策を指します。

詳しい説明は後述するので、まずは一通り目を通してみましょう。
 

9.1

すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。

9.2

包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。

9.3

特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。

9.4

2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。

9.5

2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。

9.a

アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。

9.b

産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。

9.c

後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。

出典:外務省「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット(外務省仮訳)」

ポップなアイコンと馴染みやすいキャッチフレーズとは一変してターゲットは複雑で難解な内容です。

簡単に説明していく前にまずは、正式和訳の中にある「レジリエント」の意味の確認です。
 

レジリエントとは


レジリエントとは、弾力や柔軟といった意味合いで、もともとは物理学や心理学で使われていた言葉です。

しかし近年では、変化する状況や変わりゆく出来事に対して柔軟に対応していく、といった広域な使われ方をしています。

目標9で使われているレジリエントは、「自然災害や環境の変化に対応できるようなインフラを整備していこう」といった内容です。

なぜSDGs目標9が必要なのか?他のSDGsの目標との関連性は?

目標9では「レジリエント(強靭)なインフラ構築」という言葉がキーワードになっています。
インフラは、全ての社会活動の土台になるものです。
例えば、電気や水道などのライフラインは人が健康に生きていくために必要不可欠なものですが、これらが整っていない開発途上国では、生活に必要な水をくみに行くために何時間もかかることで、働く時間が取れなかったり、学校に行けなかったりして、結果として貧困につながってしまうこともあります。
また、世界にはインターネットにアクセスできない人が約29億人いると言われています。
オンラインを中心とした教育や福祉のサービス提供が進んでいる中、インターネットにアクセスできない人との間にはどんどん格差が広がっていきます。
これらの課題はSDGsの他の目標(「1:貧困をなくそう」「3:すべての人に健康と福祉を」「4:質の高い教育をみんなに」「6:安全な水とトイレを世界中に」「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「8:働きがいも 経済成長も」「10:人や国の不平等をなくそう」など)の達成にも密接に関連しており、解決にむけた取り組みが必要です。
そして、しっかりとしたインフラが整っていなければ、技術革新や産業の発展も見込めないのです。

さらに、日本にも多い自然災害からいち早く立ち直るためのインフラ(地盤そのものや暮らしのシステムとしてのインフラ)も整備しておく必要があります。

このように、すべての土台となるインフラを確立し、持続可能な社会につなげていくため、目標9が設定されました。
 

SDGs目標9のポイント3つをわかりやすく

ここからは、SDGs目標9の重要な3ポイントをピックアップします。
 
①インターネットを含めたインフラの整備
②イノベーションを促進させて課題解決を
③持続可能な産業の発展を目指す

それぞれを詳しく見ていきましょう。

SDGs目標9のポイント①インターネットを含めたインフラの整備


世界には水道・電気・交通などのインフラが整備されていないことで、不自由な生活を強いられたり、国自体が発展しないといった課題が生じています。

これらの解決に向けて、水道はSDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」に、電気はSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に、そして道路に関してはSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」で踏み込んで取り上げられており、SDGs目標9ではインターネットの普及についても触れられています。

このインターネットの普及に関しては、ポイント②の「イノベーションを促進させて課題解決を」や、③の「持続可能な産業の発展を目指す」の実現の手段となるので、非常に重要な役割を担っています。
 

インフラ整備における現状と問題点

まずはインフラ整備の現状を確認します。

ここでは水関連・電気・交通・インターネットの状況をピックアップしました。
 

世界の水関連インフラの現状

2017年にユニセフとWHOが発表した「衛生施設と飲料水の前進:2017年最新データと持続可能な開発目標(SDGs)基準」によると、2017年時点で世界には、
・安全に管理された飲み水が利用できない→21億人
・基本的な飲み水が利用できない→8億4,400万人
・限定的な飲み水が利用できない→2億6,300万人
・改善されていない水源しか利用できない→1億5,900万人
と、途上国の特に農村部では多くの人々が水を利用できていません。

水道が普及していない地域では、トイレも満足に利用できない状況が続いており、衛生の観点からも解決を急がなければなりません。

この「安全に管理された水」や「基本的な飲み水」「限定的な飲み水」といった表現は、ユニセフによる明確な定義があります。

事実を正確に理解するために、目を通しておくと良いでしょう。
 
“水に関するデータの定義について
・安全に管理された飲み水(供給サービス) 自宅にあり、必要な時に入手でき、排泄物や化学物質によって汚染されていない、改善された水源から得られる飲み水。
・基本的な飲み水(供給サービス) 自宅から往復30分以内(待ち時間も含めて)で水を汲んでくることができる、改善された水源から得られる飲み水。
・限定的な飲み水(供給サービス) 自宅から往復30分よりも長い時間(待ち時間も含めて)をかけて水を汲んでくることができる、改善された水源から得られる飲み水。
・改善された水源 外部からの汚染、特に人や動物の排泄物から十分に保護される構造を備えている水源。例えば、水道、管井戸、保護された掘削井戸、保護された泉、あるいは、雨水や梱包されて配達される水など。
・改善されていない水源 外部からの汚染、特に人や動物の排泄物から十分に保護される構造を備えていない水源。例えば、保護されていない井戸、保護されていない泉、地表水など。
・地表水 川、ダム、湖、池、小川、運河、灌漑用運河といった水源から直接得られる水”
【引用元】ユニセフの主な活動分野|水と衛生
 

日本の水関連インフラの現状

一方日本の水道普及率は98%です。

出典:厚生労働省「水道普及率の推移(平成30年度)」

一見すると多く見えますが、残りの2%=約230万人は日常的に水道が利用できない状態であり、日本の人口の100人に2人弱にあたります。

>>水関連の課題と関わりが深いSDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」の詳細は以下の記事をご参照ください。

 

世界・日本の電気インフラの現状


続いては電気の普及に関する現状です。

電気の普及率は水道に比べると高くなっていますが、それでも2018年時点で、世界の約8億6,000万人が利用できていません。

とりわけサハラ以南のアフリカ(サブサハラ)や南アジアでの割合が高くなっています。

【世界の未電化人口】

出典:経済産業省資源エネルギー庁「第3節 二次エネルギーの動向」

この未電化の地域は、先述した安全に管理された飲み水を利用できる人の割合が低い地域とほとんど同じです。

これらの地域では、森林を切り開いて得た木材を燃やして灯にしたり、家事の燃料として利用していますが、一方で森林減少や土地の砂漠化などの環境破壊につながっており、電気の普及が急がれます。

一方日本では、電気の普及率は100%です。
 

世界の交通インフラの現状

  

交通に関するインフラも水関連や電気同様に途上国の貧困地域で多くの課題を抱えています。

交通・輸送アクセスの不足で貧困が加速現在、貧困世帯が多いとされる農村の人口はおよそ30億人います。

そのうちの1/3が、雨や風などの天候に左右されない全天候型の道路や輸送サービスを利用できていません。

この十分な交通・輸送アクセスが確保できていないことで様々な問題が発生します。

例えば、せっかく農作物を収穫しても、市場に輸送することができずに腐らせてしまい、廃棄されてしまうといった食品ロスが起きるのです。(途上国での食糧ロスの40%が収穫後に起きているといわれています。)

環境問題にもつながるまた、都市部では渋滞による空気汚染の問題もあります。

現在、仕事を求めて貧困地域から都市部への移住が多く見られることもあり、世界の都市に住む人口は35億人と、全人口の半数を占めるようになりました。

これが2030年になると50億人にも達するといったデータもあり、特に今後数十年間は世界の都市膨張の95%が途上国で起きると言われています。

これにより発生する問題の1つに、自動車の増加が挙げられます。

Dargay,etal,2007の発表によると、自動車の販売数は年々増加傾向にあり、その半数が都市部によるものです。

このままだと現在世界全体で12億台保有されている自動車が倍増すると見られており、これにより様々な課題が発生します。

例えば2050年までに、都市に住む人たちは年間で100時間以上渋滞に巻き込まれることが予想されます。(現在の約3倍)

また、自動車が増加することで排出ガスも増え、温暖化の原因にもつながってしまうことでしょう。
 

日本の交通インフラの現状

日本では、道路そのものよりも交通機関への課題が山積みです。

災害が多い日本では、大雨や台風によって電車が止まる、高潮の影響で空港が浸水し復旧まで時間がかかるなど、交通機関の貧弱さが露になっています。

また、人口が減少し、高齢化が進む地方の山間部では、バスがまったくこない、タクシーを気軽に利用できない、電車も通っていないといったことが多く、病院や買い物に行くことさえ困難な人々がいます。

このように、SDGs目標9の達成指標にはないものの、道路以外の交通機関についても、強靱(レジリエント)なインフラ構築のために検討しなければならないことが数多くあります。

これらの課題はSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」と密接な関わりを持つため、その内容と照らし合わせて考えていく必要があります。

>>SDGs目標11についての詳細は以下の記事をご参照ください。

 

世界におけるインターネットの現状


インターネットは2000年以降、劇的に普及しました。

【インターネット・携帯電話の普及率】

出典:総務省「世界におけるICTインフラの広がりとインフラ輸出の現状」

2015年時点で、インターネットの利用者は世界の人口の約半数にあたる34億8,800万人まで増加しています。

しかし、水関連・電気・交通で多くの課題を残す途上国では未だに低い数値で推移しています。

【インターネット・携帯電話の人口普及率】

出典:総務省「世界におけるICTインフラの広がりとインフラ輸出の現状」

とりわけアフリカ地域では、4人に1人の割合でしかインターネットにアクセスできていません。
 

日本におけるインターネットの現状

【インターネット・携帯電話の人口普及率】の表にもあるように、日本のインターネット普及率は91.1%と高い数値を誇ります。

一方で山間部や離島エリアをカバーしきれていないといった課題も残されています。

地方の活性化や山間部や海での人命救助などをさらに活発化するためにも、日本全国100%のエリアでインターネットを活用できる環境を整えなければなりません。

また高い普及率があっても、個人のレベルで見た際に、世帯年収によってインターネットの利用状況の差異が見られます。

【属性別インターネット利用率】

出典:総務省「インターネットの利用状況」

特に世帯年収が200万円未満の人々は約半数がインターネットを利用できていなこともあり、インフラ整備に加えて誰もが利用できる仕組みを検討して行く必要がありそうです。

SDGs目標9のポイント②イノベーションを促進させて課題解決を




ここまでは世界と日本が抱えるインフラの現状と課題を見てきました。
SDGs目標9では、これらの解決に必要なのはイノベーションの促進であると掲げています。

産業の発展のためには新たな技術が必要不可欠で、新しい切り口や考え方などイノベーションを促進する必要があるのです。

一方で、ポイント③の持続可能な産業の発展を目指すことにも留意しなければなりません。

ここでは具体例をもとに詳しく見ていきましょう。
 

世界の取り組み事例|未電化地域に太陽光発電で電力を供給



※画像はイメージです。

近年、世界の企業が行なっているのが太陽光発電システムによる未電化地域への電力供給です。

例えばイギリスのWinch Energy Limited社は、太陽光パネル・蓄電池・配電線・スマートメーターを組み合わせた独立型小規模発電・配電システムを独自に開発しており、1基につき100世帯への電力供給を可能にしているそうです。

加えてwi-fi設備などの付加サービスも展開しており、途上国の生活向上も期待されます。

また設置にかかる手間の少なさも魅力です。

これまで電力を供給しようとすると大規模な工事が必要とされていましたが、Winch Energy Limited社のシステムはわずか1〜2日で設置が完了します。
 

日本の取り組み事例①|昔ながらの技術を途上国の道路整備に利用


イノベーションの促進とあっても、必ずしも最新の技術を駆使しなければならないというわけではありません。

今は使われなくなった昔の技術を途上国の状況に合わせて活用することも手段の1つです。

例えば、東京杉並区にある株式会社SPEC(スペック)が取り組む、土壌硬化剤STEIN(シュタイン)を活用した灌漑・農業・農村道路整備技術の普及が挙げられます。

土壌硬化剤STEIN(シュタイン)で土を固めて道路を整備する方法は、1970〜1980年代に日本でよく使われていた手法ですが、現在はアスファルトが主流になったため、ほとんど使われなくなっていました。

その中で、株式会社SPEC(スペック)は途上国では土を固めて道路を整備する需要があるのではないかということに気づきました。

アスファルトや未整備の土のみの道路に比べ、メンテナンス料を含めても半分程度の費用で道を作れるので途上国には非常にマッチしている方法です。
 

日本の取り組み事例②|Maasで交通インフラ問題の解決を目指す


近年、世界的に新たな交通インフラとして注目を集めているのが「Maas(マース)」です。

国土交通省によるとMaas(マース)とは、以下のように定義されています。
 
“MaaS(マース)…“Mobility as a Service”の略。出発地から目的地までの移動ニーズに対して最適な移動手段をシームレスに一つのアプリで提供するなど、移動を単なる手段としてではなく、利用者にとっての一元的なサービスとして捉える概念”
【引用元】国土交通省「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」

Maasの身近な例としては「乗り換え案内アプリ」が挙げられ、複雑に入り組んだ交通網の中から最適なルートをアプリ上で検索して利用者に提示します。

これをさらに発展させて、鉄道会社・バス会社・レンタカー、サイクルなどをアプリ上で一括で決済できるようにするなどのサービスが展開され始めています。

例えば中山間部では、車を“所有する”から“共有する”へと意識を転換し、高齢者の移動サービスを充実させることなども求められています。

実際にMaasを取り入れた長野県伊那市での取り組みを見てみましょう。
 

◆パートナーシップで交通アクセス改善 長野県伊那市

長野県伊那市は、MONET Technologies(モネ・テクノロジー)株式会社・フィリップジャパンと協業し、通院が困難な方への支援を開始しています。

長野県伊那市は、長野県で3番目の広さの面積であることや医師不足などから通院の負担が課題となっていました。

そこで、市民の自宅へ看護師が乗った診察車が赴き、車に乗るとオンラインで医師から診療を受けられるといった取り組みを開始したのです。

これにより患者の移動負担がなくなり、加えて医師は広い市内を行き来する時間を削減でき、外来や緊急性の高い患者の治療に当たれるようになりました。

このように、医療とMaasが連携を取り、交通と医療の両面から課題解決を目指すことができるのです。

インフラ整備により産業化が進む。そのメリットとは?

ここまでインフラ整備の現状や改善に向けてのイノベーションの必要性について見てきました。

インフラが整備されればとりわけ途上国の人々の生活の質が上がることに加えて、産業化が進むことにも注目です。
 

開発途上国の多くが一次産業に頼っている現状




現在、途上国の経済は、一次産業が中心です。

一次産業とは、農産物や魚類を収穫後に加工せずそのまま販売することで、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると特にサハラ以南のアフリカ地域では9割が一次産業に頼った経済体系です。

また国連広報センターの「事実と数字」によれば、途上国の国内で加工される農産物(=二次産業)は、わずか30%にすぎず、この割合が98%である先進国と比べると、大きな差があることがわかります。

この一次産業に頼った経済体系だと、天候によって収穫量が左右されたり、先述した交通アクセスが未成熟であることから収穫物を腐らせてしまい、販売できないなどデメリットが多くあり、収入が不安定になることが考えられます。
 

二次産業の発展が、開発途上国の不安定な生活の解決策に


そんな中インフラが整備され、水や電気が普及すれば収穫した農作物や魚類を加工する環境が整い、これまで腐らせていた収穫物の保存ができるようになったり、加工品の販売という新たな市場の開拓にもつながります。

一定の収入の見通しがつくようになる、新たな雇用の創出も期待できるなどといったメリットも考えられます。

このようにインフラの整備は、一時的な支援とは異なり、長期的な繁栄を目指すことができるのです。

とはいえ、インフラが整備されても加工技術などを教える仕組みがなければ二次産業の発展は望めません。

教育システムの検討も必要になることを忘れてはいけません。

SDGs目標9のポイント③持続可能な産業の発展を目指す

SDGs目標9の最後のポイントは、持続可能な産業化を目指すことです。
持続可能な産業化とは、環境・社会・経済が同時に成り立ち将来にわたって繁栄を続けられるような産業の仕組みのことです。

SDGsが採択されるまでは「持続可能な社会」というと、特に日本では環境を犠牲にしない人間活動の仕方に関する議論が多く行われてきました。
そのため、“ビジネスを通して”環境や社会問題を解決するという考え方自体が浸透しなかったようです。
SDGsの大きな成果は、これまで議論の中心だった「環境」や「社会」に「経済」が加わったことで、企業や個人が注目するようになったことです。
その意味でもこの「経済」に大きな焦点を当てたSDGs目標9は、企業や個人(例えばこれから就職活動を控えている方など)にとって重要な目標であり、SDGs全体の達成のために理解を深める必要があると言えるでしょう。
 

環境・社会・経済の同時達成が必要不可欠


これまでの産業は、石油や石炭、森林を大量に消費して生産活動を続けてきました。

その結果、地球温暖化や森林減少などの環境問題が発生しています。

近年の異常気象や海水の上昇はこれらの産業活動を続けてきた結果だと言われているのです。

このままの産業形態を継続してしまうと、2100年には平均気温が最大で4.8℃も上昇することが予測されています。

【2100年までの気温変化予測】

出典:温室効果ガスインベントリオフィス 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

気温が上がれば、様々な生態系へ影響を及ぼし、収穫量が安定しない可能性も考えられます。

そのため今後の取り組みとして、
・環境に配慮していること
・生活する人々の社会的な保護がされていること
・貧困に陥らない経済活動であること
のすべてを同時に達成させることを検討していく必要があります。

先述した途上国の二次産業を例に考えると、温室効果ガスが大量に排出されるような製造体制ではなく、クリーンなエネルギーを利用した体制を構築し、少ない資源でいかに効率よく生産するかの技術指導を進めることなどが挙げられます。

そのためにも、1つの企業や国が独自に支援を行うのではなく、様々なステークホルダーが連携を取り合って課題解決に努めることが求められているのです。

SDGs目標9の達成に向けてわたしたちにできること

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、どちらかというと国や自治体、企業が中心となって取り組む目標内容となり、個人でできることは多くないかもしれません。

その中でも今からできることの1つに企業の取り組みを調べることが挙げられます。
 

企業の取り組みを調べる


SDGsに取り組む企業のHPの大半には、SDGsのどの目標に取り組んでいるかが記載されているので、SDGs目標9に力を入れている企業を調べてみるのはいかがでしょうか。

企業は1人でも多くの方々に取り組みを知ってもらうことで、様々なステークホルダーと連携する確率があがり、事業内容を加速させられる可能性もあります。

また、知る人が増えることで支援したいと考える方もでてくるかもしれません。

一番手軽にみつける方法は、外務省農林水産省の特設ページから探す方法です。

ぜひ一度目を通してみてくさださいね。

多角的な視点からSDGs目標9を達成させよう

ここまでSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」のポイントを見てきました。

持続可能な社会を目指す上で、経済活動は欠かせない要素です。

その上で世界や日本のインフラ整備や産業の現状を知り、課題の解決に向けて多角的に考えていくことが求められています。

SDGs目標8の現在の進捗では2030年の達成は厳しいと言われています。

しかし、1人でも多くの方が現状を知り小さな行動を起こすことで、達成に近づくはずです。

この記事をきっかけに企業や個人でできることを探してみてはいかがでしょうか。

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